漢方の不思議


冷えを感じるこの季節 漢方の力を借りて少しでも温かくなりたいものです。

人それぞれ冷え方に違いがあり、あまりに冷えすぎて入院にいたる方もいます。

 

訪問診療で伺っているある患者さんは毎年冬場になると、体温が34~35度前半まで落ち込みます。

そのお宅は古い一軒家で、すきま風が時折入ってきて、下に冷気が溜まるので、診療のたびに足元から冷えてとても寒く感じます。しかし、ご本人はあまり寒さを感じてないようで平然としています。そのうちに体温が下がり、全身にむくみが現れ、心不全状態となり昨年は入院となりました。

今年はそうならないように、家の温度や湿度の管理や栄養状態を良くすることを徹底しましたが、やはり1月に入ると体温が少しずつ下がりはじめてきました。34度台に落ち込み、また去年と同じ状態になるのかと心配しつつ、何かいい方法はないかと考えました。

そしてこの患者さんの病態を西洋医学的な病気の概念から切り離して、東洋医学的に“冷え性”と位置付け、漢方を取り入れました。

漢方の診察には、患者さんの外見や形をみる望診、舌の色や裏の静脈をみる舌診、おなかの圧痛や抵抗をみる腹診があります。

この患者さんの望診は骨格が細く、筋肉がやせて、皮膚は乾燥しており、虚弱であるととらえます。舌診は白苔が舌中央部に広がり舌下静脈の怒張は強くなく、邪の勢いがやや強いととらえます。腹診はみぞおち部が硬く、心下痞鞭ありととらえて、総合的には心窩部を中心に内臓まで冷えて、熱産生ができない虚症と判断。

そして、温める効果のある乾姜、附子などの熱薬が適応で、乾姜、人参、甘草が多く含まれる人参湯を処方しました。

そして数日で、驚くことに体温は36度台までアップし、1ヶ月経ても36度台をキープして体の状態は良好です。

通常の薬では、このように改善させることは難しいですが、適切な漢方を用いることである程度容易に解決できます。

病気の原因とメカニズムを考えて薬を出すことは大切なことです。しかし、症状に対して漢方を取り入れる考えを持っておいた方が、患者さんのためになります。

これからも漢方をもうひとつの武器として、さらに利用してゆきたいと思います。