温熱療法をパワーアップするアミノ酸 ー 5-アミノレブリン酸

最近、5-アミノレブリン酸の製造技術が進歩したことで、特に農業や医療の場で応用されるようになってきました。
5-アミノレブリン酸は生体内に存在するアミノ酸の一種で、血液の酸素を運ぶ成分であるヘモグロビンの基になります。
食品ではお酢や醤油、焼酎粕、赤ワイン、ホウレン草、お茶などに含まれています。
生体内でグリシンから合成されていますが、年齢とともに減少するので補充をしてゆく必要があります。
植物に対して5-アミノレブリン酸は葉緑素(クロロフィル)の基となる物質なので光合成を活発にして成長を促進させる作用があります。
そこで農業分野で用いられるようになり、今では生産性が向上することからその効果が実証されています。

医学的には癌の診断や皮膚病の治療に用いられています。
5-アミノレブリン酸は細胞内に入るとポルフィリンに変わり、続いてミトコンドリア内に入りプロトポルフィリンⅨに変わります。
正常細胞ではここからヘムに変わりますが、癌細胞ではヘムの合成ができないのでプロトポルフィリンⅨがどんどん蓄積してゆきます。
この物質は光活性があり400nmの波長の青色光を当てると赤色光を出すので、癌細胞を赤色に蛍光発色させ、目で見て診断することができます(光力学診断)。
また、5-アミノレブリン酸を内服後に尿中ポルフィリンの量を調べることで膀胱癌や脳腫瘍の診断に応用できます。
皮膚癌への応用としては5-アミノレブリン酸を癌部位に塗った後に蓄積したプロトポルフィリンⅨを励起させる400nmもしくは630nmの波長のレーザー光を当て、それにより発生した一重項酸素で癌を破壊する方法があります(光線力学療法)。

昨年の日本癌学会、日本癌治療学会では5-アミノレブリン酸に関する発表が増え、多くの施設で研究されていることが伺えます。
その中で私が今注目しているのは、東京農業大学と東京工業大学が共同で研究している温熱に関係するテーマです。
もともと癌細胞は正常細胞に比べて熱に弱いことから癌治療法の一つに温熱療法があります。
両大学の研究は癌細胞に5-アミノレブリン酸を加えることで温熱による細胞死が増加したというものです。
5-アミノレブリン酸は正常細胞ではなく癌細胞内でプロトポルフィリンⅨに変わり蓄積します。
その量が多いほど温熱刺激に反応しやすくなり、特に肝細胞癌、大腸癌、胃癌で細胞死が誘導されました。

この研究結果は副作用の最も少ない温熱療法の効果をさらに高めるものとして期待できます。
当院では漢方を温熱療法に併用していますが、今後5-アミノレブリン酸が温熱療法の大事なパートナーになるでしょう。