いま乳がんが増えている

当院のスタッフブログで温熱施療スタッフが書いたように、乳がんの患者さんの割合が増えてきています。
国立がん研究センターによると、新たにがんと診断される女性の中で乳がんの割合は第一位で、年間5万人にも上り、約1万人が亡くなります。最近の乳がん死亡者数は1970年のおよそ5倍に増えています。
かつて生涯のうちに乳がんになる日本人女性は、20~30人に1人と言われていましたが、最近では16人に1人と上昇してきました。
アメリカはもっと多く、約8人に1人が乳がんになると言われています。
乳がんは30代から増え始めて閉経前後である45歳頃が発症のピークとなり、加齢とともに増える他のがんと少し異なります。

なぜ異なるのか?

乳がんの発症要因については世界で多くの研究がされ、膨大なエビデンス(証拠)が蓄積しています。
そのエビデンスに基づいて世界がん研究基金(WCRF)や米国がん研究協会(AICR)がまとめ上げた報告を日本乳癌学会が分かりやすく紹介しています。
乳がんのリスクを増加させる要因と減少させる要因のエビデンスレベルを高い順から「確実」、「ほぼ確実」、「可能性あり」、「証拠不十分」、「大きな関連なし」と5段階に分けて説明がなされ、臨床の場においてよく出る疑問に論理的に答えています。

そして、「確実」、「ほぼ確実」とされた要因については予防行動をとることが勧められており、一方、可能性ありや証拠不十分とされた要因についてはそうした行動は勧めていません。

「確実」とされるものをピックアップしてみると、授乳経験のない女性はある女性より高リスクで、授乳期間が長くなるほどリスクは減少する。閉経後女性の肥満、出産経験ない、初産年齢が高い女性、高線量の被爆、若年期の被爆、良性乳腺疾患で異型過形成、乳癌家族歴、閉経後ホルモン補充療法におけるプロゲスチン補充などはリスクを増加させます。

続いて「ほぼ確実」なものをピックアップしてみると閉経前女性の肥満、閉経後女性の運動はリスクを減少させる。
アルコールの摂取、喫煙、生下時体重が重い、早い初経年齢、遅い閉経年齢などはリスクを増加させます。

「可能性あり」については、大豆食品、イソフラボンの摂取、卵巣嚢腫の患者はリスクを減少させ、受動喫煙、閉経後女性の脂肪摂取の増加、夜間勤務、経口避妊薬の使用はリスクを増加させます。

「証拠不十分」は緑茶の摂取、閉経前女性の運動でリスク減少する、閉経前の総脂肪摂取の増加、乳製品の摂取、電磁波、ストレス、エストロゲン補充療法などでリスクが高まるなどがあります。

このように大豆食品、脂肪、乳製品摂取と乳がんのリスクに関しては、以前より大いに関係あるように一般的には広まっていますが、エビデンスレベルとしてはかなり低めに位置し、ここではあまり関係ないものとして考えられているようです。

しかし、乳がんはエストロゲンとの絡みからどうしても成長因子やエストロゲンを含む食品に原因があるのではと疑ってしまいます。実際、「確実」「ほぼ確実」の要因だけでこれほど、乳がんが増えてきている理由が説明できないような気がします。エビデンスとしては弱いかもしれませんが、何らかの食との関係を疑いつつ今後の診療を行いたいと思います。