医療クラウドの波

クリニックITフォーラム2013に参加してみました。

これは電子カルテの展示場を運営している会社が企画していて、医療IT関係の講演といくつかの会社の電子カルテや画像ファイリングシステムの展示を兼ねているものです。

私自身ITに対してはあまり関心がなく、別に無理してIT化しなくても何とかやっていけると思っている昔人間ですが、なぜかひたひたと診療所にもIT化の波が押し寄せてきている感じが最近します。

真綿で首をしめられているようでちょっと苦しい、もう逃げられないのか そんな気持ちです。

私が医者になった頃はWindowsもなくマッキントッシュのコンピューターが高い値段で出回り始めた時代ですので、紙カルテにどっぷり浸かっており、電子カルテやIT化には少し抵抗があります。

しかし、このまま何もしないでいると時代に取り残されてしまう気がして、このたび参加することになったのです。

まず注目したのが、@訪問ドクターというタブレット(iPadなど)を使った在宅医療支援システムです。

私の場合、在宅訪問する時は年々重くなる紙カルテを持ち込んでいます。在宅医療は介護、看護や薬局関係など紙でのやり取りが多く、それらを必要最低限カルテと一緒にすることもあり、一日の訪問が10人となるとかなりの重さになります。

これらの情報をタブレットに入れて訪問できればとても楽です。@訪問ドクターの特徴として、クリニックの電子カルテと連動しているのはもちろんのこと、手で打ち込むことなくしゃべったことがカルテに記載される音声認識入力ができることや湿疹、褥瘡などその日の体の変化をその場で内臓カメラで撮影し、コメントを加え保存できることです。

今までのようにデジカメで撮り、プリントアウトし日付を確認しながら紙カルテに糊で貼り付ける作業が無くなります。

またデジタルですからいつでもどこでも入力したり参照できたり、スタッフ間でデータの共有もできます。

在宅医療は医者と患者だけで成り立つものではなくケアマネージャーやヘルパー、看護師、薬剤師、歯科医師の連携があってこそ成り立つもので、情報管理をしつつ共有し合えれば、より深くかつ効率的に在宅医療ができるような気がします。

心配な点としてはデータの保護や安全性はどうかまた、システムが故障した時に訪問診療が継続できるのかがあります。

私の知り合いで2000人以上の在宅患者さんを診ているクリニックは一度電子カルテにしたものの再び紙カルテに戻したようです。

やはり介護、看護事業所などとの膨大な量の紙でのやり取りと電子カルテがうまくかみ合わないことと厚労省の指導のときに書類をまとめて提出するのに時間がかかり過ぎて間に合わない可能性があるためと話していました。

他の展示で面白いと思ったのは徹底的に紙カルテにこだわる医師用の電子カルテです。

電子カルテの欠点としては、画面への打ち込みに忙しく患者さんの顔も見ないで診察していると言われることです。

私を含め中高年の医者は若者のようにブラインドタッチなどできるわけでもなく、慣れ親しんだ紙カルテの診察リズムを崩したくないといった気持ちがあります。

そうした人向けにつくられたイーポートビューアは手書きしたものを全てスキャンしてコンピューター上に保存すると結果的にカルテの様になるというものです。

しかし、在宅医療に向くかどうかは今後検討が必要です。

また、セミナーに参加して良かったと思えるのは習志野台整形外科内科の宮川一郎先生の講演でした。

医師と患者の垣根を低くするiPadや先進的な医療ICTの活用という題目のもとお話しされ、いろいろと驚かされました。

まずこの先生のポロシャツ&チノパンという一般の医者らしくない風体でのプレゼン、流れるような言葉とその言い回し、大きくなったり動いたり躍動感のあるモニター画面などイケてるIT企業の社長といった感じがしました。

何年も医者をしていますがこのようなユニークな先生に出会ったのは初めてです。

宮川先生はクリニックを開業しながらiPadが発売されたときにこれを医療でうまく利用できないかと考え自らITの会社を作ったようです。

宮川先生の基本的な考えは患者自身が自分の病態を正確に理解し、意見をしっかり述べ治療に自己責任をもつ患者参加型医療の普及です。

そのために去年メディカクラウド株式会社を立ち上げました。ツールとして患者さんに病態や治療法を分かりやすく動画で説明できるようにIC動画を次々と制作していますが、これは誰でも気軽に利用できるので多くの人に見られています。

またiPadを用いた問診システムは初診の患者さんが入力した情報が診察室に入った時点で電子カルテ上に反映されるもので効率的な診察を可能にします。

私たちが普段の診療であったらいいなと思えるものと次々と開発してくれます。

またこのたびの東日本大震災で混乱した状況において患者情報が把握できなかった経験を通して、あらかじめ患者情報をカードに入れておける命のMICカードの監修も行っています。

このように宮川先生は現場で真に役に立つICT(情報通信技術)の追求に勤しんでおりますが、いずれこれらが実を結び多くの人が自然に利用し生活の一部になる日が私には想像できます。

今後、陰ながら宮川先生を応援してゆきたいと思います。

セミナーに参加してみて初めて分かったことが沢山あり、食わず嫌いはいけないなとつくづく思いました。

当院もそろそろICTの活用の時期か。