これから在宅でも必要とされる緩和ケア  Merry Christmas!

年々、自分の中でこの時期特有の盛り上がる気持ちが減ってきている感じがします。歳なのか、または忘年会がひと通り済んで気が緩んでしまったからなのか。

ただ、インエクセルシスデオ♪~などいくつかの讃美歌が流れてくると少しだけですが、クリスマス気分に浸れます。

今年も数名ですが在宅で看取りました。家族の方から「最後まで苦しむことなく静かにあの世へゆきました」と言っていただけて、はじめてほっとします。死亡診断書の直接死因欄には“老衰”と記入します。苦しまず自然に亡くなったという証明であると私自身考えています。自然な死にいかに近づけるか ここが簡単なようで、本当は難しいところなのです。

死亡原因の1位で、3割以上を占めるがんは特に難しい領域です。国としては法律を作り、全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、全国に約400のがん診療連携拠点病院を作りました。

そこではがんの研究や治療の他に緩和ケアを行っています。

緩和ケアとホスピスはどう違うの?という疑問がわいてきますが、おそらく緩和ケアを緩和ケア病棟と置き換えるとほぼ同じ意味と考えて良いでしょう。

国内で緩和ケア病棟を始めた人たちがクリスチャン中心だったため、まず「ホスピス」という言葉が広まったようで、1973年、淀川キリスト教病院でのホスピスケアが始まりとされており、その後1981年に聖隷三方原病院に国内初のホスピスが開設されました。

緩和ケアというと、もう最後の最後でモルヒネ沢山のさよならの場のようなイメージがありますが、実際は異なります。

WHOの緩和ケアの定義では、『①いのちを脅かしかねない病気のある患者さんと家族のQOL(

生活の質)を改善する取り組み②その方法は、人の抱える苦痛を体、心、社会、スピリチュアルな側面からとらえて緩和する③早期から受けることで、治療の副作用を含めた不快な症状を和らげる④緩和ケア自体は、意図的にいのちを伸ばしも縮めもしない』とされています。

つまりがんが主となりますが、早期から苦痛を取り除くようサポートしてくれるシステムということです。

痛み、吐き気、倦怠感などの身体的苦痛、落ち込み、悲しみや死への恐怖などの精神的苦痛が

一気に迫ってくると対処のしようがありませんが、緩和ケアシステムでは医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、臨床心理士、栄養士、リハビリがチームとなり、様々な苦痛を一つひとつ取り除くよう努力してくれます。

具体的には食欲がなくなってきた際に食事内容の工夫から内服薬の整理、口からではなく注射などの緩和治療への切り替えやせん妄、不眠への向精神薬の投与そして本人のニーズに合ったリハビリの導入などを積極的に行います。

逆に心肺蘇生や気管内挿管、身体の抑制、血小板輸血やアルブミン注射、頻回の末梢点滴、昇圧剤の投与そして積極的な抗がん剤治療はなるべく行わないようにしています。

このように過剰医療によるQOLへの影響を避けるため緩和ケア病棟の入院要件が厳しいところもあります。

ところで、緩和ケア病棟への入院において求められる条件のようなものがあります。

まず本人が病名、病状を理解し十分な判断力があり入院を希望していること、そして家族もそのQOLのために協力する意思を持っていることが第一であり、抗がん剤や手術、放射線療法などの標準治療との併用はなく、心肺蘇生もしないことに同意することも条件となります。

緩和ケア病棟の敷居がどうしても高いと感じられた方には、自宅で生活しながらできる緩和ケアを選択することも可能です。

医師が行う在宅医療と看護師が行う訪問看護を利用し、疼痛管理、栄養補充、褥瘡やその他の創処置、そして入浴介助などができます。またリハビリもお家で行うことができます。

最近ではモルヒネの他にその数十倍の鎮痛効果のあるフェンタニルのはり薬などが開発され、とても使いやすく、医療用麻薬を安全に的確に使用できるようになりました。もちろん気持ちが悪くなった際の吐き気止めやそのほかの薬の処方もできますし、息苦しくなった際には酸素の機械をお家に持ってきて在宅酸素療法を行うこともできます。

近年、がん専門の在宅クリニックの数が少しずつ増えてきて、緩和ケア病棟に引けを取らない医療を提供できるようになりつつあります。

ただお家では少なからずご家族の協力が必要となるので、そのあたりのご理解が大事です。

今後、高齢者が増えると同時にがん患者も増えて病院だけでは対処しきれず、在宅管理の患者さんがますます増えるでしょう。

つまり、初期のがん治療や治療効果が見られるうちのがん標準治療は大きな病院で行い、効果が少なくなって時点で、在宅での緩和ケアへの移行が顕著になることが大いに予想されます。

来たる時に向けて私のクリニックも準備をしないといけませんし、いつか患者になる自分も覚悟が必要です。

出典 La Felice