あまり好きになれない人工知能

今年は人工知能やロボットに関する話題が多かったように思います。

そもそも人工知能(AI)とは、人間の脳が行う知的作業をコンピューターで模倣したソフトウエアやシステムのことで、身近なものとしてはsoftbankが売り出したパーソナルロボットのPepper君やアップルスマホiphoneの音声アシスタント機能のSiriがあります。

また映画ではターミネーターやチャッピーなどが有名です。ターミネーターでは人工知能を持ったロボット開発が進み、人間は何もしなくて人工知能がすべてを作り出すシステムを作り、そして人工知能がその機能を人のために使わなくてもよいと勝手に決めた時に人間を攻撃し始めるといった究極を描いており、このまま研究が進むと将来がターミネーターのようにとても怖いことになる気がしてなりません。

特にグーグルはあらゆるデータ収集のため人工知能やロボットの会社を積極的に買収し研究を進めていますが、あの可愛らしいグーグルの自動運転車が、自律性を持ち他車と情報をやり取りしながら動くようになったらちょっとした兵器にも利用できてしまうのではと(実際はそうでないでしょうが)少し悲観的に想像してしまいます。

アマゾンや楽天では商品をよりよく売るための手段として人工知能を用い、トヨタやホンダは自動運転技術、アップルは画像認識、フェイスブックやマイクロソフトはユーザーの使い勝手の向上に利用しているようです。

また日本の国立情報学研究所では人工知能ロボットの“東ロボくん”が東大の入試に挑戦しており、現在偏差値が50まで上がってきているといったユニークな実験も行われています。ただこの実験の背景には人工知能の偏差値が様々な分野で60になれば、人間の労働が人工知能に置き換わる裏付けになることを示す意味もあるようです。

米IBMが作ったWatsonという人工知能は金融や医療やライフサイエンスの分野でも広く利用されてきています。Pepper君もWatsonを利用したものですが、Watsonの特徴は、人間の話した言葉を理解し、これらを膨大なデータとして蓄積しながら、質問に対して正解を探す学習を重ね、確度の高い答えを導き出せることにあります。

このように人工知能が人間に近づく中で、2013年にオックスフォード大学で人間の仕事を人工知能が代用できる可能性を職種ごとに、操作性、創造性、社会的相互作用などの項目で評価を行い、数値化する手法が研究されました。

そしてこの方法を用いて、つい最近、野村総合研究所は日本の労働人口の約半数が、人工知能やロボットで置き換えが可能との推計を発表しました。約半数とは驚きです。その可能性が高い職種としては、一般事務員、タクシー運転手、レジ係など、いわゆる単純労働がその対象となっており、一方、置き換わる可能性が低い職種としては、アートディレクター、エコノミスト、教員、介護職員などが挙げられていました。

しかし、現実的には当分の間、ロボットのコストは高いので、低賃金単純労働を簡単に置き換えることは難しい。

「むしろ、頭脳労働ではあるものの、単純な知識に依存し、賃金が高いという職種の方が大きな影響を受ける可能性が高い。具体的には医師や弁護士、アナリスト、会計士といった職業である。彼等の仕事の大半は、単純な知識に基づいており、容易に人工知能への置き換えが可能である。高い実績を上げていた人は、むしろ人工知能を併用することで、さらに生産性が高まることになる。ごく一部の優秀な人に仕事が集中する結果となりそうだ。」とバッサリ斬られてしまった感じです。

私も医者ですから少し反論させてもらいますと日々の診療において様々な状態の患者さんと向き合う中で、単純な風邪症状から複雑な身体症状の他に精神的な症状が重なっている場合があります。こんな時は単純な知識から高度な知識とルーチン処理からケースバイケース処理やオーダーメード処理に切り替えるタイミングを患者さんの理解スピードに合わせながら見極めて、また待合室でイライラして待っている患者さんの顔を想像しつつ、納得してもらいながら話を切り上げるといった医者自身にしかわからないテクニックがあり、これらをロボットができるとは到底思えません。

こうした対面での仕事は当分無理でしょうが、診断の面では人工知能が入り込む余地が十分あると思います。

特に絵を認識する技術が高まればCT,MRIなどの画像診断やプレパラート上の細胞を顕微鏡で見て病気を見極める病理診断など人工知能ができるようになります。この診断技術の精度が増せば医者はその結果を参考にして最終診断をすることができます。

特に今後はがんの診断と治療に役立つかもしれません。がんを臓器別に見た場合、ある程度の進行予測は、その分野のプロは大方分かっていると思いますが、治療はまだまだ発展段階で、うまくいくケースもありますが、なかなか完治には至りません。

特に抗がん剤は、これぞというものがまだ出ておらず研究の余地が沢山残されています。つまり当分は不完全な中で何とか良い結果を出さなければならない時に、患者個人のデータと今までの臨床データや現在治験などで進行中のデータを人工知能に処理してもらい、オーダーメードの最適な薬の処方ができたらいいなと思います。ただし、これはコストや認可のハードルがぐっと下がった場合なので、まだまだ乗り越えて行かなければならないことが沢山あります。

在宅医療においては、患者さんの部屋に心拍状態を非接触で測定できるミリ波レーダーの装置をつけてそのデータを主治医に飛ばせば、遠隔監視が可能になります。病院に近い管理が在宅でもできるようになり国が後押しするかもしれません。ただ、このシステムが普及する前に日本の高齢化社会は終わってしまうかもしれないので、日本より遅れて高齢化が来る他の国で利用される可能性があります。

人工知能の発展で、近い将来分野によっては医師の仕事の内容が変わり、職業像は徐々に変わってゆくでしょう。遠い将来は人工知能を使う医者と人工知能に使われる医者に分かれるかもしれません。

なんだか住み心地悪そうです。あまり人工知能が発展してもらっても困りますね。

便利さばかり追求して、不便の中で感じあえる人と人のつながりを失いたくはありません。

私自身は今の時代に仕事ができてよかったと思います。

こんな形で将来を憂いながらも無事に2015年の大晦日を迎えることができました。

来年も健康第一をテーマにふと思ったことを書いてまいります。

出典:jp.techcrunch.com