がん10年生存率を上げるため免疫細胞療法の力を借りよう!

がん治療において5年生存率が一つの目安になっていますが、このほど国立がん研究センターより10年生存率が公表されました。

1999年から2002年の間に16施設で診療した3万5千症例が対象で、がん全体の5年生存率が63.1%に対し10年生存率は58.2%でした。

まあまあじゃないかと思われる方もいるでしょうが、がんを部位別でみるとかなりの差があります。

最も10年生存率が高いものは甲状腺がんで90.9%、最も低いものはすい臓がんの4.9%です。

5年と10年の比較では胃と大腸がんは69%の横ばいで推移し、早期であれば治療により5年で完治とおおむね言えるでしょう。

一方、肺がんは39.5%から33.2%へ、肝臓がんは32.2%から15.3%へ大きく低下します。乳がんは生存率そのものは他のがんと比べ80%台と高いのですが、5年の88.7%から10年で80.4%と8.3%も大きく下落しています。

何とか5年間を乗り切れば、あとはずっと長生きできると考えている方にはちょっとショックの結果かもしれません。

やはり5年で油断することなく長期フォローのスタンスで、免疫力を高めたり、新たな治療を加えていく必要がありそうです。

特に30%台の肺がんまたはそれ以下の食道、胆のう、肝臓、膵臓がんに対しては今の標準治療だけで生存率を大きく伸ばすことは、とても厳しい気がします。

もちろん今後は標準治療も進歩して行きますが、現時点では標準治療プラスαの治療が必要であると思います。

今年早々に私はお世話になっている健康増進クリニックの水上治先生と連絡を取り、今後のがん治療についてご意見を伺ったところ、新樹状細胞ワクチン療法と活性NK細胞療法の治療成績がとても良く、標準治療のプラスαになりうる治療と教えて頂きました。

樹状細胞ワクチン療法は免疫療法の一つで、自分の樹状細胞を試験管で増やし、自分のがんの目印を付けて、再び体に戻し、その目印をキラーT細胞に覚えこませ、実際にその目印を持ったがん細胞をキラーT細胞に攻撃させるものです。

目印には自分の体にできたがんを手術で取り出した後にすりつぶして利用するものと人工抗原があります。人工抗原は正常細胞ではなくがん細胞に特異的にある抗原でWT1抗原が良く使われます。

この抗原を樹状細胞につける際に、樹状細胞の表面にあるHLAという器にWT1抗原を乗せますが、何種類かあるHLAの型と合わないと乗せることができずワクチンとして機能しない欠点があります。

新樹上細胞ワクチン療法ではこの欠点を克服した新しいWT1を全ての患者さんに使用できるようにしたものです。そして新しいWT1はキラーT細胞だけでなくヘルパーT細胞も活性化するので攻撃力が上がります。

また培養技術の進歩により、今まで自分の血液中の樹状細胞の元となる単球の取り出しに何時間もかかり大変でしたが、これが少量の血液採取で済むようになったこともあげられます。

私たちの体の中で毎日DNAのコピーミスで6000個前後のがん細胞ができているといわれていますが、これをせっせと殺して処理しているのがNK細胞であり、我々にとってとても大切な免疫細胞です。

活性NK細胞療法は自己、非自己に敏感なNK細胞を採血後2週間かけて約1000倍に培養して活性化した後、点滴で戻す方法です。

活性化したNK細胞は、がん細胞の表面にあるMHC分子の減弱を見つけ出し、それをめがけて攻撃します。

またがん細胞のMHC分子がはっきりしないか、消失している場合はIgG抗体を用いFcγレセプターを介してがん細胞を攻撃します(ADCC活性)。

よって活性NK細胞はこれら二つの方法で確実にがん細胞に取りつきアポトーシスに導きます。

この新樹状細胞療法考えたアベ・腫瘍内科・クリニックの阿部博幸先生は活性NK細胞療法と合わせたハイブリッド療法を提唱して良好な結果を出しています。

ただしこの方法を成功させるには患者さん自身のある程度の体力が必要で、がんで栄養失調になった状態では厳しいようです。

その体力を保つためには、野菜や玄米だけの偏った食事でなく、肉、卵など動物性たんぱくも含めたバランスの良い食事が大切であると阿部先生は述べています。

これらの方法は、未だ保険がきかず経済的な負担が大きいのが欠点ですが、ある程度の効果があり、副作用もあまりないので、今後標準治療にプラスαの治療として一番の候補になり、生存率にも影響を与えていくと考えます。

直近(2004~207年)の5年生存率はがん全体で68.8%に上がっており、今後の10年生存率はもうすこし高くなると予想されます。

そしてこのハイブリッド療法が安くできるようになりの広く普及することで、肝臓、膵臓がんの生存率が底上げされれば、全体の5年、10年生存率はさらに上がるでしょう。

世の中のためになる良い方法なので、今後は当院でも取り扱えるよう努力したいと思います。

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