いつまでも健康でがんにならないように緑茶を飲もう! 進む分子生物学的緑茶研究

私は毎日欠かさず緑茶を飲んでいます。

3年前、2013年5月に「緑茶を飲んでがん予防」というブログを書いた手前、ずっと続けています。緑茶には胃がん、肺がんの予防効果があって、そのカギを握るのが4種のカテキンの中のEGCG(エピガロカテキンガレート)であるとお話ししましたが、最近ではその仕組みがさらに明らかになりエビデンスも積みあがってきました。また、がん以外の病気や健康にも影響力を持つことが分かってきたので、今回はそのあたりをご紹介したいと思います。

もともと日本人は長寿であることから、緑茶を飲むことが病気の予防や長寿に影響を及ぼしていると普通に考えられます。

国立がんセンターの井上先生の研究では、1990年から始まった14万人の日本人地域住民を対象とした多目的コホート研究(大規模疫学研究)において男女とも80パーセントの人は毎日緑茶を飲用する習慣があることがわかりました。

続いて緑茶の飲用とがん、心臓、脳、呼吸器などの主要死因死亡リスクとの関連では1日2杯以上の緑茶飲用量が増えるにつれて死亡リスクが低下する傾向が見られました。またカフェインも摂取量に応じて同様に死亡リスクの低下がありました。理由としてカテキンによる脂質、血糖の調節、改善効果やカフェインによる血管内皮の修復や気管支拡張作用が死亡につながる危険因子を除去しているためと考えられています。

がんとの関連で、まず胃がんでは女性で1日5杯以上飲む人は胃の上部3分の1と下部3分の2で分けた場合、下部での胃がんの明らかなリスクの低下があり、胆道がんでは7杯以上飲む人に有意な低下がありました。前立腺癌では前立腺を超えて外に広がっている進行性と内にとどまっている限局性を比較したところ、緑茶の飲用が多いほど進行性のリスクの低下が見られました。甲状腺がんは少し変わっており、閉経前の女性では緑茶を良く飲む人ほど甲状腺がんになりやすく、一方、閉経後では良く飲む人ほどなりにくい傾向が見られました。そのほか大腸がん、肝がん、膵がん、乳がん、膀胱がんでは関連は見られませんでした。

疫学研究からは緑茶の効果は限定的な感じに受け取れますが、私は緑茶には少なからず抗がん効果があることが重要と思います。それには分子生物的な手法で研究を進める必要があります。

九州大学の立花先生は緑茶の効果を明確にして、さらに引き出そうと日々奮闘されており、今やカテキン研究の第一人者です。そもそもカテキンは巷で良く聞くポリフェノールという物質でありフラボノイドと総称される成分の一種です。そのカテキン類の一つであるEGCGは他のカテキンと比較して強い生理活性を示すとともに茶以外の植物には見いだされていないお茶特有の物質です。

体内には細胞を支持する基底膜があり、この基底膜を構成する糖たんぱく質にラミニンがあります。ラミニンは細胞接着因子でもあり、このうち67KDaラミニンレセプター(67LR)がEGCGの活性発現に関与する標的分子であることを立花先生は同定しました。

つまり、お茶の中のEGCGが細胞膜の67LRに結合することで様々な反応が起こるということです。

結合すると①アデニル酸シクラーゼの経路を介してがん抑制遺伝子の一種であるMerlinを活性化しがん細胞増殖を抑制します。

②NO(一酸化窒素)合成酵素を活性化しcGMPを増やすことで酸性スフィンゴミエリナーゼが活性化され、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

③TLR4シグナル阻害因子であるTollipを発現誘導し、がんにより引き起こされている炎症反応を抑えます。

しかし、これらの実験はEGCGがある程度高い濃度で行われているので、生理的な低濃度では効果が不十分である可能性がありました。そこで、いくつかの物質を用いて何がEGCG活性を促進するのか実験が行われました。

まずはビタミンAの誘導体であるオールトランスレチノイン酸です。

これをメラノーマ腫瘍に用いたところ67LRを増やしEGCG細胞表面結合量を増加させて、その成長を抑制する効果が見られました。

続いて、EGCG活性化によるアポトーシス誘導にはcGMPが必要ですが、腫瘍に高発現しているホスホジエステラーゼ5(PDE5)はcGMPを減らしてしまうので、PDE5を阻害する物質が必要になります。

カフェインにはこれを阻害する効果があり、緑茶にもともと含まれているので有用ですが、ED治療薬のバイアグラにも阻害作用があることが分かってきました。そこでヒト乳がん細胞をマウスに移植したモデルにEGCGとバイアグラを投与したところ16日間で細胞が死滅しました。また、多発性骨髄腫や胃がん、すい臓がん、前立腺がんでも同様の結果が得られ、バイアグラとEGCGのコンビが、かなり期待できる物質であると考えられています。

またEGCG活性の増強作用はスフィンゴシンキナーゼ阻害剤との併用においても観察されます。スフィンゴシンキナーゼは、がんの血管新生を促進するので、強い薬以外にこれを阻害する食品があれば助かります。最近、大豆由来のスフィンガジエンがスフィンゴシンリン酸と拮抗し結腸癌の発生を抑える可能性も言われてきているので、もう少し研究が進むことを願っています。

現時点でEGCGを活性化させる食品の候補としてビタミンA、カフェイン、大豆が有力と考えられています。特に、ビタミンAを含むレバーやかぼちゃの摂取だけでは追いつかないので、ビタミンAに関してはサプリメントを用いることも大切です。

がん以外ではEGCGには抗アレルギー作用、LDL酸化抑制作用、インフルエンザ予防効果、認知機能の低下抑制があることがデータとして示されてきております。

つまり、緑茶が単なる健康飲料から薬効をもった飲料であると示される日が近づいてきているからでしょうか。

私たちの周りにはあふれるほどの健康食品がありますが、あれこれ手を出さず、じっとお茶だけを飲んでいるだけでも、かなりの病気を遠ざけることができると思います。

わたしはこれからも緑茶を飲む習慣をやめることなく、続けて参りたいと思います。

photo :富士山写真道楽