奥多摩の巨樹にかこまれ 森林セラピーでがん予防

梅雨の晴れ間に中央線に乗って奥多摩の森林セラピーに参加してきました。

森林浴はよく耳にしますが、森林セラピーという言葉は初めでした。訳すと森林療法になるので、体にいいこと好きな私としてはとても興味を持ちました。

森の中にいると自然と気持ちがよくなります。

森林浴は血糖値、血圧、ストレスホルモンを低下させ、自律神経のバランスを整えてリラックス効果をもたらすものとして1982年に提唱された概念です。

この頃より森林が体に与える効果の研究が進み、免疫力が上がるなど実証されてきました。森林セラピーはNPO法人 森林セラピーソサエティにより商標登録されております。

その総合サイトによると森林セラピーは医学的な証拠に裏付けられた森林浴効果のことで、森を楽しみながらこころと身体の健康維持・増進、病気の予防を行うことを目指すものとされています。

実際にある森の森林浴効果が都会との比較実験により証明されれば、その森は森林セラピー基地として森林セラピーソサエティから認定されます。

現在、全国で62か所の基地とセラピーロードが認定されており、今回の奥多摩はその一つで“おくたま巨樹に癒される森”と呼ばれています。

森の中を歩くことが基本ですが、ヨガやそば打ちそして星空浴などいくつかが組み合わされたメニューがあり、セラピー基地ごとに特色があります。

奥多摩の駅からバスで約40分揺られて山のふるさと村に到着。

施設の部屋でガイダンスを受けたのち血圧と唾液アミラーゼ測定でストレス度をチェック。私自身のストレス度はやや高めでしたが、気にせずにそば打ち体験へ。

はじめてのそば打ちは思っていた以上に難しい。しかし、これが後の昼食になるので、額に汗して一生懸命につくりました。出来上がったそばは手前味噌ながらなかなかの物で地元のおかずと合わせ、さらにおいしくいただきました。

昼食後、いよいよガイドさんと一緒に森の中のセラピーロードをウォーキング。

今回は奥多摩湖畔に沿ってつくられた全長12kmの“奥多摩湖いこいの路”を行きましたが、私たちは散策しながらリラックスすることが目的なのでそのうちの2kmのみを歩きました。

木立の間からエメラルドグリーンに近い色の湖が見えて、湖面から吹き上げてくる風がほてった体を適度に冷やし、ヒノキや杉の森の香りにつつまれてとても心地よい気分になりました。

湖畔にてガイドさんから森に関わる小動物や虫、植物の話を聞きながら、奥多摩でとれたハーブのティータイムも癒しを演出してくれました。

続いて皆で湖面に向かって奥多摩式森林呼吸法を実践し、森林セラピーのクライマックスを味わいました。

施設に戻り再度血圧と唾液アミラーゼの測定を行ったところ、ほとんどの方に血圧の低下とアミラーゼ値の減少が見られ、森林セラピーの効果があったようです。

私は最低血圧(血圧の下の方)の低下がみられ、客観的な効果としては少ないですが、その後の温泉の気持ちよさと合わせてとても満足することができました。

是非、多くの方に味わっていただきたいと思います。

森林浴は癒し以外に免疫力を高める効果があり、特にNK細胞の活性を上げるといわれています。NK細胞はがん細胞を直接殺し、感染症の防止にも役に立っている細胞です。

しかし、ストレスによりNK活性は抑制されるので、ストレスを低減することが重要になります。

日本医科大学の李先生は森林と都市部の生活の比較実験を行い、NK活性、NK細胞内の3種類の抗がんたんぱく質と尿中アドレナリン濃度を測定しました。

結果は森林生活をはじめて2日でNK活性とNK細胞数が増加し、一方都市部の生活では変化が見られませんでした。

また、抗がんたんぱく質は同様に都市部では変化がなかったものの森林生活において2日で上昇しました。

NK細胞はパーフォリン、グランザイム、グラニュリシンなどの抗がんたんぱく質を放出してがん細胞を攻撃します。

実験においてこの3種の増加がみられたことから、抗がん活性も高まったと考えられます。またこれらの活性が1か月後も持続していたことから、月に1度森林浴をすれば高い免疫機能を維持できる可能性があることもわかりました。

ストレスの指標である尿中アドレナリン濃度は森林生活において減少したものの都市生活では変化がなく、森林生活がストレスを減少させた結果が得られました。

最近よく耳にする森の香りの成分であるフィトンチットは樹木が自らを害虫から守るために発散する揮発性物質です。

それが人間の免疫にどういった影響を与えているかを調べるために、フィトンチットとしてヒノキ材と葉油、α-pineneを用いて試験管レベルでの実験を行ったところ、ヒトNK細胞内の抗がんたんぱく質が増加しNK活性を上げる結果が得られました。

結果をまとめると、森に漂うフィトンチットが呼吸を通して体内に入り血液に溶け込み、直接的に免疫細胞を活性化させたといえます。

またフィトンチットが脳を鎮静化し自律神経に作用しストレスホルモンを減らすことで、間接的にNK活性を上昇させる効果をもたらすこともわかりました。

がん予防においてはNK活性を上げて維持することが大切です。

免疫力向上にはさまざまな方法がありますが、森の中に入れば直接的、間接的に免疫力を上げてくれるので、私たちはもっと森に近づき接してゆくべきでしょう。

森を活用した森林セラピーはがん予防や健康維持に役立つ理にかなった良い方法であり、気軽に参加でき楽しめるので、多くの方に知っていただきたいと思います。

奥多摩は思っていた以上にいいところでした。