甘酒は腸内環境を整えるための力強い味方です

幼少の頃、お祭りで甘酒を初めて飲まされ、あまりおいしくなかった印象があります。

以後二三度口にしたものの、それ以上欲することはなく過ごしてきました。

そのころ飲んだのは酒粕を湯に溶かし砂糖を加えた甘酒だったので、お酒の香りが合わなかったのかもしれません。

しかし、医者になって7年が過ぎたころ酒粕についての本とめぐり合い、その効能があまりにも素晴らしかったため、好きではないはずの酒粕に興味を持つようになりました。

のちに基礎研究の機会を得て脊髄損傷の研究を始めましたが、その傍らで酒粕の研究も細々と行いました。ねずみと日々暮らす中で、ある時肥満ラットに酒粕を混ぜたエサを与えてみると中性脂肪の増加と体重増加の抑制作用があることがわかり、これを何とか形にしようと酒粕を飲みやすくしたSAKECAKEというサプリメントを作ったことがあります。今は製造しておりませんが、酒粕の力を埋没させるのはもったいなく、またの機会に作ってみようと思います。

最近は米麹を使った甘酒が人気のようです。

米に麹菌をつけ米麹とし、この米麹に水を混ぜて60℃で温め続けること6~8時間で、とろとろの甘酒ができます。麹菌が発酵過程でお米のでんぷんを分解しブドウ糖に変えるのでとても甘いです。甘酒にはブドウ糖の他に豊富なビタミンB群やアミノ酸も含まれており、「飲む点滴」「飲む美容液」などと呼ばれています。また8~10%アルコール分が含まれる酒粕と違ってアルコール分がゼロなので子供や妊婦、運転者も安心して飲むことができますし、カロリーも砂糖を入れる酒粕甘酒より低いため、カロリーの気になる方には良いでしょう。

一方、酒粕甘酒はアルコール分のことを除くと、米麹甘酒と比べてビタミン、アミノ酸、食物繊維の含有量が多く、何よりコレステロールの低下に関係するレジスタンントプロテインが含まれており栄養価としては上回っています。

甘酒と腸の関係において、甘酒に含まれる食物繊維やオリゴ糖が大腸に届くと酪酸菌のエサとなり酪酸菌が増えて酪酸を豊富に作ります。酪酸は制御性T細胞による免疫寛容に関与し過剰な炎症を抑えるため炎症性腸炎や喘息、アトピーの鎮静化の助けとなります。

また植物性乳酸菌を含んでいる場合には、それらが小腸に達した後、乳酸にて腸内を酸性にして蠕動運動を活発にするとともに乳酸菌が産生するバクテリオシンが悪玉菌を抑制し腸内環境を改善します。

生の米麹甘酒(生甘酒)では熱入れをしていないので、麹菌が作り出したアミラーゼ、プロテアーゼなど多くの酵素が活性のある状態で存在しており、腸における消化吸収を大いにサポートします。

先日の点滴療法研究会のワークショップにおいて桑島内科医院の桑島先生は甘酒を実際に患者さんに用いてその効果について発表されました。

まず外来患者さんに飲ませたところ便秘が最も多く改善し、夏バテや肌の改善、そして過敏性腸症候群やパニック、過換気症候群が軽快したようです。

続いて特別養護老人ホームの認知症、不穏、食欲低下や下痢などがある状態の悪い入所者7名に生甘酒を毎日一杯飲ませ3-4か月続けました。その結果7名中4名の全身状態が改善し、不穏と便秘、下痢の改善、食欲の増進によるアルブミン値の改善が見られました。

そして、この実験の途中、集団感染がおこり多くの方が発熱し抗生剤の治療を受けましたが、生甘酒を飲んでいなかった人に比べ飲んでいた人は軽症で済んだようです。

今度は生甘酒による腸内の変化を見るために、状態の良い方3名に生甘酒を毎日1杯1か月間続けてもらい、摂取前後の便検査を行いました。すると腸の炎症性マーカーであるカルプロテクチンの有意な減少と真菌のカンジダの減少がみられました。

これらから生甘酒が腸内環境の改善に少なからず関与していることが分かり、先の入居者の全身状態が改善したことは腸内細菌叢を整えることにより免疫力や精神機能の改善につながったものと思われます。

このような結果を導く生甘酒は大したもので、十分な利用価値があるといえます。

在宅医療の現場や私が理事をしている四街道の特養でも便秘の問題があり、今後は生甘酒の活用も必要であると考えています。

なるべく薬に頼らず、機能性の食品を利用し、自然な形で体調が整えられることはとても大切ですし、甘酒をより多くの方に使っていただきたいと思います。ただ、飲みすぎは、糖質の取りすぎにもなりますから注意が必要です。

話は変わりますが、このたびの会で久しぶりにソフィアイーストクリニック日本橋の尾崎先生とお会いし近況を伺うことができました。

尾崎先生はがん患者さんの腹水治療のスペシャリストです。CART(腹水ろ過濃縮再静注法)という腹水を腹腔から抜いて、細菌やがん細胞を取り除き、アルブミンなどが濃縮された腹水を再び点滴で戻す治療をしていて、私は腹水の患者様から相談があった際には、必ずご紹介する先生です。

ところがこのたび尾崎先生は2トントラックを改良し救急車を大きくしたような感じのCARTの設備を整えた車を作ったのです。つまり、通院できない腹水の患者宅まで自ら出向いてからこの車の中でCARTをしようというものです。外観はピンク色の背景に赤いハートがいくつか描かれておりとても目立つデザインです。

とてもユニークで日本ではオンリーワンであり、ますますの普及が期待されます。

このたびの点滴療法研究会は何名かの先生方に独自の治療法や技をご紹介いただきそれを学ぶ場でありましたが、皆さんに共通しているのは、患者さんのためにとことん努力している姿勢でした。

これからの個別化医療に対応するためにはこのような気持ちと技を持ち合わせることが大切であると感じました。

ただ、多くの検査法や治療法が日々増えているので、混乱が懸念されます。

私たち医師は有用なものとそうでないものを選別し、最短距離で患者さんに治療方法をお伝えする技量が必要です。

そうした中で私は食品を基本とし、それに新たな治療法を組み合わせる方法を選択し今後ご紹介して参りたいと思います。

photo: 田中酒造