ロコモ フレイル サルコペニアを理解し健康寿命をのばそう

最近至る所でフレイル サルコペニア ロコモティブシンドロームなど高齢の方々向けの言葉が多く聞かれるようなりましたが、統一された定義がなく、それぞれの意味と関係がいまひとつ分かりにくいようです。
そこで私なりに少し整理してみようと思います。
フレイルは2014年に日本老年医学会がFrailty=弱さから作った造語で、加齢による予備力低下が原因で、些細な外的因子に対して健康被害をきたしやすい状態を言います。

サルコペニアは以前ブログで書いたように、ギリシア語で「肉」を表すサルコと「喪失」を意味するペニアを合わせた造語で、筋肉が無くなることを意味しています。主に進行性および全身性の骨格筋肉量や骨格筋力の低下により身体的障害や生活の質が低下するような状態を示し、筋肉をメインにした言葉です。

ロコモティブシンドローム(ロコモ)は10年前に日本整形外科学会が提唱した言葉で、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、立つ、歩くといった移動機能が低下している状態を示しています。

フレイルには糖尿病、心臓病、認知症などの加齢による慢性疾患が背後に存在している場合が多く、長年の生活習慣が影響を及ぼします。
フレイルの診断基準としては①体重減少(年間5%以上)②疲れやすい(何をするのも面倒だと週に3,4日以上感じる)③歩行速度の低下④握力の低下⑤身体活動量の低下のうち3項目以上を示すものとされます。
またフレイルは身体的なものだけでなく、認知能力や精神的、社会的な面も関係しており、少し動ける人から寝たきりの人も含まれるので割と幅広い概念であるともいえます。
フレイルに適切な治療などの介入をすれば、健康の方向に戻すことも可能ですが、介入をしないと身体機能障害が進み死に至る危険性があります。

一方、ロコモティブシンドロームには移動機能を調べるロコモ度テストがあります。①下肢筋力を調べる立ち上がりテスト②歩幅を調べる2ステップテスト③痛みやしびれ、日常生活動作などの25項目の問診に答えるロコモ25の3つのテストからロコモ度1or2を判定します。
ロコモ度1は移動機能の低下が始まってきていることを示し、ロコモ度2は移動能力の低下が進行して自立した生活ができにくいことを示します。
因みに40歳以上の日本人でロコモ度1は4590万人、ロコモ度2は1380万人いると言われています。
もともと整形外科学会としては人々が要介護にならないように移動機能という面から注意喚起をして予防するためにロコモを提唱したので、フレイルという状態の前段階を示しているように私は感じます。
実際にフレイルにならないようにロコモ対策をしようとロコモとフレイルの連続性を言う老年内科の先生も出てきているようです。

サルコペニアの診断は60歳以上で①歩行速度②握力③筋量の測定により行われ、日本では370万人と推定されています。
整形外科医的にはその数倍は存在する印象があり、このロコモより圧倒的に少ない数に驚きを感じます。
よってサルコペニアはロコモより重症なものとしてフレイルの中の一病態と考えた方がしっくりきます。

厚労省のホームページによるとフレイルとサルコペニアの関係において、Frailty cycleの中にサルコペニアを位置付けています。
つまり、サルコペニアになると筋力、活力の低下で身体機能と活動度が低下し、さらに基礎代謝が低下することで体全体のエネルギー消費が減少します。
すると食欲と食事摂取量が減り、低栄養に至りその結果サルコペニアが進むといった悪いサイクルに陥ってしまうと説明しています。こ
れはサルコペニアをフレイルサイクルの中核病態として位置付けているといえます。

まとめると加齢によりロコモとなり、様々な疾患が加わることでフレイルへと進むが、そのフレイルを加速させる中核にサルコペニアが存在すると私は考えます。

ロコモを進ませないためにはロコトレをはじめとする運動とタンパク質とカルシウムの入った食事が大切と言われています。またフレイル予防にはもちろん運動とビタミンDとタンパク質の摂取が大切です。
運動療法に関する最近の論文では、肥満高齢者に運動指導する際、有酸素運動と筋力トレーニングを合わせて実施することで、有酸素運動または筋力トレーニングのみを実施する場合に比べ、半年後の身体機能はより大幅に向上することが示されました。
有酸素運動だけでは体重が減るだけでなく股関節骨密度も減ってしまい、筋力の増加割合も他群の1/4以下で、あまりいい結果ではありませんでした。
つまり、有酸素運動だけでは加齢に伴う筋量および骨量の低下を加速させ、結果としてサルコペニアやオステオペニアを生じさせる可能性があるので、筋力トレーニングの併用が望ましいと論じていました(Villareal DT. N Engl J Med.2017) 。

また、フレイル予防には絶対に避けなければいけない病気として糖尿病があります。
糖尿病はインスリンが働かず、糖新生の抑制が効いていない状態なので、常に体タンパクの異化か続いており、筋肉のタンパクが使われてやせ細ってゆきます。
フレイル予防におけるタンパク質摂取は食事から60~80g/日くらい必要で、運動とともにアミノ酸のBCAA一つであるロイシンを十分とることも大切です。これはロイシンが筋タンパク質を増やす働きが強いためです。
もちろんタンパク質の代謝を促すビタミンB群は必要ですが、ビタミンDも骨だけでなく筋肉にも働き、代謝を上げてタンパク質の合成を促進することもわかってきました。

これらの栄養素を十分とりながら有酸素運動と筋トレを行い、中核病態であるサルコペニアを予防することでフレイルに陥らないようにしましょう。

このようなことを40代から心掛けていればもちろんロコモにはなりません。

photo: Fraser Health News