ビタミンDはがん治療のサポート役としてとても大切

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ビタミンDといえばカルシウムや骨に関係する大切なビタミンと多くの人は知っていますが、それ以外の働きは?と聞かれるとなかなか答えられないものです。

2013年2月のブログでご紹介したようにビタミンDはアレルギーの調整、免疫系の賦活、糖尿病や心臓、血管そしてがんのリスク低減に関係しています。

最近ではビタミンDが子宮、卵巣の質や環境の改善とともに妊娠しやすい体作りを助けることが分かってきました。また、小腸粘膜上皮細胞の成熟の促進や腸管免疫の機能強化など腸との関係も明らかになってきています。

これらはビタミンDが細胞膜のビタミンD受容体への結合によるシグナル伝達系の活性化と、細胞の核内受容体への結合による遺伝子発現の調節により細胞に変化をもたらすためです。

またビタミンD受容体は核内受容体スーパーファミリーの一員で、ヒトの遺伝子の約3%の制御に関わるともいわれ、炎症、免疫、発がん、細胞増殖と分化、アポトーシスなどの生理機能に影響します。

特にがんとビタミンDの関係では、細胞膜受容体での反応と核内受容体での反応において興味深いものがあります。

体内には細胞間のシグナル伝達に係るWntタンパク質があり、これが細胞膜の受容体につくと細胞質内にあるβカテニンが活性化されます。βカテニンは細胞増殖や細胞周期に係る遺伝子に働きかけたりしますが、遡ってWntを制御する働きもあり、βカテニン自身が増え過ぎないように調整しています。

しかし、これが異常をきたすとβカテニンが増えて細胞質や核に蓄積し、がん化の原因になります(2008 山本)。

また、Wntシグナルの活性化が細胞老化、個体老化を促進させる方向に機能しているといった意見もあります(2012 塩島ら)

そして、このWnt/βカテニンシグナル伝達系は多くのがん細胞で異常を起こしており、がん細胞を増殖させます。

よって、この伝達系を阻害することががん治療のひとつであり、その阻害活性を持つ物質にはセレコキシブなどの非ステロイド性抗炎症薬やアスピリン、ポリフェノール、ビタミンAとDなどがあると報告されています(2010 高橋)。

特にビタミンDは核内のビタミンD受容体と結合し、βカテニンの転写活性を阻害することでがん細胞の増殖を抑制する方向に導くことが分かってきました。

Wnt以外の経路においてもビタミンDによる増殖抑制、分化誘導、アポトーシス誘導作用が報告されています。

ひとつはビタミンDが核内受容体に結合後p21遺伝子が発現上昇し、細胞周期のG0/1停止となることで細胞増殖は止まり、アポトーシス(細胞死)が導かれると言われています(1996 Freedman)。

またビタミンD受容体結合におけるリガンドに着目し、さまざまなビタミンD誘導体を作った実験では、いくつかの誘導体ががん細胞の核内受容体を介した分化誘導(がんを悪人から善人にかえる)と核内受容体に関係なく細胞膜の受容体を介してアポトーシスを導くメカニズムが報告されています(2002 中川)。

このようにビタミンDは細胞の奥深くまで入り込んで細胞に影響を与えるのです。

核内受容体と結合するビタミンDは1α25(OH)2ビタミンDという活性型であり、体内のビタミンD濃度は活性化される前の段階の25(OH)ビタミンDを測定します。

その濃度とがん発生率をみた疫学調査では大腸がんや乳がんで25(OH)ビタミンDの血中濃度が高いほど、がんの発生率が低下していました。

実際に閉経後女性に1日1100IUビタミンDをカルシウム併用の有無で飲ませたRCT試験では、カルシウム併用ビタミンD摂取ががんの発生リスクを77%も低下させました(Lappe, Am J C N 2007)。

また乳がんのハイリスクの女性に1日2000UのビタミンDをセレコキシブ併用で飲ませたところ、ビタミンDの濃度上昇により乳房保護作用が示されました(Qin, Antcan R 2016)。

ビタミンD単独でがんに効果があったというような報告はまだ見当たりませんが、何らかの物質と併用することで、ある程度の効果が期待できそうです。

 

ところで、DNAの遺伝子がDNAやDNAが巻き付いているヒストンタンパク質がメチル化されることで、さまざまな表現型が作られる場合があります。

これをエピジェネティックな変化といい、加齢による老化ではDNAのメチル化が関与しています。

また、がんにおける遺伝子プロモーター領域のDNA異常高メチル化はp53などのがん抑制遺伝子を抑制し発がんを促します。

よってがん予防や治療にはこのエピジェネティクスの制御が必要になります。

つまり抑制されているがん抑制遺伝子を活性化したり、活性化されている発癌遺伝子を抑制することです。

がんに対するビタミンDの単独療法では効果が不十分なこともあり、最近ではエピジェネティクスな部分に作用するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤との併用で相乗効果が見られた報告があります(Bijian,J Ster Bio M B 2017)。

また短鎖脂肪酸ブチレートにはHDAC阻害作用があり、一部臨床で用いられているフェニルブチレートをビタミンDと併用することでエピジェネティクスなアプローチでがん治療を行える可能性があります。

大事なことは、25(OH)ビタミンDの血中濃度を引き上げることです。

その濃度は30~40ng/mlが望ましいと言われていますが、測定してみるとほとんどの人が20ng台と低値です。よってビタミンDを積極的に摂らなければなりません。

がん予防には1日1000~2000IU(25~50㎍)で、再発リスクが高い場合や進行がんの場合は1日2000~4000IU(50~100㎍)摂ると良いと言われています。

この量を処方薬のアルファロールなどの活性化ビタミンDで摂ろうとすると保険がきかないばかりか、かなり大量になり高カルシウム血症の危険もあり現実的ではありません。

一方、25(OH)ビタミンDでは大量に摂れて、必要に応じて活性化されるので1日250㎍の上限を守れば副作用の心配もありません。

当院ではがん予防やがんの方にも1日5000IU(125㎍)処方していますが特に問題はありません。

ビタミンDはがんだけでなく体内でプラスの方向に働く大事なビタミンなので、まずはご自身の血中濃度を測定して少なければ補充してゆく習慣をつけた方が良いでしょう。

picture: antiaginggroup.com