2018年 故きを温ねて新しきを知る

毎年変化を遂げる点滴療法研究会の新春ワークショップ。

今回は獣医師による動物でのビタミンC療法の話から在宅医や住宅型有料老人ホームを計画している医師の話まで多岐にわたりました。

 

精神科の飯塚先生によるとメンタル疾患の増加とともに糖尿病、アトピー性皮膚炎や慢性疲労症候群なども増加しており、これらはすべて同じ根をもつ現代病ととらえることができ、その原因には栄養不足があると指摘。

特にタンパク質不足と鉄不足そして糖質の過剰摂取が主因になると述べていました。

タンパク質不足には消化剤を用いてタンパク質の少量頻回摂取を行います。

鉄不足には吸収効率の良い肉や魚から取るようにして、鉄剤の注射はしないで、なるべく経口で鉄剤を摂るようにすることが大切。

また糖質の過剰摂取は血糖の急上昇(血糖値スパイク)を引き起こし、インスリンのスパイクへと続きます。

その結果急激な血糖低下による交感神経興奮により動機、手の震えなどの自律神経症状や精神症状、不眠を引き起こします。

メンタルと栄養は密接な関係にあるので、タンパクや鉄の他にビタミンやミネラルも不足しないよう注意が必要です。

 

歯科医の並河先生は抗がん剤による口内炎の治療に関しお話しされました。口内炎になると痛みで食事がとれずあっという間に元気がなくなるので早めの対処が必要です。

口内炎部へのオブラートを使った軟膏塗布とツムラ半夏瀉心湯や立効散でうがい薬を作る方法は画期的でした。

それに高濃度ビタミンC点滴を加えると口内炎が早期に治るようです。

この方法は当院でも可能なので今後実践してゆきたいと思います。

 

がん治療に関してはハタイクリニック西脇先生が一日の糖質摂取を5g以下にする絶糖療法と高濃度ビタミンC点滴の併用でがんの縮小がみられた症例を紹介されましたが、この糖質制限はかなりきつく持続が難しいようです。

 

大阪の奥野病院の奥野先生はIPT療法についてお話しされました。

この方法はインスリンであえて低血糖状態を作った後に副作用の起きない低濃度の抗がん剤を点滴する方法です。

がん細胞は正常細胞の16倍もの糖を取り込みます。まず低血糖にすることでがん細胞を

休眠状態から細胞分裂状態に変化させて抗がん剤の効きを上げます。

その後に糖と抗がん剤を投与し、がん細胞が少量の抗がん剤を勢い良く取り込むよう細胞内透過性を上げたものです。

奥野先生は悪性リンパ腫のほぼ消失例と肺がん、子宮がんの有効例を示されて、とても良い方法であると思いました。

 

最後に大阪の田中クリニックの田中先生はがんの超早期発見のためのプロテオ検査のお話をされました。

がん細胞がアポトーシスを起こしその破片のヌクレオソーム(ヒストン修飾でメチル化したもの)が新型チップに吸着した度合いを測ったもので、結果はリスク低、要観察、リスク高の3段階ですが、多くのがんに有用で割と精度の高い検査であるようです。

また最後に田中先生は昨年12月に発足したての腸内フローラ移植研究会における便移植について話されました。

最近の研究で、腸は腸内細菌と共に脳や内臓とクロストークをし、体の免疫の中心的な役割を演じていることが分かってきました。

つまり、腸や腸内細菌の具合がよくないと腸炎、メンタル疾患、アレルギー、自己免疫疾患、がんの発症につながります。

そこで考えられたのは健康な人の便を自分の腸に移植する方法です。

これは大学病院などで内視鏡を用い移植しますが、成功率が3割ほどであまり良い結果が出ていないようです。

一方、腸内フローラ移植研究会の方法はまず、健常者のドナーバンクをすでに作っており、そこから患者さんの状況にあった菌を選択して特殊な液に溶かし注腸検査のように肛門より200ccほどゴムチューブから注入します。その後の体位変換により70%近くが小腸に達して、成功率も8割と高い結果が出ており、開発者の話だと特にメンタル疾患に効果があるようです。

私は副作用も危険性も少ないこの方法にとても興味が湧き、当院に取り入れたい方法の一つになりました。

 

今回も新しい知識や技術を得ることができとても有意義な会でした。

1年に1回ですが新たなプレーヤーが毎度出てくるので来年もまた楽しみです。

まずは腸内フローラ移植研究会に早速連絡してみようと思います。

photo: MEDICINE ORTHOMOLECULAR