オーラルケアを腸活と共に続けよう

体の中には善と悪が存在する。というと少し大げさですが、私たちは悪性腫瘍は別として、善玉悪玉コレステロール、腸内細菌の善玉菌悪玉菌などのように便宜上分けていることに慣れています。果たしてLDLコレステロールは悪玉とされていますが、コレステロールを肝臓から末梢へ運ぶ重要な仕事を担っており悪といえるでしょうか?また腸内で悪玉菌といわれる菌も善玉菌とのバランスにおいて体内に常在しており、いざという時に肝臓で分解されるので、悪さばかりしているとは言えないと思います。口腔内にも善玉悪玉菌が存在しますが、この悪玉は悪さをすることが多く排除の対象となり、LDLや腸とは少し考えが異なります。

口腔内には700種類以上の細菌が存在し、長年の研究により歯の表面でバイオフィルムを形成しやすいある種の菌が悪玉と分かってきました。バイオフィルムとは風呂の排水溝のヌルヌル成分と同じ構造で菌とその代謝物に水が加わったもので、歯垢やプラークとも呼ばれます。その代表的なものが虫歯の原因となるミュータンス菌や歯周病の発症に関係するレッドコンプレックス(ポルフィロモナスジンジバリス菌、トレポネーマ、フォーサイシア菌など)です。

これらの菌は、歯肉の傷から血液中に侵入して菌血症を生じ、体内の様々な部位や臓器に異所性感染を引き起こします。心臓の悪い方が抜歯などの歯科処置を受けた後に感染性心内膜炎に陥るケースがあるので注意するといった医学的常識もあります。

在宅医療の現場でも口腔内の菌による誤嚥性肺炎や虫歯の放置による局所の炎症や発熱が時折見られるので注意をしています。

近年は研究が進み、口腔細菌と全身疾患との様々な関係も分かってきました。

特にポルフィロモナスジンジバリス菌はタンパク質中にあるアルギニンをシトルリンに変える酵素を持ち、その作用により変異したタンパク質を体が異物とみなして免疫による攻撃が始まり、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患を引き起こすと考えられています。

また、菌血症により全身へ広がったポルフィロモナスジンジバリス菌が血管内皮細胞に付着し侵入することにより炎症が起こり、最終的にはアテローム性プラークを形成し、動脈硬化や虚血性心疾患を引き起こすといわれています。そして、膵臓がん、糖尿病、認知症、高血圧症、早産の発症要因になることも指摘されており、この菌の毒性には十分注意する必要があります。

対策として、全身疾患を予防する観点から口腔細菌叢の健全化を図ります。具体的には悪玉菌を除去し人に有用な菌を出来るだけ多く残すという方法がとられます。

鶴見大学歯学部の花田先生によると、まずは歯ブラシなどによる物理的除去、薬を使った化学的除去、プロバイオティクスによる生物学的除去、細菌検査を活用した免疫学的除去を組み合わせることが大切で、特に重要なのは歯の表面にバイオフィルムを形成しやすいミュータンス菌やポルフィロモナスジンジバリス菌などの悪玉菌の除去であると述べています。そこで、花田先生は個々の歯形に合わせたマウスピースに薬を塗り一日10分ほど装着させることで、口腔内の善玉菌は殺さず、歯の表面にいる悪玉菌を除去する3DS除菌法を開発しました。とても簡便で良好な結果がでており、今後ますます注目される方法です。

健康のために腸が大切といわれ、ヨーグルトや発酵食品を毎日とるなどの腸活が盛んですが、腸内フローラの乱れはさらに上流にある口腔内細菌叢の乱れが大きく関係していることも分かってきました。

私はもちろん以前より様々なヨーグルトをローテンションで取るようにして腸活に励んでいますが、最近は口腔内環境をより良くするためにPB3というサプリを追加しています。このサプリは健康な人の口腔内から3種類の有用な常在菌を取り出し作られたもので、善玉菌を取り入れて悪玉菌を抑え込むという考え方が基本にあります。

具体的には歯周組織に働くS(ストレプトコッカス).オラリス菌、S.ウベリス菌、歯の表面に働くS.ラッタス菌の3つが含まれており、これらを4週間摂取すると悪玉菌であるミュータンス菌やポルフィロモナスジンジバリス菌が減少する結果が2009年Zahradnikらによって報告されました。

朝起きた時の口腔内の変な感じは繁殖した細菌によるものといわれ、朝一にうがいをすべきとの意見もあります。しかし、PB3を夜、歯を磨いた後に口に含み、ゆっくり溶かすようにすると翌朝、口の中は明らかにすっきりして、うがいをしたいという感じには至りません。つまり、善玉が優位になり悪玉が少なくなっている状態を実感していると思います。

また口腔内環境と腸に良い物質としてラクトフェリンがあります。ラクトフェリンは歯周病菌の増殖を抑制する働きのほか、小腸のパイエル板に作用し免疫を高めたり、腸内細菌叢のバランスを改善します。

当院でも取り扱っているこの2つのサプリの摂取により、口腔から腸管の環境をより良い方向に導けます。

腸内環境の改善は病気になりにくい体作りの必須条件であり、健康増進の要となります。

今後、私たちは健康のために“口腔は腸管の入口”ということを意識して,口腔内の清潔や環境作りを心掛けることが大切であると思います。

photo: Illinois Times