病院の国際化

先日安倍首相がTPP交渉参加を表明し国民皆保険の存続を心配している医療関係者を驚かしました。
また4日の新聞で三井物産は出資しているシンガポールの病院内に肝移植専門のクリニックを開設し、日本人医師を常駐させ、中東やアジアの患者の治療にあたるという記事がありました。

医療においても少しずつグローバル化が進んでいるようです。

昨日、知人に誘われ、丸の内の新丸ビルで開かれたJCIセミナーに参加してきました。
JCIとはjoint commission international 国際病院評価機構のことで、現段階でJCIと聞いてピンとくる人は相当の医療業界通と思います。
日本国内規格の病院機能評価を取得するために病院関係者が躍起になっていることは知っていますが、さらに国際規格が存在することは恥ずかしながら知りませんでした。
アラブのお金持ちがタイの病院にわざわざ来るようなメディカルツーリズムは医療サービスを受けることと観光を同時にできる最近流行りの旅行の形で、病院にとっては集客法の一つになります。

本セミナーを企画している会社側の考えは、メディカルツーリズムの普及のためにJCIの認証取得の必要性を知ってもらうことだと思いました。
講師はJCI認証を得るためのコンサルタント会社のゴンザレスさんとそのコンサルタントの協力で最近JCI認証を取得できた湘南鎌倉総合病院のドクターと事務の方でした。

メディカルツーリズムの成功は多くの外国人を日本に呼び寄せ、医療と旅行業界やその周辺業界により良い経済効果をもたらすと考えられています。

そこで東京都から東京により多くの外国人起業家を呼び寄せる仕事を託された大手不動産会社の方々をはじめ大学病院関係者、投資家、税理士、会計士、医師など様々な職種の方が参加していました。

メディカルツーリズムで日本に訪れる外国人の数は約5500人で、数十万から百万人規模のタイやマレーシアには及びません。

ゴンザレスさんは日本には世界でも優秀な医療技術があるのに世界に十分提供できていないため、そこにビジネスチャンスがあると考えています。
JCI認証は世界標準なので、この認証を取得することで堂々と外国の方を迎えることができます。
中国、韓国、台湾はそれぞれ10箇所以上の病院でJCI認証を取得していますが、日本はまだ7つしかありません。
その7つは亀田総合病院、NTT東日本病院、聖路加国際病院などその他大きな有名病院です。

JCI認証には、病院の数百ページに及ぶマニュアル作りや1800項目以上のチェックがあり、とても細かいところまで注意が必要とされます。
特に患者さんの安全性の確保や医療の質の向上に重点が置かれ、病院利用者サイドの視点から多種多様な要求がされている感じです。
湘南鎌倉総合病院の場合、2年4か月の期間と莫大な費用がかかったようですし、たとえ取得しても諸手を上げて喜んでいる暇はなく、三年後の更新のためにまた準備がはじまり、気が抜けないと話していました。

そして、経営者サイドと現場サイドとでJCIに対するマインドの違いがあることを感じました。
経営者サイドはJCI認証取得によりブランド力の向上と将来のメディカルツーリズムでの集客を目論んでいますが、現場サイドはブランドやお金の話では動かないので、JCIが患者さんのためになるといったピュアな気持ちを皆で共有し、持ち続けることで乗り切っているようでした。
このたびJCI取得に奔走された講師の先生方の話から現場の大変さがひしひしと伝わってきました。

日本には素晴らしい国民皆保険制度があり、他国より一人が病院にかかる頻度が高いので、その分現場は忙しくなります。
よってメディカルツーリズムの方々の相手をする時間や人の確保が今のままではとても難しい気がします。
また、メディカルツーリズムからの収入に比べてJCI認証取得、維持のためのコストがかなり大きいので、取得へなかなか踏み切れないのが現状かと思います。
ゴンザレスさんは日本でJCIを広めようとがんばっていますが、JCIはもう少し様子見でしょうか?

しかし、もし、JCIが真の医療の国際化であると確立されてしまったら、日本は世界から大分遅れてしまうのではと少し心配な気持ちにもなります。

癌先進補完医療の研究

第3回癌先進補完医療研究会に出席しました。
この会は健康増進クリニックの水上先生が中心となりいつも面白い情報を提供してくれます。
今回は高精度放射線療法、カナダの癌医療、腹水還流療法、低血糖食の癌に及ぼす影響や癌医療の工夫について話し合われました。
中でもインパクトがあったのは相模原共同病院の福原昇先生によるお話でした。
一般的に放射線治療ではがんは治らない、手術も抗がん剤も使用できない患者に対して行うもの、効果の割に副作用が多い、どこで治療を受けても同じ効果と考えられていますが、
福原先生は放射線で死なない癌は無いとの信念を持ち、がんに高線量を照射し、正常組織の線量を極力減らす工夫をしています。
考え方はとてもシンプルですが、これを成し遂げる技術が非常に複雑で難しい。
IMRT(強度変調放射線治療)という照射野内の放射線の強さを変え、複数方向から照射することで、病巣部のみに高い線量を投与する放射線治療技術がありますが、これには福原先生独自で開発した自動組み立て式補償フィルタを用いることでより精密に確実に照射ができるようになりました。
また、頭部に正確に照射するための外耳道マーカーや乳がんのための治療台を開発しています。
病巣に対し多方向から放射線を集中させる定位放射線照射ではリアルタイム三次元動態計測装置をこれまた開発し、Cアーム型ライナックとCTを同室設置することで効率的にかつ正確に放射線を照射できるようになりました。
症例提示では皮膚がん、前立腺がん、脳腫瘍、肺がん、肝がん、胃がん、乳がんの方々が紹介されて、皆さん腫瘍が消えたり、小さくなったりしています。
正直こういった明らかな改善例が次々と目の前に現れたことに驚きました。
そして福原先生は放射線治療はがんの根治、対症治療に有用で、副作用が問題となることはないと断言していました。
しかし、機械も大切だがそれを使用する医師の能力により治療成績が異なることも最後に付け加えており、患者サイドからはそういった医師との出会いが大事であると改めて思いました。

カナダの癌医療についての半田先生のお話では、カナダには西洋医学を行う医師MD(Medical Doctor)と自然療法を行う医師ND(Naturopathic Doctor)がいて、患者さんはMD,NDが提示する治療法を好きに選べるようです。
例えば抗がん剤の使用前後にビタミンC点滴を行うことが平気で出来、MDもNDも患者を尊重する姿勢が整っているため、患者も納得いくまで相談できるとのことでした。
基本的に大事なことは1.質の良い睡眠 2.瞑想し、コルチゾールレベルを安定化させる 3.オーガニックの栄養をとりオーソモレキュラーを利用する 4.経皮からの吸収にシャンプー、マニキュアが関係するので注意5.安全な水やDHA,EPAなどのフィッシュオイルをとり、砂糖禁止、6.メラトニンの摂取 7.5HTPの摂取などです。
とても患者にとっては良い環境なので、日本も早くこういった場が提供できれば、がん難民と呼ばれる方々が少しは楽になるだろうと思いました。

今回の会では有用な方法を知ることができたので、今後の診療に早く役立てたいです。

優れた技を持った先生に出会いました。

先日点滴療法研究会主催の特別ワークショップに参加してきました。通常は数名の講師で行われますが、今回は17名の講師によりバラエティーに富んだ発表がなされ大いに盛り上がりました。
ビタミンC点滴の応用から腹水の治療、樹状細胞療法、幹細胞に働きかけるサプリメント,プラセンタ治療、分子栄養療法、パーキンソン病治療、αリポ酸、水素水点滴、循環がん細胞、遅発性フードアレルギーなど幅広いテーマです。
講師の方々は標準治療を行いつつも、患者さんにもっと良い方法はないかと日々探し、研究されているので、それぞれに深い考えと技があります。それゆえ発表している姿から熱心さが伝わってきます。必然的に私も気合が入ります。

特に熱さが伝わってきた先生は日本橋で癌性腹水の治療をしている尾崎道郎先生です。私も以前こちらのクリニックに当院の患者さんをご紹介し、とても良くしていただいたことがあります。
がんでお腹に水が溜まるとパンパンに張り、呼吸が苦しく、仰向けにも寝ることができず、非常に辛い状態になります。
通常水分、塩分制限、利尿剤投与、アルブミンの補充をしますが、これらですんなり改善することは少なく、多くは我慢したり、腹水を抜いて一時しのぎをします。
しかし、腹水を抜いてもすぐ溜まりますし、腹水にはアルブミンが多く含まれるので、抜くたびに栄養が失われ、徐々に弱ってゆきます。

そこで考えられた方法がCART(腹水ろ過濃縮再静注法)というものです。
CARTは超音波を用いてお腹に針を刺し腹水を抜いてバッグに貯めます。
バッグを点滴台に取り付け普通の点滴のように腕から患者さんに戻します。
その際ただ戻すのではなく濾過器でがん細胞や赤血球、白血球、細菌類を取り除いてから次に濃縮器で水分、電解質を取り除いてアルブミンを取り出します。
アルブミンが低下しているがん患者さんにこのアルブミンを戻してあげることで栄養面を改善し体を楽にします。とても重要なことです。
そこで尾崎先生は病院に来られない患者さんに対して在宅でCARTを行っていますが、がん末期の患者さんの苦しみを少しでも取り除こうとする姿勢は医師として立派に思います。

また、沖縄の平良茂先生は薬に頼らない治療を”無薬療法”と名付けて食事療法をメインに行っています。
ひきわり納豆、亜麻仁油などのω-3系油、卵黄、黒糖を用いた平良式納豆レシピを開発し自閉症や統合失調症、アトピーの患者さんに実践し、がん患者さんはビタミンC点滴療法との併用で治療されています。
この方法は食物の栄養成分がリンパ球の免疫応答に影響を与えることを利用して研究されたもので、副作用がなく体に優しいとても良い方法であると思います。

そのほかにもユニークで実践したいものがありましたが、皆さんに共通していることは患者さんを楽に少しでも良くしようとする確固たる信念があることです。

私も見習って今後の診療に役立てていきたいと思います。

学会シーズン


秋は学会や研究会がいたる所で行われています。

先日は第13回国際統合医学会学術集会に参加してきました。

テーマは「パーソナライズド・メディシンの実践―精神・生存哲学的視点からの提言―」という何か難しそうなものです。

前回、前々回は先端医療の治療技術の報告がメインでしたが、今回はぐっと内面的なお話が多かったようです。

忙しい診療の中ではなかなか考える余裕はありませんが、私たち医療を行うものが生きる意味を見出すことや人生の意味、死生観などが肉体や健康にも大きく影響を及ぼすことを深く認識し、生命哲学を再考する上でいい機会でした。

 

午後のセッションでは私が所属している点滴療法研究会の柳澤厚生先生が

「福島原発作業者に対する高濃度ビタミンC点滴と抗酸化サプリメントによる介入」を

発表しました。

内容は「福島原発作業員に遺伝子解析を行ったところ、癌リスク値が増加した例があり、高濃度ビタミンC点滴療法と抗酸化サプリメントにより正常化した。原発作業者の被ばく予防対策としてビタミンC点滴や抗酸化栄養素の摂取を直ちに実施すべきである。」というものです。また話の中で自衛隊は原発に行く前に必ずビタミンCを取っているらしく、危機管理のプロが実践しているということは、放射線対策には必要不可欠なものであると思いました。

先日もとあるサプリメント会社から福島原発で働いておられる作業員のためにビタミンCや抗酸化サプリを送りたいとの主旨で連絡があり、僅かですがご協力させていただきました。
この学会は医者だけでなく代替・補完療法に携わる方々が参加できる場なので、数多くの有用な情報を手に入れることができます。そして、その情報を基にいろいろな角度から患者さんに説明することができるので今後の診療にとても役立ちます。