健康寿命はいい歯医者さんとの出会いにより伸びる!?

いい出会いがあり、その関係が続くことは幸せなことであります。

また、出会えそうでなかなか出会えないのは、ちょっとしたストレスですし悩みにもなります。

私が長年求めていたのは、近所のいい歯医者さんです。

昔、治療したところの詰め物が取れたり、歯が欠けたり、何年かに一度トラブルに見舞われますが、それを最小限に抑えるためと最近話題の歯周病などの予防のために、定期的に通える歯科クリニックを探していました。

昨年やっと、以前ブログで書いた“かなで”(暮らしの保健室)の福田さんからこばやし歯科クリニックの小林院長先生をご紹介いただき、実現できました。

福田さんとの出会いがなければ小林先生とも出会えなかったわけで、一つひとつの出会いがとても大切であると改めて感じました。

初めての小林先生の治療はとても丁寧で確実で、十分な説明があり、安心した覚えがあります。他の先生や歯科衛生士さんも同様に好印象で、私はこばやし歯科クリニックにこれからも通い詰めようと思います。

このクリニックとは以前から在宅患者さんの口腔ケアをお願いする関係がありましたが、お互い顔の見えない間柄でした。しかし、このたび訪問歯科部門の斎藤先生とも知り合うことができ、これからは優しい笑顔の先生を思い浮かべながら、多くの患者さんを紹介していけることも一つの喜びとなりました。

在宅医療において常に問題となるのが、誤嚥性肺炎です。

これは飲み込む力の衰退により食べ物が誤って気管から肺に入り込み肺炎がおこり、適切な治療をしないと死に至る危険な病態です。

斎藤先生は口腔の専門家としていち早く摂食嚥下障害を発見し、内視鏡にてその障害の程度を評価し、姿勢、一口量、食べるペースなどを指導し誤嚥予防に尽力しています。

最近では言語聴覚士(ST)による嚥下リハビリや管理栄養士による栄養指導も合わせた多職種の連携により誤嚥性肺炎を予防するようになってきました。

また、誤嚥予防に対する別のアプローチとして、なじみのある食材、薬物を用いたものがあります。

嚥下反射と食べ物の温度との関係では、体温に近いほど反射が遅れ、体温から離れた冷たいものや温かいものでは反射が早くなる特徴があり、これは末梢神経のTRPという温度受容体が感知しています。

このTRPを刺激する食材として冷感のメンソールや温感のカプサイシンがあり、これらを高齢者に用いた実験ではいずれも嚥下反射を改善する結果が得られました。

つまり高齢者には体温に近いぬるめの食事だけでなく、温度にメリハリのある食事を摂っていただくことも大事であることが伺えます。

またブラックペッパーの香りが脳を刺激して嚥下反射を改善したり、口腔内の感覚や反射に関係するサブスタンスPという物質の血液中の濃度を上昇させることも分かりました。東北大学の海老原先生はブラックペッパー精油を染み込ましたアロマパッチを開発し、誤嚥性肺炎の予防に応用しています。

そして、カプサイシントローチやミント入りゼリーを併用することで、誤嚥性肺炎をおこした患者さんが再び上手に経口摂取できるようなアプローチの研究もされています。

兵庫県の西播磨総合リハビリセンターの吉田先生はアロマパッチを誤嚥性肺炎の既往のある高齢者に用い、嚥下能力と咳嗽力(咳をする力)が改善したことを報告しています。パッチは胸元の衣服の内側に貼るだけなので簡単に扱えるため、私も今後用いたいと思います。

誤嚥性肺炎の予防に大切なことは口腔ケアです。

口の中にも腸と同じように善玉菌と悪玉菌がいて、高齢で唾液の分泌が少なくなったり、歯磨きがおろそかになると(プラーク)歯垢で悪玉菌が増殖し口腔内環境が悪化します。この状態で誤って菌が肺に入ってしまうと容易に肺炎を引き起こしますので、歯磨きで清潔を保つことが大切です。

そして高齢者だけでなく私達も常日頃から口腔ケアをすることが大切です。私は2か月に一度、こばやし歯科クリニックで歯科衛生士さんにメンテナンスをしてもらっています。

また口腔内の健康を保つ上で大切なことは栄養です。

歯周病はプラーク中の歯周病菌の刺激により歯間リンパ系細胞から活性酸素を放出し殺菌しようとする働きにより慢性炎症が起き続ける病態です。

この時に原因となる活性酸素に対して抗酸化作用のあるビタミンEやビタミンCの補給が必要になります。

ビタミンCやEと抗酸化ネットワークを形成するCoQ10は実験的に歯肉の酸化ストレスの抑制し、プラークや歯肉からの出血や口臭を低下させ、ドライマウスにおいては唾液分泌量を増加させる働きがあることが分かりました。

アスタキサンチン(赤や黄色を呈するカロテノイド)は活性酸素の除去と過酸化脂質の生成を抑制する働きがあり、実験的にアスタキサンチン摂取後、唾液中の脂質の過酸化マーカーであるHEL(ヘキサノイルリジン)が減少することも示されました。

そして、大豆に含まれているイソフラボンは腸内細菌によりエクオールなどに分解されエストロゲン様作用を有します。乳癌に対してはエストロゲン受容体との競合阻害により抑制的に働く他、歯槽骨の吸収抑制、歯の再石灰化促進、唾液分泌障害の改善に働きます。このように歯の健康維持には抗酸化能をもつ栄養素を十分に取り込むことが大切になります。

最近では口腔内の環境の悪化が、心臓病やがんなどの大きな病気につながることも分かってきており、また高齢者の場合は肺炎を引き起こして寿命を縮めることに直結するので、私たちは軽く思いがちな歯や口腔に関して、いま一度真剣な見直しが必要であると思います。私自身、歯に気を使うことで体全体にも気を使うようになりましたし、患者さんの歯に関しても注意をするようになりました。

なにより、私はこのたびのいい出会いにより自身の健康寿命が大きく伸びた気がしています。

photo:CFAH

腸内細菌のバランスを整えるための4R

先日、私の友人からそのお父様の体の調子が半年以上も優れないため、どうしたらよいかと相談がありました。

昨年半ばから食欲がなく、時々嘔吐し病院に行くも原因が分からず点滴を受けて帰宅することを繰り返していたようです。徐々に体力が落ち、とうとう今月に状態が悪化して集中治療室に入院してしまいました。

検査の結果、胃腸に真菌がいたことが原因とわかり抗生物質を投与され一命をとりとめ、現在快方に向かっていますが、嚥下障害になり胃ろうが必要な段階に至ってしまったようです。

カンジダはカビ(真菌)の一種で私たちの体にいる常在菌です。ストレスやホルモンバランスの崩れなど何らかの原因でカンジタが腸内で増えるとヘルパーTリンパ球のTh1/Th2のバランスが崩れて免疫が低下したり、腸粘膜の機能が落ちてリーキガット症候群のように吸収に不都合が生じます。

今回のケースのようにカンジダ菌感染症は倦怠感や腸の不調など不定愁訴があるので、自律神経失調症やうつ病などと間違われやすく、診断まで時間がかかってしまうことが多いです。

診断には便検査や尿の有機酸検査などがありますが、医師側がカンジダを疑わない限り検査にたどり着くことも大変でしょう。

こういった状況に陥る前に、私たちができる予防策として腸内細菌のバランスを整えておくことが大切です。

体内には1000兆個の腸内細菌がいて、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、ウエルシュ菌、ブドウ球菌などの悪玉菌、バクテロイデスや無毒の大腸菌などの日和見菌に分けられ、この善:悪:日和見の比が1:2:7であることがバランスの良い状態であると考えられています。

バランスが整った状態であれば善玉菌がカンジダにつけ入る隙を与えません。

よって日ごろからヨーグルトを積極的に食べることは大切なのです。

また炭水化物の取り過ぎや抗生物質の使い過ぎにも注意が必要です。

腸を整えるためにヨーグルトを積極的に摂るとことはとても大切であり、私自身も毎日欠かさず摂っています。そして、来院される方々や在宅で診ている患者さんやそのご家族にも乳酸菌の必要性を話し、摂っていただいています。

ヨーグルトが苦手な方には乳酸菌のサプリメントをおすすめしています。

ただ乳酸菌のサプリメントも数多くあって、どれを選んだら良いのか非常に迷います。

そういったときに大事なのが4Rです。

私が栄養学の基本としている分子栄養の考え方の一つに4Rという腸内環境改善のための方法があります。

4Rは身体の防衛機能の最前線である消化器系の健全性を取り戻し、保つことをコンセプトとしており、腸内において①Remove(除去)②Replace(補てん)③Reinoculate(植菌)④Regenerate(再生)の4つのRが大切であることを表しています。

①    Remove(除去)は腸内細菌のインバランスなどを引き起こす有害菌やウイルス、毒素(薬物、アレルギー物質)、環境ホルモンなど消化管の環境に悪影響を与える原因物質を除去することで主にカンジダの除去をターゲットとしています。

②    Replace(補てん)は加齢、ストレスなどで消化酵素の分泌が低下し消化不良が続くと、病原菌による未消化物の異常発酵などで消化管の負担が増大し、全身に悪影響が出るため、消化酵素を必要に応じて加えることをいいます。

③    Reinoculate(植菌)は乱れた腸内細菌叢のバランスを整えるためにプロバイオティクスを腸内に送り込みます。

④    Regenerate(再生)は常に有害物質にさらされている腸管粘膜を修復と再生するためにプロバイオティクスの餌となる食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスやグルタミン、ビタミンAなどの腸管免疫にも重要な栄養素を与えることです。

具体的な成分として

①    除去には抗菌作用のあるオレガノオイルやセージなどのハーブや免疫グロブリンを含む乳清そして免疫調整作用のあるラクトフェリンを使用しています。

②    補てんでは糖質、タンパク質、脂質、食物繊維を分解する酵素が含まれますが、この中のプロテアーゼがカンジダの抵抗性の元となるバイオフィルムを破壊します。

③    植菌では乳酸菌(アシドフィルス)とビフィズス菌(ラクチス)を1カプセルにそれぞれ150億個ずつ含んだものを用います。

④    再生では炎症、便秘、下痢などの症状に応じたアプローチがあり、抗炎症にcox-2阻害作用のあるホップ抽出物やクルクミンを用い、便秘がメインの場合イヌリン、プランティンフルーツ末、米ぬかを用い短鎖脂肪酸の生成に役立てます。下痢には腸粘膜の再生を目的にL-グルタミンやカンゾウ、アロエベラ抽出物を用います。

少し複雑になりましたが、一つひとつが緻密に考えられ作られています。

4Rの考え方は分子栄養学的に腸を十分に研究した結果得られたもので、とても理にかなっていると思います。

また、これらの上手な使い分けで腸内環境が整えられるようになったことは、かなりの進歩であると思います。

病気になり、根本から治そうとしたときに、まず腸の環境はどうなのかを第一に考え、その環境を改善し整えるために4Rの基本を思い起こせばきっとうまく行くでしょう。

photo:Be Brain Fit

筋肉は体温をつくり健康の基盤となります


サルコペニア

なんだか怖そうな名前ですが、ロコモ、フレイル(心身の虚弱)ともに近年、高齢者を取り巻く環境で使われている用語の一つです。

これはギリシア語で「肉」を表すサルコと「喪失」を意味するペニアを合わせた造語で、筋肉が無くなった状態を指します。

つまり、高齢などの理由で筋肉量が減り、筋力が低下し日常生活が送れなくなり、果ては死に至る怖い状態といわれています。

因みに今のギリシアは“フリマタ・ペニア“ 「お金」「ない」状況でいつデフォルト(経済的な死)になるか心配です。

筋肉がないと死に至るということは、筋肉がただ体を動かすだけのものと、私たちが普段考えている以上に重要なものであることが想像できます。

最近の研究から、筋肉がただ運動器としてではなく、健康に関係する様々な役割を担っていることが知られてきました。

第一に熱を作り出す元であること。低体温では免疫力が低下しがんなどの病気ができやすくなりますから、熱を作り体温を上げることは大切です。

筋肉はリラックスし緩んだ状態でも体温維持のために常に熱を作っています。

このときにサルコピリンと脱共役タンパク(UCP-3)の2つの物質が働き熱を産生しているようです。

サルコピリンは骨格筋の筋小胞体(カルシウムを貯める袋)に存在し、カルシウムを出し入れする膜タンパクをサポートしています。

そして、このカルシウムの出し入れで筋肉は動き熱が作られますが、サルコピリンはこのカルシウムポンプを空回りさせて、筋収縮なしにエネルギーを消費し熱を作り体温維持に貢献していると考えられています。

また、ある実験では高脂肪食を与えると代謝を上げるために骨格筋のサルコピリンが増えることやサルコピリンが減少すると体脂肪が増え、脂肪の燃焼にも関与していることが分かってきました。

第2として、内分泌の器官としての働きがあることが考えられています。

簡単にいいますと筋肉からホルモン様物質が出ているということです。

ホルモンとは、例えば脳下垂体で作られたものが遠くの副腎に作用するような生理活性物質で、筋肉から分泌されたものはマイオカインと呼びます。

デンマークの免疫学者であるペダーセンは筋肉の運動により筋線維からサイトカインの一つであるインターロイキン6(IL-6)が分泌されることを発見しました。

IL-6は多機能型サイトカインで炎症や免疫に関与して体にとって良い働きも悪い働きもしますが、炎症に関係なく筋肉から分泌されたIL-6は動脈の炎症を抑えたり、脂肪分解を促進し、体にとって好都合に働きます。

もう一つ大事なマイオカインであるイリシンは運動によって筋肉から分泌され、白色脂肪の中にある脂肪前駆細胞に作用し、褐色細胞へと分化させます。

脂肪組織には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞がありますが、褐色細胞は単一の脂肪滴を含んだ白色細胞とは違い、ミトコンドリアや鉄を含んでおり毛細血管も多く存在するので褐色を呈します。

また褐色細胞は脂肪のエネルギーを消費して熱を産生する細胞なので、イリシンにより褐色細胞が増えることで熱産生がアップし脂肪が減りやすい状態になります。

このように筋肉による脂肪細胞への働きかけのメカニズムが解明されてきて、ダイエットには筋肉がいかに大切かわかります。

また糖尿病予防や改善に運動が必要である理由の一つに筋肉との関係があります。

体内にはAMPK(AMP-activated protein kinase)という酵素があり、エネルギー欠乏を感知しさまざまなタンパク質に働きかけます。

肥大化していない通常の内蔵脂肪からは善玉サイトカインといわれているアディポネクチンが分泌され骨格筋細胞にたどり着くと細胞内のAMPKを活性化する働きがあります。AMPKが活性化すると細胞内のブドウ糖取り込み装置であるGLUT4が細胞膜に移動しブドウ糖を取り込み始めます。

通常はインスリンの命令で動きますが、AMPKの命令にも従います。

そして、運動することで内臓脂肪代謝も加わり骨格筋細胞内のAMPKは活性化され、骨格筋細胞はインスリンの効きにくい糖尿病下においてもブドウ糖を取り込むことができます。

つまり、筋肉が運動刺激により糖尿病の改善に重要な役割を演じているのです。

よってサルコペニアにならないよう筋肉を大切にするため運動を続けないといけません。一般的に筋肉の量を増やすにはレジスタンストレーニングにおいて最大拳上重量の60%程度が必要ですが、このようなトレーニングは血圧上昇や関節を痛める可能性があり高齢者には大変です。

高齢者を対象とした研究で、最大筋力の30%という軽い負荷強度でも、筋肉が太くなる結果が出ており、高齢者の場合は無理せずに軽い負荷で3秒ほどかけて負荷を上げ下ろしするスロートレーニングをおすすめします。

筋肉はただの運動器ではなく健康、生命の維持にとても大切な臓器なのです。

出典:imgbuddy.com

コレステロールと学会と薬の関係

このほど厚労省がまとめた食事摂取基準において、食事から摂るコレステロールの基準(男子750mg未満、女子600mg未満)が科学的な根拠がないとして撤廃されました。

それに引き続き動脈硬化学会も「コレステロール摂取量を減らして血中コレステロール値が低下するかどうか判定する証拠が数字として出せないことからコレステロールの摂取制限を設けない」との少し回りくどい表現ですが科学的な見解を示しました。

つまり体内のコレステロールの80パーセントが肝臓で合成されており、食事からのコレステロールをある程度摂っても体内で調整されるため血中コレステロール値は変化しないというものです。

よって今まで少し我慢していた卵や肉などを堂々と食べることができます。ただし、これらはあくまで健常者の話であり、家族性等の高LDLコレステロール血症の人は今まで通り注意が必要であるといわれています。

今回このように基準が変わったのは、2013年のアメリカの心臓病学会/心臓協会(ACC/AHA)が次の二つのことを臨床的エビデンスがないので、放棄したことがきっかけです。

一つはコレステロールが低ければ低いほど良い(リスクがなくても、LDL値160mg/dl以下)にする。二つ目は背景のリスク因子に基づきコレステロールの上限値を定め、それ未満に保つ医療を行うというものです。

今までの日本の基準もアメリカに習う形で進めてきたので、今回アメリカが変わることで日本も変えることに至ったのでしょう。裏を返せばこのたびの話はアメリカが保証したある程度エビデンスの高いものとして捉えることもできます。

またACC/AHAは動脈硬化性疾患の人や糖尿病患者などを除いてLDL値が70~190mg/dlの範囲の人にはコレステロールを下げる治療をしないとしています。しかし、いまだに日本の治療対象基準は140mg/dlで、160mg/dlを超えた時点でスタチンというコレステロール低下剤が処方されてしまいます。このあたりの基準も考えないと今後ますます混乱してきます。

もともと日本では、コレステロールを下げるべきか否かにおいて、低ければ低いほど良いという「日本動脈硬化学会」と、低くしない方が良いとする「日本脂質栄養学会」のバトルが続いておりました。

日本人間ドック学会と健保組合連がおこなった大規模調査ではアメリカの基準とほぼ同様な結果が得られ日本脂質学会を支持するかたちとなり動脈硬化学会のみが取り残される状況になったようです。それではいけないとこのたび基準値の変更を余儀なくされたものと私自身は想像しています。

コレステロールは長年にわたり悪いイメージに作られてしまいましたが、男性ホルモン、女性ホルモン、抗ストレスホルモンや細胞膜の元になる大事な物質です。一般的にHDLは末梢で余ったコレステロールを肝臓に運ぶので善玉とされ、LDLはコレステロールを末梢に運ぶので悪玉のように言われますが、LDLはもともと体に必要とされて働いているだけで、決して悪さはしていません。酸化されたLDLが血管に影響を及ぼすのであって、酸化が悪さの原因です。

日本人の総コレステロールと死亡の相対危険度のデータによると基準値を220mg/dl以下としたときに280mg/dl以上で循環器死亡割合が増え、逆に160mg/dl未満になるとがん死亡が増えていきます。

LDL値による死亡率に関しては男性の場合100mg/dl以下でがんや呼吸器系の疾患で亡くなる率が高まり、180mg/dl以上で心血管疾患が高まります。

また男女とも100mg/dl以下で心血管系疾患が増加します(脂質栄養学18:21~32,2009)。

よってコレステロール値とLDL値は高すぎても低すぎてもいけません。

一般的な治療としてLDL値を下げるためにスタチンという薬を使います。

スタチンでLDL値が下がり心血管イベントの予防ができるように思われていますが、文献を精査してみると家族性高コレステロール血症の場合を除き、それほどの効果ははっきりしないようです。製薬会社と関係のある商業論文ではスタチンが心臓病を予防するような結果がでていますが、一方でEUにおいてバイアスを取り除いた研究では予防には至らなかったという事実もあります。

つまり、スタチンでLDL値は下がるけど心臓病を予防できるか分からないということです。最近ではスタチンにより糖尿病リスクが上昇することも言われています。特にスタチンはミトコンドリアでのATP産生阻害をするので、心筋細胞や血管平滑筋細胞に障害をもたらす可能性があり、この時にCoQ10やGSHペルオキシダーゼなど大事な抗酸化酵素が失われ、酸化ストレスが増大します。またスタチンは組織のビタミンK2欠乏を引き起こし冠動脈や弁の石灰化を促すこともいわれています。つまりLDLを下げようとすると逆に心臓を悪くしてしまうようです。

家族性等ではなく一般的にLDLが少しくらい高いからといってスタチンを用いて値を下げようとすると逆に体への負担を強いることになります。

心血管イベントを予防する目的でLDLの基準値がありますが、この根拠もはっきりしないような状況でスタチンを使いLDLコレステロールを下げる理由が分からなくなりました。

今回の件をきっかけに調べたところ、いままで信じて使ってきた薬の不確実性に直面し、がっかりした気持ちになったのは私だけでしょうか。現在、在宅の何名かの患者さんにもスタチンを処方していますが、これからどうしようか悩みます。

薬の特許切れやジェネリックの関係などから次々に新薬が出されますが、今後は今まで以上によく吟味して使っていきたいと思います。

またこれからは、総コレステロール値280mg/dl、LDL値160mg/dlまでなら気にせず食事をして、むやみに薬で下げようとしないことが大切であることを伝えていきたいと思います。

うつと栄養の関係

一年の中でもっとも心地良い季節となりました。

ただこの時期になると心の病気で悩む人も増えてくるようです。季節ばかり良くなっても現実は変わらないと考えたり、新年度から始まった新しい環境に慣れないまま長期の休暇に入りますが、休み明けのことを思うと辛かったりして、ますますやる気の出なくなる五月病に陥ります。

いずれも現実とのギャップを深く考えすぎることから始まっているように思えます。考えることは脳が行うことですが、実際に脳の中では神経細胞の間で神経伝達物質のやり取りがされています。

神経伝達物質には興奮系、抑制系、調節系の3つの系統があり、それぞれを神経細胞が作り出してお互いに関係し合っています。

興奮系の伝達物質にはドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンやグルタミン酸があり、抑制系にはGABA(γアミノ酪酸)、調節系にはセロトニンがあります。

興奮系の種類が多いのは外敵に素早く対応できるように生命維持のため生物の進化の過程で獲得されたものと考えられています。

興奮系が適度に分泌されていると程よい緊張感の中でやる気が出て、気分も良い心の状態が作られます。逆に不足すると元気が無くなり気分も落ち込みます。

抑制系のGABAは脳の神経細胞の約30%にあり、アクセルである興奮系を抑えるブレーキの役割をしています。

調節系のセロトニンはやる気や幸せ感に関係しますが、行動に対しては抑制的に働き調整を行います。神経伝達物質の主な材料はタンパク質で、興奮系の場合①L-フェニルアラニンというアミノ酸に葉酸、鉄、ナイアシンが作用し②L-チロシンに変わり、さらに葉酸、鉄、ナイアシンが作用することで③L-ドーパが作られます。こんどはこのL-ドーパにビタミンB6が作用し④ドーパミンに変わり、ドーパミンにビタミンCと銅が作用し最終的に⑤ノルアドレナリンが作られます。

抑制系はL-グルタミン酸にビタミンB6が作用しGABAが作られます。

調節系は①L-トリプトファンというアミノ酸に興奮系と同様に葉酸、鉄、ナイアシンが作用し②5-HTPになり、これにビタミンB6が作用することで③セロトニンが作られます。さらにセロトニンとマグネシウムが反応することで最後に④メラトニンが作られます。

いずれの神経伝達物質も食事でとったタンパク質が分解されたアミノ酸が起点となりビタミンやミネラルの助けを借りて順々に作られていきます。

そしてこの3系統の神経伝達物質がバランスよく働いている状態が、不安のない心の安定した状態をもたらします。

ところが、この物質のバランスを取ることは現代の生活においてますます難しくなり、食事内容や生活習慣またはストレスの影響により容易に崩されてしまうのです。

主に誤った食行動が脳の栄養不足をもたらし神経伝達物質の不足、バランスの乱れからうつ症状がでてくるという流れです。

うつは脳内のセロトニン不足が関係しているといわれ、病院に行くとセロトニンを増やすSSRIという薬が処方されます。しかし、ここでなぜ不足するのかを考えるとセロトニンが作られる手前の物質であるアミノ酸や葉酸、鉄、ナイアシン、ビタミンB6などが足りていない可能性が考えられます。つまり慢性的な栄養不足が根底に存在しているのでしょう。またセロトニンが少ないと睡眠に必要なメラトニンが作られないので、うつの初期症状である睡眠障害もでてきます。

うつを訴えている人には4つの特徴的な食傾向があるといわれています。①食欲がない、ダイエットなどといって食べない②白いパンや白米、砂糖などの糖質依存③ストレス解消のドカ食いや多忙なための食いだめ④果物だけなど特定の食品への偏りがある単品食い。いわゆる糖質過多とタンパク質、ビタミン、ミネラルの不足です。

糖質過多が続くとインスリンの分泌に不具合が生じ、血糖値が乱高下する場合があります。血糖値が下がった時に交感神経が活発になって急にイライラしたり、怒ったり、笑いだしたりする性格の変化が見られることがありこれを低血糖症といいます。

糖尿病の診断の時に2時間の負荷試験をしますが、これを4時間に延ばすと現れることがあります。

また糖質過多によりエネルギー代謝が進みビタミンB群が使われて、そしてインスリン分泌調整のために亜鉛も使われ両者とも不足に陥ります。まずは白米を玄米へ、白いパンを全粒粉に、うどんをそばに変えて糖質制限を始めることが必要です。

タンパク質は糖質優先をしているとどうしても不足するので、タンパク合成に必要なメチオニンやトリプトファンを含んだ動物性の卵や肉などを積極的に摂りましょう。

また鉄分は女性の場合、生理などで失われる機会が多く慢性的な不足状態にあるため腸からの吸収効率の良いヘム鉄を摂りましょう。これだけでも神経伝達物質の生成の役に立ち、うつを改善させる足場作りができます。

ストレスもうつの原因の一つといわれ、ストレスは体内の栄養を消費してしまいます。

さまざまなストレスに対して私たちの体の副腎ではコレステロールを原材料にしてコルチゾール(抗ストレスホルモン)を作り軽減させていますが、このコルチゾールが働く時にビタミンB6が使われます。よってストレスが続くとビタミンB6は不足してしまいます。

また体の細胞膜をつくり、女性ホルモン(エストロゲン)や男性ホルモン(テストステロン)の原材料となるコレステロールはストレスが続くとコルチゾールの生成に使われ、その結果、性ホルモンも減ってしまいます。

性ホルモンの減少でうつ症状を呈することもあるので、コレステロールが低くならないように注意してω-3系の亜麻仁油や9系のオリーブオイルなどのいい脂質を積極的に摂りましょう。

また副腎はビタミンCを蓄えられるので野菜をしっかり取っておくと興奮系のドーパミンからノルアドレナリンを作る際に役に立ちます。

うつと脳の神経伝達物質の関係において栄養が深く関係しており、食事を工夫することである程度対処ができると思います。すぐに薬だと思わず、自分の体には何の栄養が足りていないのかを考えることも必要です。

出典:賀茂整形外科