眠りの技

最近の私は夜11時を過ぎるととにかく眠くなり、朝は6時に自然と目覚め、ヨーグルトを食べてからウォーキングに出かけます。
その時になるべく太陽を見るようにして、来るべき16時間後の睡眠のために光で視交叉上核を刺激します。

睡眠が健康にとって良いことは言うまでもないですが、最近は睡眠障害が引き起こす健康障害について多く報告されるようになってきました。
1日7時間ぐらいが丁度よく、4時間以下の短い睡眠や10時間以上の長い睡眠は心臓や脳の血管系の病気を引き起こす確率が高くなります。
特に短い睡眠は冠動脈疾患、肥満、糖尿病、高血圧の発症だけでなく総死亡のリスクも増加させますが、理由として交感神経の亢進や副腎からのホルモンであるコルチゾールの増加やインスリンの働きが悪くなることがあるようです。

医者は夜間でも病院からの連絡がつくようオンコール当番になることがありますが、その医者を対象にオンコールの日とそうでない日で不整脈の頻度、血圧の変化、尿中ノルアドレナリンなどの交感神経活性、TNFα炎症性サイトカイン量を調べた実験があります。
結果はいずれもオンコールの日でそれらの値が増加し、睡眠の変化が自律神経系に影響を及ぼしたことが示されました。
(Eur Heart J30:2606-2613,2009)
睡眠の質が大事なのは言うまでもありませんが、単なる睡眠時間が健康を左右する指標になりうるので、1日7時間睡眠を心掛けることがとても大切であると思います。

ただし高齢者の場合は話が変わってきます。在宅医療の場においても必ずと言っていいほど睡眠障害の対応に追われます。
高齢者では、寝ている途中で目が覚める中途覚醒の増加、目覚めた後に眠れなくなる再入眠の障害、昼寝の増加が起こります。

これらは体内時計のマスターである視交叉上核の老化で、夕方の早い時間から覚醒レベルが低下し眠たくなる時間が前倒しになることや、自律神経による深部体温の調節障害で熱放散がうまくできなくなり睡眠の維持ができなくなることが関係しています。
さらに副腎からのホルモンである糖質コルチコイドが多く分泌され目覚めてしまうことや、有名な睡眠を誘導するメラトニンというホルモンの分泌が低下することも要因になっています。
また、高齢者を取り巻く環境に目を向けると、昼間でも室内で過ごすことが多くなり、浴びる光の量が圧倒的に少ないことが上げられます。
目から入る光が少ないとメラトニンの分泌が低下してしまいます。
光を沢山浴びることで高齢者でもメラトニンレベルが若年者と同程度まで上がることが実験で確かめられているので、積極的に行ってみるべきだと思います。
そして高齢者は社会的接触の減少や体力、行動力の低下に伴い身体総活動量の減少が見られ、これらは日中の居眠りをもたらし、夜の睡眠の質の低下につながります。
琉球大学の荒川先生によると昼食後の短時間の昼寝と夕方の軽運動を指導することにより、夕方の居眠りが減り、夜の睡眠の質が改善できたようです。

在宅診療においては単に眠剤を出すだけでなく、昼間はカーテンを開け十分日光を浴びて、昼と夜のメリハリをつけること、昼食後15時までの間に30分程度の昼寝をすること、夕方に20分程度ウォーキング、足上げ、スクワットなど軽い運動を行うよう指導しています。

光→昼寝→運動 で良い眠りを取り戻したいものです。

運・動

秋晴れの中、順天堂整形外科同門会ゴルフコンペに参加してきました。三浦半島の葉山の丘にある葉山国際カンツリー倶楽部http://www.hayama-kokusai-cc.com/はとても風光明媚な所で、プレーの途中、横浜、東京湾、スカイツリーから富士山、湘南の海を見渡せ心が和みます。コースは丘の上に作られただけあってアップダウンが多く、ある程度の体力を要し特に膝周りが丈夫でないと大変です。私の場合、幸いいつもウォーキングしているおかげで乗り越えることができ、常日頃の運動が大切であることを感じました。

運動と整形外科といえば最近ではロコモティブシンドローム(通称 ロコモ)というものがあります。ロコモは英語で運動のという意味ですが、内科分野で流行ったメタボに対して東大の整形外科の先生が名付けた言葉です。体を動かすために必要な骨、関節、筋肉、神経など運動器の機能が衰え、動けないリスクが高まってきた状態から要介護になった状態までを含みます。現在の日本では40歳以上のロコモ人口は約4700万人と推定され、高齢者に至っては要支援、要介護の原因の3割が転倒による骨折や関節の病気などで脳卒中に次ぐ多さです。ロコモも原因は1.運動不足による筋力低下、2.関節や椎間板の変性、3.骨の脆弱化、4.神経の機能低下などです。老化現象だから仕方がないと放っておくと予防に気を使っている人に比べ早期に歩行困難、寝たきり状態になり、認知症が併発する恐れがあります。膝が痛い、つまずきやすくなったなどの症状があればロコモになりかけているかもしれません。多くは50歳代に顕在化してくるので、その手前の30代後半から40代に予防に力を入れたいものです。筋肉、骨、関節など運動器は良い使い方をするときちんと要求に答えようとする性質があるので、基本的には適度な運動を継続して行うことが大切です。ただ、この適度なとか、継続ということが思っている以上に難しいと思います。私は毎朝2~30分ほどのウォーキングを取り入れていますが、時々サボるようにすることで継続できています。自分を追い込むような激しい運動は、逆にストレスになり、活性酸素をたくさん発生させることにもなるので、長続きすることもなく反対にマイナスの効果をもたらすので中高年にはあまりお勧めはできません。いかに運動を通してリラックスできるかがキーになると考えています。今は様々な運動があるのでいろいろトライして自分に合った運動を一つ見つけることも大事なポイントです。

コンペの最後に同門会長が良いことを教えてくれました。“運動は運を動かすものだよ”と

運動を行うことで健康になり人生を楽しむ機会が広がる可能性を再認識した言葉でした。