抵抗力にはホルミシスが大切

抵抗力という言葉を調べてみると、“病気や病原体、環境の悪化などに耐え、健康を保ちつづける力” と出てきます。

医学的に抵抗力はこれですとは言えませんが、私自身は細胞が外の刺激からダメージを受けた際に自ら修復する能力と考えています。
それは細胞の中に備わっているヒートショックプロテインをはじめ、修復にはさまざまな分子が働き、作用し合っており、とても複雑な反応です。
この能力を何らかの形で高めたいと多くの方々は自然に思うでしょう。

数年前、自らの病気でご苦労された安倍総理も今では大変元気そうでありますが、陰ではその健康を保つために大変な努力をしているようです。
3月28日号の週刊新潮に安倍総理がラドン吸入器を公邸に持ち込み使用しているという記事が出ていました。
それによると総理夫人が東京女子医大の自然療法の第一人者である川嶋先生と出会い使用を決めたようです。
この記事を初めて目にしたとき総理夫人はとてもいいところにアプローチしていると感じました。
機械はラドンが水分と付着しやすい性質を利用し、水道水からラドン水を生成した後、霧状のラドンガスを発生させるもので、価格は200万円以上ととても高価です。
発生したラドンガスの濃度は1万7000ベクレル/㎥で、1回10分の吸入を1日数回行います。
10分間の被ばく量は0.014ミリシーベルトで胸部レントゲン1枚当たり0.06ミリシーベルトに比べても低くなっています。

低い量とはいえ安倍総理自身が放射性物質を体内に入れていると心配される方もいると思いますが、これにはホルミシス効果という考え方がベースにあり、低濃度の放射線が、細胞を傷つけるデメリットより細胞を活性化させるメリットが上回る理論を取り入れており、特に心配はないようです。
ホルミシスはギリシア語のhormaein= 活性化させる、興奮させる、を語源としています。放射線が大量では毒になるものが、低量の場合、抗酸化能を高めて体に良く働くことから、まるでホルモンのようだと表現されたことがホルミシスの始まりと言われています。

私達、ヒトは太古より放射線にさらされ、生き抜いてきました。つまり放射線で遺伝子が傷ついても細胞がそのキズを修復する能力を持っているということです。
私達の身の回りには宇宙からの放射線、大気や鉱物また食物からの自然放射線があり、誰でも毎日被ばくしており、年間平均2.4ミリシーベルトの被ばくをしています。
食べ物や飲み物で内部被ばくもしており、成人男性の体内には約4000ベクレルの放射性カリウムが常時存在しています。
放射線の影響で一番怖いのは発がんですが、東大病院放射線科の中川先生によると、広島、長崎の被爆者を長年調査した結果、100~150ミリシーベルトを超えると、放射線を受けた集団の発がん率が高まるが、別の角度から考えると100ミリシーベルト以下では発がん率が上昇するという証拠がないと述べています。
また100ミリシーベルトの放射線を受けた場合、放射線によるがんが原因で死亡するリスクは多くても0.5%と考えられています。
現在の日本では2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっていますが、死亡率としては33.3%です。
100ミリシーベルトを受けると0.5%上昇するので33.8%の死亡率となり、これは大した上昇でないことがわかります。

放射線は有り無しが問題ではなく、強さや量が問題です。もはや私達は放射線から逃れることはできず、上手に付き合ってゆくことが大切です。
そういった意味からして、安倍総理は賢い選択をされたと思います。

安倍総理が放射線ホルミシスにより身体的に抵抗力をつけられたように、日本も強い抵抗力を持ち発展していってほしいと思います。

いま乳がんが増えている

当院のスタッフブログで温熱施療スタッフが書いたように、乳がんの患者さんの割合が増えてきています。
国立がん研究センターによると、新たにがんと診断される女性の中で乳がんの割合は第一位で、年間5万人にも上り、約1万人が亡くなります。最近の乳がん死亡者数は1970年のおよそ5倍に増えています。
かつて生涯のうちに乳がんになる日本人女性は、20~30人に1人と言われていましたが、最近では16人に1人と上昇してきました。
アメリカはもっと多く、約8人に1人が乳がんになると言われています。
乳がんは30代から増え始めて閉経前後である45歳頃が発症のピークとなり、加齢とともに増える他のがんと少し異なります。

なぜ異なるのか?

乳がんの発症要因については世界で多くの研究がされ、膨大なエビデンス(証拠)が蓄積しています。
そのエビデンスに基づいて世界がん研究基金(WCRF)や米国がん研究協会(AICR)がまとめ上げた報告を日本乳癌学会が分かりやすく紹介しています。
乳がんのリスクを増加させる要因と減少させる要因のエビデンスレベルを高い順から「確実」、「ほぼ確実」、「可能性あり」、「証拠不十分」、「大きな関連なし」と5段階に分けて説明がなされ、臨床の場においてよく出る疑問に論理的に答えています。

そして、「確実」、「ほぼ確実」とされた要因については予防行動をとることが勧められており、一方、可能性ありや証拠不十分とされた要因についてはそうした行動は勧めていません。

「確実」とされるものをピックアップしてみると、授乳経験のない女性はある女性より高リスクで、授乳期間が長くなるほどリスクは減少する。閉経後女性の肥満、出産経験ない、初産年齢が高い女性、高線量の被爆、若年期の被爆、良性乳腺疾患で異型過形成、乳癌家族歴、閉経後ホルモン補充療法におけるプロゲスチン補充などはリスクを増加させます。

続いて「ほぼ確実」なものをピックアップしてみると閉経前女性の肥満、閉経後女性の運動はリスクを減少させる。
アルコールの摂取、喫煙、生下時体重が重い、早い初経年齢、遅い閉経年齢などはリスクを増加させます。

「可能性あり」については、大豆食品、イソフラボンの摂取、卵巣嚢腫の患者はリスクを減少させ、受動喫煙、閉経後女性の脂肪摂取の増加、夜間勤務、経口避妊薬の使用はリスクを増加させます。

「証拠不十分」は緑茶の摂取、閉経前女性の運動でリスク減少する、閉経前の総脂肪摂取の増加、乳製品の摂取、電磁波、ストレス、エストロゲン補充療法などでリスクが高まるなどがあります。

このように大豆食品、脂肪、乳製品摂取と乳がんのリスクに関しては、以前より大いに関係あるように一般的には広まっていますが、エビデンスレベルとしてはかなり低めに位置し、ここではあまり関係ないものとして考えられているようです。

しかし、乳がんはエストロゲンとの絡みからどうしても成長因子やエストロゲンを含む食品に原因があるのではと疑ってしまいます。実際、「確実」「ほぼ確実」の要因だけでこれほど、乳がんが増えてきている理由が説明できないような気がします。エビデンスとしては弱いかもしれませんが、何らかの食との関係を疑いつつ今後の診療を行いたいと思います。

温熱療法をパワーアップするアミノ酸 ー 5-アミノレブリン酸

最近、5-アミノレブリン酸の製造技術が進歩したことで、特に農業や医療の場で応用されるようになってきました。
5-アミノレブリン酸は生体内に存在するアミノ酸の一種で、血液の酸素を運ぶ成分であるヘモグロビンの基になります。
食品ではお酢や醤油、焼酎粕、赤ワイン、ホウレン草、お茶などに含まれています。
生体内でグリシンから合成されていますが、年齢とともに減少するので補充をしてゆく必要があります。
植物に対して5-アミノレブリン酸は葉緑素(クロロフィル)の基となる物質なので光合成を活発にして成長を促進させる作用があります。
そこで農業分野で用いられるようになり、今では生産性が向上することからその効果が実証されています。

医学的には癌の診断や皮膚病の治療に用いられています。
5-アミノレブリン酸は細胞内に入るとポルフィリンに変わり、続いてミトコンドリア内に入りプロトポルフィリンⅨに変わります。
正常細胞ではここからヘムに変わりますが、癌細胞ではヘムの合成ができないのでプロトポルフィリンⅨがどんどん蓄積してゆきます。
この物質は光活性があり400nmの波長の青色光を当てると赤色光を出すので、癌細胞を赤色に蛍光発色させ、目で見て診断することができます(光力学診断)。
また、5-アミノレブリン酸を内服後に尿中ポルフィリンの量を調べることで膀胱癌や脳腫瘍の診断に応用できます。
皮膚癌への応用としては5-アミノレブリン酸を癌部位に塗った後に蓄積したプロトポルフィリンⅨを励起させる400nmもしくは630nmの波長のレーザー光を当て、それにより発生した一重項酸素で癌を破壊する方法があります(光線力学療法)。

昨年の日本癌学会、日本癌治療学会では5-アミノレブリン酸に関する発表が増え、多くの施設で研究されていることが伺えます。
その中で私が今注目しているのは、東京農業大学と東京工業大学が共同で研究している温熱に関係するテーマです。
もともと癌細胞は正常細胞に比べて熱に弱いことから癌治療法の一つに温熱療法があります。
両大学の研究は癌細胞に5-アミノレブリン酸を加えることで温熱による細胞死が増加したというものです。
5-アミノレブリン酸は正常細胞ではなく癌細胞内でプロトポルフィリンⅨに変わり蓄積します。
その量が多いほど温熱刺激に反応しやすくなり、特に肝細胞癌、大腸癌、胃癌で細胞死が誘導されました。

この研究結果は副作用の最も少ない温熱療法の効果をさらに高めるものとして期待できます。
当院では漢方を温熱療法に併用していますが、今後5-アミノレブリン酸が温熱療法の大事なパートナーになるでしょう。

がん幹細胞と温熱

私たちの体の中には細胞の元と言いましょうか、未だ何色にも染まっていない幹細胞(かんさいぼう)というものがあります。
幹細胞は自分自身を何度も複製したり、ほかの細胞に変化したりできます。
京都大学の山中先生が遺伝子操作で人工的に開発したiPS細胞や受精卵を応用したES細胞なども幹細胞の一種です。
これらは白血病の治療や再生医療に応用され、将来さまざまな形で役に立ってゆくものです。
ところが近年、がん細胞の中に幹細胞の性質をもったがん幹細胞の存在が示されるようになってきました。
最近ではがん細胞の一部にがん全体の成長を促している特殊な細胞(がん幹細胞)があり、これを取り除かないと悪化や再発は防げないとする研究成果がサイエンスやネイチャーなどの有名雑誌に掲載されました。

がん細胞は増殖力が旺盛で、細胞が不死の状態になり、周りに浸潤、遠くへ転移する特徴がありますが、転移や再発はがん幹細胞によるものと考えられています。
がん組織の中にはDNAを増やしている時期のものや分裂しているものや静かに止まっているものなど様々な段階の細胞が混在しています。
抗がん剤は増殖時期にあるものには効きますが、静かな時期のものには効かず、がん幹細胞を残してしまいます。そしてこの幹細胞が生き残り、目覚めて再発へと向かいます。

放射線治療においても再発の問題があり、低酸素がん細胞が注目されています。
がん腫瘍を立体的に考えてみると血管の近くにある細胞は酸素が大いにあるので活発ですが、血管から離れるにつれ酸素が少なくなり活動レベルが下がり、最も遠いところでは細胞は壊死に向かいます。
このような階層付けが血管を中心になされて、実際の腫瘍の中では活発な細胞と死んだ細胞が混在しています。

低酸素環境下において転写因子のHIF-1(低酸素誘導因子)は重要な機能を持ち、血管新生や転移、細胞浸潤に関係する多くの遺伝子発現を促し、低酸素がん細胞を特徴付けるものになっています。
そして血管を中心とした階層ごとに性質が少しずつ違った低酸素がん細胞が存在しており、酸素分圧に応じて分布することがわかりました。
そこで放射線治療を行うと、まず血管近くの酸素が豊富ながん細胞が死滅しますが、その領域の酸素消費が減ることで、すぐ隣の階層にあり死にかけていた低酸素がん細胞がHIF-1活性を獲得し、息を吹き返し自ら血管新生を誘導しつつ、血管に向けて移動します。
これが放射線治療後がん再発のメカニズムの一つです。
京都大学の原田浩先生によるとHIF-1阻害薬を放射線治療と併用すると治療後のがんの再発をぐっと減らせるようです。しかし、この阻害薬の使用はまだまだ先になります。

千葉県がんセンターの研究では低酸素下の肺がん細胞ではHIF-1を介して脱分化が促進され、より幹細胞様の性質を示す細胞に変化していることから放射線治療後の再発もがん幹細胞が関与している可能性があります。

転移や再発に関係するがん幹細胞は低酸素下にてHIF-1で元気になるので、何とかしてHIF-1を抑え込まなければなりません。

面白いことに温熱療法では、軽度高温(39~41℃)の低酸素の環境でHIF-1活性が著明に抑制されマクロファージで呼吸バーストが惹起されることが証明されています。
そこで、さらに研究を進めた奈良県立医大の大森先生によると弱い温熱刺激はがん幹細胞に対して抑制効果があり腫瘍縮小にも関係しているようです。

まだまだ研究が必要な領域ですが温熱療法は安全で副作用もないので私自身もとても良い方法であると思っています。

すぐにできる温熱療法としてお風呂がありますが、40℃であれば20分、41℃であれば15分、42℃であれば10分湯船につかることを週2回繰り返す入浴法がお薦めです。

またがん予防のためにも温浴は大切です。

2012年 インフルエンザ動向

2012年 あけましておめでとうございます。

昨年は今まで体験したことのない衝撃に、生きる意味に関して深く考えさせられました。そして人と人との繋がりが生きる上でとても大切なものだと再認識するとともに、今年は病気になりにくい体作りの方法を通して、少しでも地域や社会に役立てるよう努力したいと思います。

 

最近は厳しい寒さと乾燥の継続で体調を崩される方が多い一方、私が診療している範囲においてインフルエンザの流行がほとんどないように感じます。実際、厚労省のインフルエンザ流行レベルマップでも昨年、一昨年の同じ時期より明らかに、警報や注意報の出ている都道府県が少ない状況です。

( 国立感染症研究所 感染症情報センター:https://hasseidoko.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/index.html
 
 
 2012、11、10年 第2週の比較
 

昨年の大地震、台風などの自然災害による様々な影響からより多くのインフルエンザが発生すると思いましたが違うようです。

予防が良くできているのかワクチンがいいのか免疫力がアップしているのか原因はわかりません。ただワクチンに関しては接種される方々が前年度より少なく在庫も余ってきているようです。このまま流行らずに今シーズンは終わってほしいと願いたいところです。しかし、定点医療機関(5,000施設)からの報告で2012年第1週の定点当たり報告数は3.76(患者報告数18,341)となり1を超えてきたので流行が始まったと判断されます。よって今後1月下旬から2月にかけてピークが予想されるので十分予防に気をつけるか、再度駆け込みでワクチンを接種するか考えどころです。

予防としては、野菜とタンパク質を中心とした食事をとり、体を冷やさないようにすることが基本ですが、食事が不規則になる場合はビタミンCを毎日1000mgは取っておいた方がよいでしょう。ビタミンCには抗ウイルス作用があり、特にビタミンC点滴をされている方は風邪やインフルエンザにほとんどかかりません。仮にかかったとしても40gほどの点滴で症状がなくなってゆきます。

一方、漢方的には発汗療法といって、体の表面を温める作用のあるもの(麻黄、桂枝など)を用いて体温を上げて発汗を促し、ウイルスの増殖を抑えて病気を治す方法があります。

麻黄は発汗作用があり、これに血行を良くして体表を温める作用のある桂枝を配合した麻黄湯がおすすめです。しかし、体力がなく麻黄が飲めない人、老人、心不全、低血圧症の人は参蘇飲、苓甘姜味辛夏仁湯などを用いたほうが良いです。

 

このさむい季節が早く過ぎることを願っています。