甘酒は腸内環境を整えるための力強い味方です

幼少の頃、お祭りで甘酒を初めて飲まされ、あまりおいしくなかった印象があります。

以後二三度口にしたものの、それ以上欲することはなく過ごしてきました。

そのころ飲んだのは酒粕を湯に溶かし砂糖を加えた甘酒だったので、お酒の香りが合わなかったのかもしれません。

しかし、医者になって7年が過ぎたころ酒粕についての本とめぐり合い、その効能があまりにも素晴らしかったため、好きではないはずの酒粕に興味を持つようになりました。

のちに基礎研究の機会を得て脊髄損傷の研究を始めましたが、その傍らで酒粕の研究も細々と行いました。ねずみと日々暮らす中で、ある時肥満ラットに酒粕を混ぜたエサを与えてみると中性脂肪の増加と体重増加の抑制作用があることがわかり、これを何とか形にしようと酒粕を飲みやすくしたSAKECAKEというサプリメントを作ったことがあります。今は製造しておりませんが、酒粕の力を埋没させるのはもったいなく、またの機会に作ってみようと思います。

最近は米麹を使った甘酒が人気のようです。

米に麹菌をつけ米麹とし、この米麹に水を混ぜて60℃で温め続けること6~8時間で、とろとろの甘酒ができます。麹菌が発酵過程でお米のでんぷんを分解しブドウ糖に変えるのでとても甘いです。甘酒にはブドウ糖の他に豊富なビタミンB群やアミノ酸も含まれており、「飲む点滴」「飲む美容液」などと呼ばれています。また8~10%アルコール分が含まれる酒粕と違ってアルコール分がゼロなので子供や妊婦、運転者も安心して飲むことができますし、カロリーも砂糖を入れる酒粕甘酒より低いため、カロリーの気になる方には良いでしょう。

一方、酒粕甘酒はアルコール分のことを除くと、米麹甘酒と比べてビタミン、アミノ酸、食物繊維の含有量が多く、何よりコレステロールの低下に関係するレジスタンントプロテインが含まれており栄養価としては上回っています。

甘酒と腸の関係において、甘酒に含まれる食物繊維やオリゴ糖が大腸に届くと酪酸菌のエサとなり酪酸菌が増えて酪酸を豊富に作ります。酪酸は制御性T細胞による免疫寛容に関与し過剰な炎症を抑えるため炎症性腸炎や喘息、アトピーの鎮静化の助けとなります。

また植物性乳酸菌を含んでいる場合には、それらが小腸に達した後、乳酸にて腸内を酸性にして蠕動運動を活発にするとともに乳酸菌が産生するバクテリオシンが悪玉菌を抑制し腸内環境を改善します。

生の米麹甘酒(生甘酒)では熱入れをしていないので、麹菌が作り出したアミラーゼ、プロテアーゼなど多くの酵素が活性のある状態で存在しており、腸における消化吸収を大いにサポートします。

先日の点滴療法研究会のワークショップにおいて桑島内科医院の桑島先生は甘酒を実際に患者さんに用いてその効果について発表されました。

まず外来患者さんに飲ませたところ便秘が最も多く改善し、夏バテや肌の改善、そして過敏性腸症候群やパニック、過換気症候群が軽快したようです。

続いて特別養護老人ホームの認知症、不穏、食欲低下や下痢などがある状態の悪い入所者7名に生甘酒を毎日一杯飲ませ3-4か月続けました。その結果7名中4名の全身状態が改善し、不穏と便秘、下痢の改善、食欲の増進によるアルブミン値の改善が見られました。

そして、この実験の途中、集団感染がおこり多くの方が発熱し抗生剤の治療を受けましたが、生甘酒を飲んでいなかった人に比べ飲んでいた人は軽症で済んだようです。

今度は生甘酒による腸内の変化を見るために、状態の良い方3名に生甘酒を毎日1杯1か月間続けてもらい、摂取前後の便検査を行いました。すると腸の炎症性マーカーであるカルプロテクチンの有意な減少と真菌のカンジダの減少がみられました。

これらから生甘酒が腸内環境の改善に少なからず関与していることが分かり、先の入居者の全身状態が改善したことは腸内細菌叢を整えることにより免疫力や精神機能の改善につながったものと思われます。

このような結果を導く生甘酒は大したもので、十分な利用価値があるといえます。

在宅医療の現場や私が理事をしている四街道の特養でも便秘の問題があり、今後は生甘酒の活用も必要であると考えています。

なるべく薬に頼らず、機能性の食品を利用し、自然な形で体調が整えられることはとても大切ですし、甘酒をより多くの方に使っていただきたいと思います。ただ、飲みすぎは、糖質の取りすぎにもなりますから注意が必要です。

話は変わりますが、このたびの会で久しぶりにソフィアイーストクリニック日本橋の尾崎先生とお会いし近況を伺うことができました。

尾崎先生はがん患者さんの腹水治療のスペシャリストです。CART(腹水ろ過濃縮再静注法)という腹水を腹腔から抜いて、細菌やがん細胞を取り除き、アルブミンなどが濃縮された腹水を再び点滴で戻す治療をしていて、私は腹水の患者様から相談があった際には、必ずご紹介する先生です。

ところがこのたび尾崎先生は2トントラックを改良し救急車を大きくしたような感じのCARTの設備を整えた車を作ったのです。つまり、通院できない腹水の患者宅まで自ら出向いてからこの車の中でCARTをしようというものです。外観はピンク色の背景に赤いハートがいくつか描かれておりとても目立つデザインです。

とてもユニークで日本ではオンリーワンであり、ますますの普及が期待されます。

このたびの点滴療法研究会は何名かの先生方に独自の治療法や技をご紹介いただきそれを学ぶ場でありましたが、皆さんに共通しているのは、患者さんのためにとことん努力している姿勢でした。

これからの個別化医療に対応するためにはこのような気持ちと技を持ち合わせることが大切であると感じました。

ただ、多くの検査法や治療法が日々増えているので、混乱が懸念されます。

私たち医師は有用なものとそうでないものを選別し、最短距離で患者さんに治療方法をお伝えする技量が必要です。

そうした中で私は食品を基本とし、それに新たな治療法を組み合わせる方法を選択し今後ご紹介して参りたいと思います。

photo: 田中酒造

健康のためにダークチョコレートをもっと好きになろう

今の健康ブームの中でチョコレートは脚光を浴びております。それを愛する人は多いと思いますが、私もその中の一人です。週に5回は夕食後、お茶と一緒にチョコをつまんでから床に就いています。
しかし先日、海外発の有名なチョコレート専門店で食べたチョコが全く私の口に合わなかったため、おいしいチョコを求めて蔵前まで行ってきました。

今年2月にオープンしたダンデライオンというお店で、元IT起業家の若者二人がサンフランシスコで創業し2店舗目を日本の蔵前に作りました。
この店内だけで世界各地から取り寄せたカカオ豆からチョコレートまで製造し、お客はその場で食することができます。
ここのチョコはカカオときび砂糖だけでできており、他の混ぜ物は一切なし。だからおいしく、お客さんがひっきりなしの状況でした。
メニューもホットチョコレートからブラウニーなどわりと豊富にあることも人気の理由のようですがそれ以外に、私は味わってみて自然に近いシンプルなおいしさを皆さんは求めているのだと改めて思いました。

カカオの木には“神様の食物” テオブロマ・カカオというギリシア語に由来する学名がつけられております。はじめは紀元前1000年ころより中南米で利用され、マヤやアステカの貴族の飲み物として珍重されていたようです。
16世紀にスペイン人によりチョコレートとしてヨーロッパに持ち込まれた頃、はじめは王侯貴族の飲み物でしたが、そのうち体にいいものであると考えられるようになり科学者がテオブロマと学名を付けて、19世紀には砂糖やミルクを加えることにより多くの人が食すようになりました。

カカオの木は赤道から緯度で南北20度以内の地域で栽培されており、ラグビーボール大の実を付けます。この実の中に白い果肉に包まれ約30~40個のカカオ豆があり、実から取り出した後、果肉と一緒にバナナの葉でくるんで発酵させます。1週ほどしてカカオ豆を砕きの皮を取るとカカオニブができます。
さらにカカオニブを炒めてから細かくつぶしていくとチョコレートの元になるカカオマスができます。
カカオマス100g中には脂質50g(オレイン酸32%、ステアリン酸31%)、食物繊維17g(難消化性食物繊維のリグニンが50%)、タンニン4g(ポリフェノール)、テオブロミン(苦み成分)1.3g、無水カフェイン0.1~0.2g、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラル、ビタミンE、βシトステロール(植物ステロール)が含まれています。
このように豊富な栄養素を持つカカオマスがチョコレートに多く含まれるほど機能性を発揮するため70%以上のもの(ダークチョコ)が望ましいとされています。
愛知学院大学の大澤教授によると1日5粒25g(150kcal)のチョコレートを1か月ほど食べることで血圧が低下するそうです。
また先生は、別の認知機能の研究においてチョコレート摂取によりBDNFという脳由来の神経栄養因子が増えて今後認知症の予防に期待がもてるが、これらはみなカカオポリフェノールの抗酸化、抗炎症作用によるものと述べています。
つまりチョコレートの機能性の原動力となるのがカカオポリフェノールと考えられます。そこで各食品100g中のポリフェノール含有量を比較してみると、コーヒー200mg、緑茶115mg、赤ワイン101mg、ブルーベリー300mg、オリーブ346mg、ブロッコリー45mg、クルミ1215mg、アーモンド187mg、ココアパウダー3448mg、ダークチョコレート1664mgでチョコレートには圧倒的な量のポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールはもともと植物が過酷な環境で生きてゆくために作り出した物質であるため、人が食すると苦みや渋みとして感じられます。
5000種ほどあるポリフェノールはお茶のカテキン類、大豆のイソフラボン類やレスベラトロールのスチルベン類など大きく10種類に分けられ、それぞれに得意とする機能を持ち合わせています。
特にカカオポリフェノールは強力な抗酸化性をはじめ、慢性炎症やアレルギー炎症の抑制、動脈硬化予防効果や発がん増殖抑制効果、先ほども述べた脳内機能増進効果など多種多様な機能性を持ち、研究対象としての注目が高まっています。
理想的なポリフェノールの1日摂取量が1500mgという意見がある中、お茶の水女子大の田口先生の研究によると日本人の1日のポリフェノール摂取量は840±403mgでコーヒーから47%、緑茶16%、紅茶6%、チョコレート4%の順でした。
一方フランス人では男性1280mg、女性1120mgでコーヒーからが40%、次いで果物そしてワインの順で、日本人の摂取量がやや少ない印象です。
そこで、もともとポリフェノールの多いチョコレートの割合を少し増やすことにより理想値の1500mgに近づける可能性があります。ダークチョコレート25gで416mgプラスできることを目安に取り入れてみてはいかがでしょう。

チョコレートにより糖尿病患者のインスリン抵抗性が改善したり、心筋梗塞の患者さんの心臓死亡率を減らしたり、またダークチョコレートで下肢末梢動脈疾患患者の歩行機能が改善したり、世界からチョコレートの効能効果が報告されています。
がん患者に対する報告はありませんが、動物実験レベルでは2012年にエピカテキンの含有量の多いココアがin vitroですい臓がん細胞の増殖を抑制した報告があります。また、最近ではココアパウダーの抽出物(プロシアニジン;ポリフェノール)が卵巣がん細胞の細胞内ROSレベルを上昇させることにより卵巣がん細胞をアポトーシス(細胞死)に導き、さらにがん浸潤に関係するpro-MMP2レベルを低下させた報告がありました。

このように期待が広がるチョコレートですが、糖分や脂質が多いため食べ過ぎるとメタボになるので注意が必要です。またミルクチョコレートは脂質以上のの糖質を含む場合が多いので、なるべくカカオ70%以上のダークチョコレートがおすすめです。

寒くなるこれからの季節はホットチョコレートで温まるのもいいですね。

安全に続けるためにもっとゆるゆるの糖質制限がおすすめ

今では多くの人に知れ渡った糖質制限。

飲食店でご飯を残す人が増えて、お店側もちょっと頭を抱えているとか。

このまえファミレスで近くの席にいたカップルの会話が少し気になりました「今、糖質制限中だしごはん半分残すわ!」と男性の声、「偉いね~」と女性の声。この二人の中では糖質制限はとても良いことだと捉えられているようです。

一方、最近糖質制限ダイエット推進派の作家さんが急死したことにより糖質制限は危険であるといった意見もマスコミを通して多々聞かれるようになりました。以前から糖質制限反対の意見がありましたが、ここにきてヒートアップしているように感じます。

数年前までは糖質制限という言葉はダイエットに取り組んでいる一部の人の間で使われているだけでしたが、今は日常会話に普通に使われており、私はこれほどポピュラーになるとは思いませんでした。もともと糖質制限ダイエットは2002年にアメリカ人のロバート・アトキンス医師が提唱した考え方で、炭水化物を制限する代わりに肉やたんぱく質はカロリーに関係なく、いくら食べても良いというものです。実際この方法をやってみると急速に痩せますが、その糖質制限の厳しさのあまり脱落する人や、肉や油の摂り過ぎでかえって具合の悪くなる人がでてきたために廃れてしまいました。また皮肉なことにアトキンス医師自身も最後は肥満になってしまったようです。

ただ、私は2002年当時、炭水化物のブドウ糖への分解のされやすさを示すにグリセミックインデックス(GI)値のダイエットへの応用とその効果を知り得たことで、アトキンスダイエットは理にかなった良い方法であるとずっと思ってきました。かつて一度私は2013年7月に糖質制限のブログを書きましたが、以来この考えは変わっていません。

現在、アトキンスの基本を踏襲し糖質制限という言葉に代わっていますが、その厳しさや方法が原因と思われる問題がでてきているようです。2012年のイギリスの報告では炭水化物制限を長期に続けると心筋梗塞や脳卒中になる危険性が高まるといわれ、アメリカNIHからは死亡率が高まると報告されています。

その一方で、糖質制限は糖尿病を改善し、運動との併用でロコモティブシンドロームを予防できることも報告されています。

もともと日本の1日に摂るべき栄養に関する考え方は1日に必要なタンパク質量、脂肪量を決めてから残りを炭水化物で補う方式のため、どうしても炭水化物が多くなってしまいます。

厚労省の日本人の食事摂取基準2015年版によると摂取割合は炭水化物57.5:脂質25:タンパク質16.5が適当であると示されています。これらは%エネルギーという値で1日に必要なエネルギーつまりカロリーの割合を元に計算されています。厳密にはこの値の求め方は年齢ごとの死亡率が最低な体格(BMI)が一番健康であると仮定し、このBMIを維持するためのエネルギー摂取量と消費量が等しくなるカロリーはどのくらいかを専門家が計算して出しています。

成人のタンパク必要量は0.65g/kg/日とされ、またあらかじめ目標値として脂質は25%と決められており、必然的に炭水化物、糖質は6割近くになってしまいます。低めのタンパク質の必要量設定に引っ張られる形で炭水化物の割合が多くなっている印象です。

例えば、成人男性で1日の必要エネルギーを2000kcalとすると6割の1200kcalが糖質になります。4kcalが糖質1gなので300gの糖質が必要量になり、ごはん一膳150g~180g中の糖質が60gくらいなので、1日にごはんは5杯食べることになります。

ちなみに糖質が体内の脳や腎臓で使われるための最低必要量は100g程度といわれており、また主に絶食時に機能しますが、筋肉のアミノ酸や中性脂肪のグリセロールから肝臓でブドウ糖が作られて補充されるので、1日に300gもの糖質摂取はやや多いと思われます。

しかし、あまりにも糖質摂取が少ないと脂肪酸からケトン体が作られエネルギー産生に使われます。最近ではケトン体の脳での利用やがん予防の栄養、神経の保護作用などいい面もわかってきています。しかし、ケトン体の血管内皮細胞への有害作用も示されてきておりケトン体オンリーでは注意が必要です。では、糖質摂取におけるほどほどの量はどのくらいでしょうか?

糖質制限を研究されている北里大学の山田先生によると一食当たりの糖質量を20~40gとし、かつ1日10gのスイーツを食べて、1日当たり70~130gの糖質にするという緩やかな糖質制限食を“ロカボ”と名付けて普及活動をしています。

そして、この糖質レベルではケトン体の産性を避けながら嗜好品も食べられるため有用な方法であると思われます。

ただ、緩やかと表現されていますが、糖質量を最大130gとすると1日にごはんを2膳は摂れるものの、それ以外の糖質はゼロになってしまうので、おかずの糖質(野菜や豆など)が取れなくなってしまいます。私としてはもう少し緩い基準でもいいと考えています。

私は6年程前から糖質制限をはじめて、ロカボレベルのスタートでしたが、かなり体重が落ちました。またそれ以前からウォーキングをしていたため体重が減りすぎたので、制限をもう少し緩くした経緯があります。

あまり糖質制限をしすぎたり、夜に適度な糖質を摂らなかったりすると困ったことが起こります。つまり睡眠中にエネルギーとして使うべき糖質が少なくなり、代わりに筋肉のアミノ酸から糖を作り利用されるので、せっかく運動で作り上げた筋肉が減少してしまいます。その結果、代謝が落ちてかえって痩せにくい体になってしまいます。

よって、運動を少しでもされている方であればごはんが朝夕に1膳ずつ食べられてかつ野菜や豆などのその他の糖質が取れる150g~200gのゆるゆるの糖質制限で長期間維持した方が、ストレスもなく健康的であると考えます。

もちろん肉やチーズなどのタンパク質は多めにとりますが、糖質もある程度とれているので、貪るような高脂肪摂取まで至らないレベルで落ち着いてきます。

実際、私自身ゆるゆる糖質制限を何の苦も無く続けており、体重の維持ができています。

つまり、厳密な糖質制限ではメリットもありますがデメリットもあることが分かってきましたので、メリットを最大限に生かすためにはロカボやそれよりももっと緩いゆるゆる糖質制限を取り入れる時期に来たかもしれません。

さらに効果を高めるためには野菜から食べて炭水化物は最後にする順番とGI値に基づきパンより米、パスタ、そして、うどんよりそばを選択する頻度を増やす大原則を忘れないようにしたいものです。

photo: diet.lovetoknow.com

いつまでも健康でがんにならないように緑茶を飲もう! 進む分子生物学的緑茶研究

私は毎日欠かさず緑茶を飲んでいます。

3年前、2013年5月に「緑茶を飲んでがん予防」というブログを書いた手前、ずっと続けています。緑茶には胃がん、肺がんの予防効果があって、そのカギを握るのが4種のカテキンの中のEGCG(エピガロカテキンガレート)であるとお話ししましたが、最近ではその仕組みがさらに明らかになりエビデンスも積みあがってきました。また、がん以外の病気や健康にも影響力を持つことが分かってきたので、今回はそのあたりをご紹介したいと思います。

もともと日本人は長寿であることから、緑茶を飲むことが病気の予防や長寿に影響を及ぼしていると普通に考えられます。

国立がんセンターの井上先生の研究では、1990年から始まった14万人の日本人地域住民を対象とした多目的コホート研究(大規模疫学研究)において男女とも80パーセントの人は毎日緑茶を飲用する習慣があることがわかりました。

続いて緑茶の飲用とがん、心臓、脳、呼吸器などの主要死因死亡リスクとの関連では1日2杯以上の緑茶飲用量が増えるにつれて死亡リスクが低下する傾向が見られました。またカフェインも摂取量に応じて同様に死亡リスクの低下がありました。理由としてカテキンによる脂質、血糖の調節、改善効果やカフェインによる血管内皮の修復や気管支拡張作用が死亡につながる危険因子を除去しているためと考えられています。

がんとの関連で、まず胃がんでは女性で1日5杯以上飲む人は胃の上部3分の1と下部3分の2で分けた場合、下部での胃がんの明らかなリスクの低下があり、胆道がんでは7杯以上飲む人に有意な低下がありました。前立腺癌では前立腺を超えて外に広がっている進行性と内にとどまっている限局性を比較したところ、緑茶の飲用が多いほど進行性のリスクの低下が見られました。甲状腺がんは少し変わっており、閉経前の女性では緑茶を良く飲む人ほど甲状腺がんになりやすく、一方、閉経後では良く飲む人ほどなりにくい傾向が見られました。そのほか大腸がん、肝がん、膵がん、乳がん、膀胱がんでは関連は見られませんでした。

疫学研究からは緑茶の効果は限定的な感じに受け取れますが、私は緑茶には少なからず抗がん効果があることが重要と思います。それには分子生物的な手法で研究を進める必要があります。

九州大学の立花先生は緑茶の効果を明確にして、さらに引き出そうと日々奮闘されており、今やカテキン研究の第一人者です。そもそもカテキンは巷で良く聞くポリフェノールという物質でありフラボノイドと総称される成分の一種です。そのカテキン類の一つであるEGCGは他のカテキンと比較して強い生理活性を示すとともに茶以外の植物には見いだされていないお茶特有の物質です。

体内には細胞を支持する基底膜があり、この基底膜を構成する糖たんぱく質にラミニンがあります。ラミニンは細胞接着因子でもあり、このうち67KDaラミニンレセプター(67LR)がEGCGの活性発現に関与する標的分子であることを立花先生は同定しました。

つまり、お茶の中のEGCGが細胞膜の67LRに結合することで様々な反応が起こるということです。

結合すると①アデニル酸シクラーゼの経路を介してがん抑制遺伝子の一種であるMerlinを活性化しがん細胞増殖を抑制します。

②NO(一酸化窒素)合成酵素を活性化しcGMPを増やすことで酸性スフィンゴミエリナーゼが活性化され、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

③TLR4シグナル阻害因子であるTollipを発現誘導し、がんにより引き起こされている炎症反応を抑えます。

しかし、これらの実験はEGCGがある程度高い濃度で行われているので、生理的な低濃度では効果が不十分である可能性がありました。そこで、いくつかの物質を用いて何がEGCG活性を促進するのか実験が行われました。

まずはビタミンAの誘導体であるオールトランスレチノイン酸です。

これをメラノーマ腫瘍に用いたところ67LRを増やしEGCG細胞表面結合量を増加させて、その成長を抑制する効果が見られました。

続いて、EGCG活性化によるアポトーシス誘導にはcGMPが必要ですが、腫瘍に高発現しているホスホジエステラーゼ5(PDE5)はcGMPを減らしてしまうので、PDE5を阻害する物質が必要になります。

カフェインにはこれを阻害する効果があり、緑茶にもともと含まれているので有用ですが、ED治療薬のバイアグラにも阻害作用があることが分かってきました。そこでヒト乳がん細胞をマウスに移植したモデルにEGCGとバイアグラを投与したところ16日間で細胞が死滅しました。また、多発性骨髄腫や胃がん、すい臓がん、前立腺がんでも同様の結果が得られ、バイアグラとEGCGのコンビが、かなり期待できる物質であると考えられています。

またEGCG活性の増強作用はスフィンゴシンキナーゼ阻害剤との併用においても観察されます。スフィンゴシンキナーゼは、がんの血管新生を促進するので、強い薬以外にこれを阻害する食品があれば助かります。最近、大豆由来のスフィンガジエンがスフィンゴシンリン酸と拮抗し結腸癌の発生を抑える可能性も言われてきているので、もう少し研究が進むことを願っています。

現時点でEGCGを活性化させる食品の候補としてビタミンA、カフェイン、大豆が有力と考えられています。特に、ビタミンAを含むレバーやかぼちゃの摂取だけでは追いつかないので、ビタミンAに関してはサプリメントを用いることも大切です。

がん以外ではEGCGには抗アレルギー作用、LDL酸化抑制作用、インフルエンザ予防効果、認知機能の低下抑制があることがデータとして示されてきております。

つまり、緑茶が単なる健康飲料から薬効をもった飲料であると示される日が近づいてきているからでしょうか。

私たちの周りにはあふれるほどの健康食品がありますが、あれこれ手を出さず、じっとお茶だけを飲んでいるだけでも、かなりの病気を遠ざけることができると思います。

わたしはこれからも緑茶を飲む習慣をやめることなく、続けて参りたいと思います。

photo :富士山写真道楽

腸内細菌のバランスを整えるための4R

先日、私の友人からそのお父様の体の調子が半年以上も優れないため、どうしたらよいかと相談がありました。

昨年半ばから食欲がなく、時々嘔吐し病院に行くも原因が分からず点滴を受けて帰宅することを繰り返していたようです。徐々に体力が落ち、とうとう今月に状態が悪化して集中治療室に入院してしまいました。

検査の結果、胃腸に真菌がいたことが原因とわかり抗生物質を投与され一命をとりとめ、現在快方に向かっていますが、嚥下障害になり胃ろうが必要な段階に至ってしまったようです。

カンジダはカビ(真菌)の一種で私たちの体にいる常在菌です。ストレスやホルモンバランスの崩れなど何らかの原因でカンジタが腸内で増えるとヘルパーTリンパ球のTh1/Th2のバランスが崩れて免疫が低下したり、腸粘膜の機能が落ちてリーキガット症候群のように吸収に不都合が生じます。

今回のケースのようにカンジダ菌感染症は倦怠感や腸の不調など不定愁訴があるので、自律神経失調症やうつ病などと間違われやすく、診断まで時間がかかってしまうことが多いです。

診断には便検査や尿の有機酸検査などがありますが、医師側がカンジダを疑わない限り検査にたどり着くことも大変でしょう。

こういった状況に陥る前に、私たちができる予防策として腸内細菌のバランスを整えておくことが大切です。

体内には1000兆個の腸内細菌がいて、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、ウエルシュ菌、ブドウ球菌などの悪玉菌、バクテロイデスや無毒の大腸菌などの日和見菌に分けられ、この善:悪:日和見の比が1:2:7であることがバランスの良い状態であると考えられています。

バランスが整った状態であれば善玉菌がカンジダにつけ入る隙を与えません。

よって日ごろからヨーグルトを積極的に食べることは大切なのです。

また炭水化物の取り過ぎや抗生物質の使い過ぎにも注意が必要です。

腸を整えるためにヨーグルトを積極的に摂るとことはとても大切であり、私自身も毎日欠かさず摂っています。そして、来院される方々や在宅で診ている患者さんやそのご家族にも乳酸菌の必要性を話し、摂っていただいています。

ヨーグルトが苦手な方には乳酸菌のサプリメントをおすすめしています。

ただ乳酸菌のサプリメントも数多くあって、どれを選んだら良いのか非常に迷います。

そういったときに大事なのが4Rです。

私が栄養学の基本としている分子栄養の考え方の一つに4Rという腸内環境改善のための方法があります。

4Rは身体の防衛機能の最前線である消化器系の健全性を取り戻し、保つことをコンセプトとしており、腸内において①Remove(除去)②Replace(補てん)③Reinoculate(植菌)④Regenerate(再生)の4つのRが大切であることを表しています。

①    Remove(除去)は腸内細菌のインバランスなどを引き起こす有害菌やウイルス、毒素(薬物、アレルギー物質)、環境ホルモンなど消化管の環境に悪影響を与える原因物質を除去することで主にカンジダの除去をターゲットとしています。

②    Replace(補てん)は加齢、ストレスなどで消化酵素の分泌が低下し消化不良が続くと、病原菌による未消化物の異常発酵などで消化管の負担が増大し、全身に悪影響が出るため、消化酵素を必要に応じて加えることをいいます。

③    Reinoculate(植菌)は乱れた腸内細菌叢のバランスを整えるためにプロバイオティクスを腸内に送り込みます。

④    Regenerate(再生)は常に有害物質にさらされている腸管粘膜を修復と再生するためにプロバイオティクスの餌となる食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスやグルタミン、ビタミンAなどの腸管免疫にも重要な栄養素を与えることです。

具体的な成分として

①    除去には抗菌作用のあるオレガノオイルやセージなどのハーブや免疫グロブリンを含む乳清そして免疫調整作用のあるラクトフェリンを使用しています。

②    補てんでは糖質、タンパク質、脂質、食物繊維を分解する酵素が含まれますが、この中のプロテアーゼがカンジダの抵抗性の元となるバイオフィルムを破壊します。

③    植菌では乳酸菌(アシドフィルス)とビフィズス菌(ラクチス)を1カプセルにそれぞれ150億個ずつ含んだものを用います。

④    再生では炎症、便秘、下痢などの症状に応じたアプローチがあり、抗炎症にcox-2阻害作用のあるホップ抽出物やクルクミンを用い、便秘がメインの場合イヌリン、プランティンフルーツ末、米ぬかを用い短鎖脂肪酸の生成に役立てます。下痢には腸粘膜の再生を目的にL-グルタミンやカンゾウ、アロエベラ抽出物を用います。

少し複雑になりましたが、一つひとつが緻密に考えられ作られています。

4Rの考え方は分子栄養学的に腸を十分に研究した結果得られたもので、とても理にかなっていると思います。

また、これらの上手な使い分けで腸内環境が整えられるようになったことは、かなりの進歩であると思います。

病気になり、根本から治そうとしたときに、まず腸の環境はどうなのかを第一に考え、その環境を改善し整えるために4Rの基本を思い起こせばきっとうまく行くでしょう。

photo:Be Brain Fit