パラリンピックから脊髄損傷について考えてみました

羽生選手やカーリング女子への興奮冷めやらぬうちにパラリンピックが始まりました。

10日にはアルペンスキー滑降座位で村岡さんと森井さんが早速銀メダルを取り、14日には村岡さんが金、さらに16日には成田さんが金をとり日本人としてとてもうれしい気持ちになります。また左足が義足で夏季パラリンピック走り幅跳びの銀メダリストの山本選手が今回スノーボードで挑戦することなど話題に事欠かない楽しい祭典となっています。

パラリンピックは1948年にロンドン郊外の病院において第二次世界大戦で脊髄を損傷した兵士のリハビリの一環として行われたアーチェリーの競技会が始まりとされ、1952年に国際大会になったようです。今では様々なハンディキャップを抱えた方々の競技会となりました。

私は大学病院時代に脊髄損傷の研究に少し関わっていたことがあり、今回は脊髄損傷について書いてみました。

パラリンピックという名はパラとオリンピックを合わせた造語で、パラとはパラプレジア=両下肢麻痺のことです。医学的に一側肢麻痺をモノプレジア、四肢麻痺をテトラプレジアといいます。

脊髄損傷には受傷して間もない急性期、受傷後4週間以内の亜急性期、それ以降の慢性期があります。亜急性期までは治る見込みがありますが、慢性期になると麻痺は重篤化しやすく、改善が見込めない場合がほとんどです。

パラリンピックに出場しているパラプレジアの選手は麻痺が確立した慢性期の中で戦っています。

また、損傷の程度により、機能がわずかでも残っている不全麻痺と全く機能が失われた完全麻痺があります。損傷部位は頚髄が約7割と最も多く、完全麻痺に至った方は3~4割ほどいます。

完全麻痺で慢性期に陥った場合、現時点で改善の見込みはゼロです。

しかし、この状態を何とかしたいと悩んでいる患者さんは多く、そのため研究者は慢性期完全麻痺の治療を目標としています。

脊髄損傷は長い間治らないとされ研究は停滞していた感があります。分子生物学の発展とともに研究が盛り上がってきたのがここ20年程です。現時点でこの分野は日本の研究が世界の中でも進んでおり、特に慶応大の岡野先生と中村先生がiPSの山中先生と組んでリーダーとなっています。

私が昔、研究のきっかけとなったのは岡野先生の神経栄養因子に関する論文で、神経が回復するかもしれない可能性が心に響いたことを今でも覚えています。

脊髄損傷の研究は損傷部への細胞移植が主流で、岡野先生は20年近く前ラットの胎児由来の神経幹細胞をラットの脊髄損傷部への移植を皮切りにヒト胎児由来の幹細胞移植まで進めました。ところが、倫理的問題で実験がストップ。

2006年困っていたところに山中先生がiPS細胞を開発して一緒に研究することで、倫理的問題をクリアーし実験が再開しました。

まずはマウスのiPS細胞を神経幹細胞にしてからマウスの脊髄損傷部に移植、続いてヒトのiPS細胞を同様にマウスに移植したところ、動かなかった手足が動くようになり、実験は成功しました。顕微鏡で見てみると移植したiPS細胞由来の神経幹細胞は神経細胞やオリゴデンドロサイト(軸索の周囲を覆う髄鞘形成に関与)に成長し、神経伝達に重要な髄鞘を作るまでになっており、これらが機能回復に至った要因と考えられています。

このようにヒトに用いるまではマウスなどの小動物からサルそしてヒトへ実験を進めていくわけですが、ヒトへの応用に関してはiPSの腫瘍化の問題や細胞の生きの良さをキープできるかなどのハードルは非常に高く、まだまだ時間はかかりそうです。

中村先生は綿密な臨床的治療戦略を練っており、これから10年の間に3つのステージを踏んでいく予定です。まず①亜急性期の完全脊髄損傷の患者に対する臨床研究、続いて②慢性期の不全脊髄損傷に対して、最後に③慢性期の完全脊髄損傷に対してと述べています。

脊髄損傷の治療で大事なことは受傷後早期の急性期における治療であるといわれています。

以前は損傷による炎症を防ぐという意味でステロイドを大量に使っていましたが、今はそれに代わってG-CSFという神経栄養因子やHGF(肝細胞増殖因子)の投与が行われるようになってきました。HGFは炎症を抑え、神経や血管の再生を促す効果があるため筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者さんにも使われ始めています。

急性期にHGFにより完全脊損になりそうな患者さんを不全損傷に抑えることで、早期のリハビリにより機能回復が望めるようになります。

亜急性期から慢性期に至り回復が不十分な場合には今後iPS細胞移植したのちリハビリ訓練にて回復を促すことになるようです。

慶応大では京都大学の研究所CiRAから提供してもらったiPS細胞から分化誘導した神経幹細胞のストックを持ち、いつでも脊損の患者さんに提供できる体制を整えようとしています。

リハビリではHALというサイバーダイン社のロボットスーツにより慢性期の不全損傷の患者さんで歩行機能の改善やMRIで脳内の連絡網の再構築が確認されたりして、今後脊髄損傷全体の治療において大いなる助けになることが予想できます。

iPS細胞ができたことでこの分野においても一段と進歩がみられ、山中先生の功績はとてつもなく大きいものだとあらためて思いました。

それと同時にiPSを持ってしてもすぐには治療に取り掛かれない慢性期の完全脊髄損傷がとても難解なものと再度認識しました。

しかし、急性期から亜急性期へと問題解決が進み、私が研究していたころあと100年は無理だろうなと思っていたゴールがもっと手前に近づいて来たことは事実です。

将来的には今回パラリンピックに出ていた選手が、歩けるようになり2018年は車いすだったなあと振り返る日が来るかもしれません。

平昌での祭典はもうすぐ幕を閉じますが、これからもパラリンピックには注目していきたいと思います。

photo: 毎日新聞

マインドフルネス

平昌オリンピックがはじまり、極寒の中、熱い戦いが連日繰り広げられています。

この日のために鍛錬してきた力を思う存分発揮できることを願うばかりです。

しかし、中には「こんなはずじゃないのに」と自らが思っているような演技ができずに終わってしまう選手も何人かいるでしょう。なぜか本番に弱い。そのなぜかの大部分は心、メンタルに関係していると考えられます。

最近ではスポーツ選手がメンタルトレーナーをつけて、練習だけでなく生活にまでアドバイスを取り入れて、その結果良い成績を残す選手も増えてきているようです。

普段生活している私たちも同様に仕事や人間関係などで悩むことがあります。

このようなときに一緒に考えてくれるメンタルトレーナーのような人が身近にいればどれだけありがたいかと思います。しかし、皆がメンタルトレーナーにお世話になれないので何らかの方法が求められます。

現代に生きる私たちは多少のストレスを抱えて生きています。その対処法としてマインドフルネスが2010年ころから日本でも注目され始めました。

世界では有名な起業家や経営者、スポーツ選手の間ですでに広がっていました。

マインドフルネスは呼吸に注意を向ける瞑想法の一種で、宗教性はないとされています。

2013年の1万2千人を対象としたメタ解析においてマインドフルネスは心理的な問題、特に不安、うつ、ストレスの減少に効果があることが示されました。(Clinical Psychology Review,33-6,Aug 2013,763-771)

マインドフルネスの第一人者で精神科医の久賀谷先生によるとマインドフルネスとは「明確な方法で何かに注意を向けること」であるという。

何かに興味を持ち、良い悪いといったジャッジをせずに注意を向け、さまざまなことに気づき、過去でも未来でもなく現在を認識することが大切であると述べています。

つまり、今ここにいる私を考えることで、過去の嫌な事や未来の不安によるストレスの蓄積を予防できるようになります。

また、久賀谷先生は世の中には人種や宗教、性別などへのジャッジで溢れており、ジャッジしたりされたりすることで、敵味方という区別や感情的な好き嫌いが生まれ、そこにストレスが発生する原因があると述べています。

脳の中では何が起こっているのか?

久賀谷先生によると脳の中には雑念を生み出し沢山エネルギーを消費するDMN回路(デフォルトモードネットワーク)というものがあり、これは内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉など複数の脳部位から構成されています。

このDMN回路が過剰に働くと脳が疲労しストレスが発生するといわれ、よってこのDMN回路の鎮静化がストレスを抑えるkeyになります。

世界で様々な実験が進み、マサチューセッツ大学のブルワー先生はマインドフルネスによりDMNの一部(内側前頭前野、後帯状皮質)の活動が低下することを見出しました。

また大脳皮質が厚くなったという報告の他に脳の萎縮抑制や海馬の密度増加などマインドフルネスによる脳の構造変化も報告されるようになりました。

マインドフルネスの代表的な実践方法にはマインドフルネス呼吸法があります。一言でいうと、「いまここにいる」を意識させる呼吸法です。

1. 基本姿勢をとる 椅子に座りおなかはゆったり、手は太ももの上、目は閉じる。

2. 身体の感覚に意識を向ける 接触の感覚(足の裏と床、おしりと椅子、手と太も  もなど) 身体が地球に引っ張られる重力の感覚

3. 呼吸に注意を向ける 呼吸に関わる感覚を意識する(鼻を通る空気や呼吸の深さなど) 深呼吸や呼吸コントロールをせず、鼻で自然な呼吸をする。

4. 雑念が浮かんだ事実に気づき、注意を呼吸に戻す。このとき雑念は生じて当然なので、自分を責めない。

この呼吸法はできるだけ同じ時間帯、同じ場所で1日5分でも10分でも良いので毎日続けることが大切といわれています。

マインドフルネスは気づくことから始まるので、いま見えているものを口に出して言ってみることを数秒でも良いから行い、現在に在ることを感じるのがポイントと久賀谷先生はすすめています。

すべてがマインドフルネスで解決するわけではないと思いますが、とても簡単なので、取り入れてみてはいかがでしょうか?

疲れない脳になればもっと楽に生きられるかもしれません。

 

平昌にいる選手には心を落ち着かせて実力を発揮できるよう祈っています。

photo: HOSPICE of the VALLEY

2018年 故きを温ねて新しきを知る

毎年変化を遂げる点滴療法研究会の新春ワークショップ。

今回は獣医師による動物でのビタミンC療法の話から在宅医や住宅型有料老人ホームを計画している医師の話まで多岐にわたりました。

 

精神科の飯塚先生によるとメンタル疾患の増加とともに糖尿病、アトピー性皮膚炎や慢性疲労症候群なども増加しており、これらはすべて同じ根をもつ現代病ととらえることができ、その原因には栄養不足があると指摘。

特にタンパク質不足と鉄不足そして糖質の過剰摂取が主因になると述べていました。

タンパク質不足には消化剤を用いてタンパク質の少量頻回摂取を行います。

鉄不足には吸収効率の良い肉や魚から取るようにして、鉄剤の注射はしないで、なるべく経口で鉄剤を摂るようにすることが大切。

また糖質の過剰摂取は血糖の急上昇(血糖値スパイク)を引き起こし、インスリンのスパイクへと続きます。

その結果急激な血糖低下による交感神経興奮により動機、手の震えなどの自律神経症状や精神症状、不眠を引き起こします。

メンタルと栄養は密接な関係にあるので、タンパクや鉄の他にビタミンやミネラルも不足しないよう注意が必要です。

 

歯科医の並河先生は抗がん剤による口内炎の治療に関しお話しされました。口内炎になると痛みで食事がとれずあっという間に元気がなくなるので早めの対処が必要です。

口内炎部へのオブラートを使った軟膏塗布とツムラ半夏瀉心湯や立効散でうがい薬を作る方法は画期的でした。

それに高濃度ビタミンC点滴を加えると口内炎が早期に治るようです。

この方法は当院でも可能なので今後実践してゆきたいと思います。

 

がん治療に関してはハタイクリニック西脇先生が一日の糖質摂取を5g以下にする絶糖療法と高濃度ビタミンC点滴の併用でがんの縮小がみられた症例を紹介されましたが、この糖質制限はかなりきつく持続が難しいようです。

 

大阪の奥野病院の奥野先生はIPT療法についてお話しされました。

この方法はインスリンであえて低血糖状態を作った後に副作用の起きない低濃度の抗がん剤を点滴する方法です。

がん細胞は正常細胞の16倍もの糖を取り込みます。まず低血糖にすることでがん細胞を

休眠状態から細胞分裂状態に変化させて抗がん剤の効きを上げます。

その後に糖と抗がん剤を投与し、がん細胞が少量の抗がん剤を勢い良く取り込むよう細胞内透過性を上げたものです。

奥野先生は悪性リンパ腫のほぼ消失例と肺がん、子宮がんの有効例を示されて、とても良い方法であると思いました。

 

最後に大阪の田中クリニックの田中先生はがんの超早期発見のためのプロテオ検査のお話をされました。

がん細胞がアポトーシスを起こしその破片のヌクレオソーム(ヒストン修飾でメチル化したもの)が新型チップに吸着した度合いを測ったもので、結果はリスク低、要観察、リスク高の3段階ですが、多くのがんに有用で割と精度の高い検査であるようです。

また最後に田中先生は昨年12月に発足したての腸内フローラ移植研究会における便移植について話されました。

最近の研究で、腸は腸内細菌と共に脳や内臓とクロストークをし、体の免疫の中心的な役割を演じていることが分かってきました。

つまり、腸や腸内細菌の具合がよくないと腸炎、メンタル疾患、アレルギー、自己免疫疾患、がんの発症につながります。

そこで考えられたのは健康な人の便を自分の腸に移植する方法です。

これは大学病院などで内視鏡を用い移植しますが、成功率が3割ほどであまり良い結果が出ていないようです。

一方、腸内フローラ移植研究会の方法はまず、健常者のドナーバンクをすでに作っており、そこから患者さんの状況にあった菌を選択して特殊な液に溶かし注腸検査のように肛門より200ccほどゴムチューブから注入します。その後の体位変換により70%近くが小腸に達して、成功率も8割と高い結果が出ており、開発者の話だと特にメンタル疾患に効果があるようです。

私は副作用も危険性も少ないこの方法にとても興味が湧き、当院に取り入れたい方法の一つになりました。

 

今回も新しい知識や技術を得ることができとても有意義な会でした。

1年に1回ですが新たなプレーヤーが毎度出てくるので来年もまた楽しみです。

まずは腸内フローラ移植研究会に早速連絡してみようと思います。

photo: MEDICINE ORTHOMOLECULAR

リピドミクスで慢性炎症を抑えてがん予防

スポーツと酸化ストレス・抗酸化の会でリピドミクスFAテストをやってみました。

この聞きなれないリピドミクスとは体内脂質の網羅的検査および研究のことで、

人の遺伝子の研究であればゲノミクス、タンパク質はプロテオミクス、代謝関連はメタボロミクスと呼びOmics科学の一つとされています。

この検査方法はとても簡単で、指先から数滴の血液を特殊な試験紙にしみこませて終了です。それを検査機関に送り、分析されたのち3~4週後に結果レポートが届きます。

このテストでは①飽和脂肪酸/一価不飽和脂肪酸比②トランス脂肪酸指数 ③オメガ3指数 ④アラキドン酸/エイコサペンタ塩酸比を調べます。

普段から和食と好物のオリーブを使った地中海食を心掛けている私としては体内脂質のバランスにはある程度の自信がありましたが、結果は満足のいくものではなかったのです。

①②④は理想値またはそれに近い値でしたが、③のオメガ3指数が低く理想値からかけ離れていました。

オメガ3指数は赤血球中のオメガ3脂肪酸EPA+DHA量の尺度であり、循環器の健康状態の目安となります。このオメガ3脂肪酸は細胞をより長期にわたって若く保ち、逆に低いと致命的な心臓発作、うつ病や認知症のリスク増大と関係しているといわれています。

以前オメガ3を多く含むアマニ油、えごま油、魚油をとってみたものの、どうも味が私には合わず長続きはしませんでした。青魚も意識して食べていますがまだまだ足りないようです。

今回分かったことは、野菜、タンパク質の十分な摂取、ゆるやかな糖質制限と腸内環境の整備を行ったとしてもオメガ3は意識して摂らないと体に反映されないということです。

まさに体内で他の脂肪酸から合成できない必須脂肪酸の一つであると改めて思いました。

 

そこで魚食を増やすことはもちろんですが、限界があるため、早速EPAとDHAのサプリを取り入れました。サプリは当院で栄養療法に用いているMSS社のuDHAとオーソオイルの2種の併用です。数か月後にもう一度このリピドミクスFAテストを行ってみようと思います。

ではなぜこれほど脂肪酸にこだわるのでしょうか?

それはエイコサノイドを作るためです。

エイコサノイドはオメガ3やオメガ6から細胞膜で作られる代謝産物で、体の中で起きる炎症や抗炎症に関わっています。

ウイルスや菌などの異物に攻撃された場合、エイコサノイドが急性炎症という方法でそれらを排除します。つまり局所においてホルモン的な働きをします。

そして、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、アルツハイマー病、アトピー性皮膚炎、がんなどの慢性炎症がベースにある疾患もエイコサノイドが大いに関わっています。

またうつや慢性疲労症候群などの心の病気とされるものに対しても関わりが分かってきました。

エイコサノイドにはプロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、ロイコトリエンがあります。

ちなみに腰部脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症で処方されるオパルモンやプロサイリンなどは血管拡張作用や抗血小板作用がありますが、いずれもエイコサノイド受容体に働く薬です。

オメガ3や6からエイコサノイドができるまでの反応系は多少複雑なので、簡単に人に例えて言います。

プロスタグランジン組にはD1,D2,D3,E2,E3,F1,F2,F3などそれぞれ個性のあるメンバーがいるように他の3つの組にもそれぞれメンバーがいます。

しかし、そのメンバーの出身地がオメガ3やオメガ6であったりしてバラバラです。

特にオメガ6のアラキドン酸出身のメンバーたちは幅を利かせて炎症亢進の方へと導きます。それをオメガ3出身者やオメガ6のジホモγリノレン酸出身のメンバーたちが炎症を抑制しようとがんばります。

最近オメガ6を悪者扱いする風潮がありますが、抗炎症に働いているオメガ6もあることを分かっていただきたいと思います。

ただ残念なことにジホモγリノレン酸はある酵素によりアラキドン酸に変えられてしまうのです。

よって一番の問題点はオメガ6を摂りすぎてアラキドン酸を増やしてしまい炎症が延々と続くことです。

アラキドン酸を増やさないためには3つの大事な点があります。

まず1つ目はアラキドン酸のおおもとであるリノール酸を減らすこと。つまりサラダ油(コーン、ひまわり、べにばな油)を使った食材を減らすことです。

2つ目はジホモγリノレン酸を変化させる酵素を抑え込むことです。この酵素はインスリンにより活性化するので、パンやお菓子など食後高血糖を導く食品に注意し糖尿病にならないように気を付けましょう。

3つ目はEPAを沢山とりアラキドン酸/エイコサペンタ塩酸比(AA/EPA比)の改善です。

 

このたびの私のリピドミクスFAテストではAA/EPA比は理想値近辺でアラキドン酸の抑制はできていました。

しかし、EPAが少なかったため理想値に入ることができませんでした。

そこでもっとEPAをとろうと思ったわけです。

普段からがん予防のために抗酸化、抗糖化、抗炎症を心掛けてきましたが、EPAが全く抜け落ちており、はじめ結果を見たとき正直がっかりしました。

しかし、今回のリピドミクスFAテストで自身の欠点が分かり、早めに軌道修正ができて良かったと思います。

このテストを開発したイタリアの抗酸化研究の第一人者であるIorio先生はオメガ3の減少が酸化ストレスの増大をもたらすとの考え方からこのテストをアスリートの炎症コントロールの指標にしており、イタリアのプロサッカーチームのユベントスでも用いているようです。

私はこの検査が自身の栄養における方向性を変えてくれた大事な検査と考えており、当院でも慢性炎症を測定する高感度CRP検査と共にリピドミクスFAテスト取り入れて慢性炎症疾患やがん予防に取り組んでゆこうと思います。

photo: karolinska Institutet  KI News

琉球温熱と深部体温と毛細血管の関係

今年から東京白金にある石原内科クリニックの石原潤一が琉球温熱療法の新たな仲間となりました。もともと先生はがんの研究をしてきた内科の専門家です。

クリニックでは自律神経のバランスを整えて毛細血管を拡張させ血流を良くするメディカルカッピングを行っています。先生は毛細血管の血流を改善することが病気にならない状態の未病に大切であると考えており、そのために新たに琉球温熱を取り入れました。

そもそも毛細血管とは手足の先端や脳、肺、肝臓、腎臓などで動脈と静脈をつなぐ細い血管で網目状になり、周囲の細胞と間質液を挟んで酸素と二酸化炭素のガス交換や栄養のやり取りや老廃物の回収などを行っています。人体の血管の95%が毛細血管といわれています。

具体的には毛細血管の太さは約10ミクロンで、毛細血管の壁にはさらに小さい穴が開いていて、この穴から酸素 グルコース 脂肪 ホルモン 電解質 薬物成分が間質液(組織液)中に流れていきます。これを細胞が摂取し二酸化炭素 代謝産物 老廃物を排泄しその90%は毛細血管に戻り、残りの10%はリンパ管に入ります。

通常の血管は3層構造であるのに対し、このように毛細血管は繊細な仕事を行うので非常に細く作られており一層の内皮細胞の周囲は壁細胞で補強されています。逆に内皮細胞と壁細胞だけであるため血流や血液の影響を受けやすくとてももろい構造ともいえます。

毛細血管のゴースト化とは内皮細胞と壁細胞の細胞間相互作用が破綻することにより管腔構造が維持できなくなった無機能血管状態をいいます。このような状況に陥ると間質中に液漏れが増えて、体のいたるところにむくみが出てくるので注意が必要です。

毛細血管は年齢とともに減少してゆき、60代は20代と比べ40%ほど減少するといわれています。

また、毛細血管の血流が悪くなる原因として

1.過度な精神的ストレスや睡眠不足による交感神経の亢進による血管収縮

2.高血圧 高脂血症 糖尿病 運動不足による動脈硬化で血管壁が固くなり血管が細くなる

3.環境ホルモン ブルーライト 激しい運動などでフリーラジカルが増加で毛細血管が傷つくことなどがあげられます。

特に自律神経との関係では、交感神経の興奮により細動脈の血管平滑筋の収縮と毛細血管への血流を調整する前毛細血管括約筋が収縮して毛細血管の血流が低下します。そのため血流はバイパス(優先路)を通り静脈へ抜けてしまい十分な酸素や栄養の受け渡しができなくなります。

よって毛細血管が減少し血流が悪くなると周囲の細胞に悪影響を与え、細胞死に至ることも起きて不健康な状態に拍車がかかります。

特に毛細血管が豊富な脳や腎臓の機能が低下し、微小脳梗塞(脳血管性認知症の原因)や慢性腎臓病に至る危険性もあります。

しかし、私たちの体には毛細血管を修復し再生する能力が備わっています。

毛細血管が傷つくと、成長ホルモンによって修復されます。その成長ホルモンはノンレム睡眠中に多く分泌されるため十分な睡眠により修復が可能となります。また睡眠中は副交感神経が優位なため血流がよくなり毛細血管の新生が行われます。

大阪大学の高倉信幸先生は修復に関して、内皮細胞に発現するレセプター型チロシンキナーゼTie2が周囲の壁細胞から分泌されるアンジオポエチン1により活性化されることで内皮細胞と壁細胞の再接着が促され血管構造が安定化すると述べています。また桂皮(シナモン)にTie2の活性化をうながす可能性があるようです。

そして適度な運動などで毛細血管の血流をよくすると、内皮細胞から血管内皮成長因子が分泌され新生血管が促進されます。この場合の運動としては30分ほどのウオーキングやふくろはぎを刺激するためのかかと上げ下げ運動が有効です。

毛細血管と深部体温の関係も大切です。

深部体温は体の深部(核心)の温度で、脇の下で測る表面体温より、0.5から1.0度ほど高くなっています。深部体温が高い理由は、身体の重要な臓器(心臓、肺、脳)に温かい血液を送り込み細胞の活性化を維持するためで、37.0~37.5度に保たれて、通常の環境変化では、±0.2度ほどしか変化しません。

深部体温が下がると毛細血管の血流が低下して細胞の機能障害が起こり病気や老化が進みます。深部体温が1度下がると免疫力が約30パーセント低下して、肺炎やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。

またがん細胞は35度前後が最も増殖するといわれ、深部体温が下がるとがんの発病率が上がる可能性があります。

新陳代謝は10~20%下がり、脂肪 老廃物の排泄機能が低下して肥満になりやすいため深部体温は高い方が良いとされます。

当院で調べたところ、琉球温熱の施療により深部体温は約1度上がります。

石原内科クリニックでは深部体温に加えて末梢血流量、毛細血管の血流量と血流速度を検証したところ、琉球温熱後にいずれも有意に増加した結果が得られました。

よって琉球温熱療法は深部体温を上げることで、温かい血液が流れ、毛細血管が拡張し、毛細血管の血流が良くなる方法であることがいえます。

毛細血管を良い状態に保つことは、未病の改善と健康の維持にとても大切であり、そのために琉球温熱療法は有用な方法となるので多くの方に受けていただきたいと思います。

photo: Antranik.org