しょうがと漢方

毎日厳しい寒さが続く中、私は最近お気に入りの温かい生姜チャイを毎朝飲んで凌いでいます。ほんのり甘く少しピリっとくる生姜の風味はチャイとうまく融和して体を温めてくれます。

一般的な薬では体を温めることはできませんが、ちょっとした食品が体を温められるのは当たり前のようですが結構な効果だと思います。たいした副作用もありません。

しょうがは現在とても流行りですが、漢方において本来手を加えていないものを生姜(しょうきょう)といい、乾燥させた物を乾姜(かんきょう)と呼びます。ただ、現在の日本漢方において生姜(しょうきょう)は生薬としては根を乾燥させたものを使います。かぜの初期症状の治療に使われ、体を温める効果があります。発汗を促し、血液の循環もよくなるので、胃腸の機能低下防止などに使われることもあります。また、鎮咳作用、去痰作用があるので、かぜ薬の成分として用いられています。

表面の皮を取り去り、蒸して乾燥させたものは乾姜(かんきょう)と呼ばれ、興奮作用・強壮作用・健胃作用があるとされています。漢方の処方では「生姜」を入れる処方と「乾姜」を入れる処方があります。一つの考え方として「生姜」は浅いところを温め、「乾姜」は深いところを温めるといわれています。そのため、かぜの初期はかぜがまだ体の浅いところにとどまっていると考え、生姜の入った葛根湯を用います。虚弱で手足が冷えている人の胃腸症状に用いる人参湯がありますが、これはからだの深いところの内臓が冷えている状態と考え、乾姜を使います。

しょうがには辛み成分であるショウガオール、ジンゲロールなどが含まれており、これらが血行を促進して体を温める働きがあるほか、新陳代謝を活発にし、発汗作用を高める働きをします。香り成分のシネオールは、疲労回復、食欲増進、健胃、解毒、消炎作用があります。また、この辛みと香り成分には抗酸化作用があり、老化を防ぎ、がんの発生・進行を防ぐ効果もあるといわれています。

とても体に良いしょうがは沢山の種類の漢方に用いられており、ありがたいかぎりです。しかし、顆粒状のエキス剤を作る過程でショウガオールなど揮発性のあるものは失われることがあります。そこでエキス剤を服用する際は小指大にすりおろしたしょうがを混ぜることで効果をさらに引き出せるのでおすすめです。

この季節しょうがを利用し元気な体にしましょう。

2012年 インフルエンザ動向

2012年 あけましておめでとうございます。

昨年は今まで体験したことのない衝撃に、生きる意味に関して深く考えさせられました。そして人と人との繋がりが生きる上でとても大切なものだと再認識するとともに、今年は病気になりにくい体作りの方法を通して、少しでも地域や社会に役立てるよう努力したいと思います。

 

最近は厳しい寒さと乾燥の継続で体調を崩される方が多い一方、私が診療している範囲においてインフルエンザの流行がほとんどないように感じます。実際、厚労省のインフルエンザ流行レベルマップでも昨年、一昨年の同じ時期より明らかに、警報や注意報の出ている都道府県が少ない状況です。

( 国立感染症研究所 感染症情報センター:https://hasseidoko.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/index.html
 
 
 2012、11、10年 第2週の比較
 

昨年の大地震、台風などの自然災害による様々な影響からより多くのインフルエンザが発生すると思いましたが違うようです。

予防が良くできているのかワクチンがいいのか免疫力がアップしているのか原因はわかりません。ただワクチンに関しては接種される方々が前年度より少なく在庫も余ってきているようです。このまま流行らずに今シーズンは終わってほしいと願いたいところです。しかし、定点医療機関(5,000施設)からの報告で2012年第1週の定点当たり報告数は3.76(患者報告数18,341)となり1を超えてきたので流行が始まったと判断されます。よって今後1月下旬から2月にかけてピークが予想されるので十分予防に気をつけるか、再度駆け込みでワクチンを接種するか考えどころです。

予防としては、野菜とタンパク質を中心とした食事をとり、体を冷やさないようにすることが基本ですが、食事が不規則になる場合はビタミンCを毎日1000mgは取っておいた方がよいでしょう。ビタミンCには抗ウイルス作用があり、特にビタミンC点滴をされている方は風邪やインフルエンザにほとんどかかりません。仮にかかったとしても40gほどの点滴で症状がなくなってゆきます。

一方、漢方的には発汗療法といって、体の表面を温める作用のあるもの(麻黄、桂枝など)を用いて体温を上げて発汗を促し、ウイルスの増殖を抑えて病気を治す方法があります。

麻黄は発汗作用があり、これに血行を良くして体表を温める作用のある桂枝を配合した麻黄湯がおすすめです。しかし、体力がなく麻黄が飲めない人、老人、心不全、低血圧症の人は参蘇飲、苓甘姜味辛夏仁湯などを用いたほうが良いです。

 

このさむい季節が早く過ぎることを願っています。

漢方 かぜ

冬至、クリスマスと寒さが厳しくなるこのころはインフルエンザやかぜの患者さんが増えてきます。しかし、今年はインフルエンザの流行が遅く、ワクチンも当初は足りないと言われていましたが先日薬の卸に問い合わせたところ、ワクチンが余ってきているようです。このまま流行らない事を願いたいです。

 

さて、かぜにはどうやって対処すべきでしょうか。ほとんどの人が薬を飲むと思いますが、医者が出す薬がいいのか、パブロンなどの市販薬がいいのか、または漢方薬がいいのか好みが分かれるところです。

一般外来や、訪問診療では定番のPLから痰にはムコダイン、激しい咳にはメジコン、フスコデなどを用い、高齢者で肺炎が心配な場合フロモックスなどの抗生物質を加えます。

だいたいこの処方で何とかなりますが、時々発熱を心配して解熱剤を希望される方がいます。このような場合、体がウイルスと闘っている時の熱なので無理に下げないで、適度にクーリングして様子を見ましょうとお話して解熱剤の処方がないことを納得してもらっています。

もともとウイルスは自身の免疫が退治するしかないので、ある程度体力があれば特に薬はいりません。ただうっとうしい症状を少しでも抑えるためには薬に頼ることもありかもしれません。

私自身、以前は市販薬に頼っていましたが、最近は漢方薬で対処しています。

漢方というと慢性期に使う薬と思われがちですが、もともとは急性期の治療を目的として作られたようです。今から約2000年前の中国でチフスなどの伝染病が流行り、多くの方が急性熱性疾患(傷寒)で命を落としていた頃に、“張仲景”という人は同じように自身の家族を失ったことから傷寒の研究をして、漢方のバイブルである「傷寒論」を誕生させました。現代のように薬のない時代は急性期を乗り切るために必死に知恵を絞ったのでしょう。ですから漢方の考え方は急性期の治療にも大いに役立つものと思います。

 

漢方「傷寒論」ではかぜを症状の進行により6つのステージ(六病位)に分けています。ひき始めを太陽病、少しこじらせた少陽病、全身倦怠感を伴う少陰病、ひどくこじらせた

陽明病、長引いて体力低下する太陰病、生命の危険を伴う厥陰病です。

また、高齢者やもともと冷え性の人は少陰から始まることもあるので、かぜのひき始めに症状を“陽症”か“陰症”かに分けて考えます。陽症は熱感、顔色紅潮、浮脈(浅く触れ)早い、濃縮尿で陰症は悪寒、顔色蒼白、沈脈(深く触れ)遅い、多尿があると大まかに分けられます。

かぜのひきはじめの陽症で最も多く使われるものは葛根湯で頭痛、肩こりを伴うときにも効果的です。私は葛根湯に擂った生姜を混ぜて飲みますが、汗が沢山出てスッキリします。鼻水や鼻閉があるときは小青竜湯を用いますが、アレルギー性鼻炎にもいいです。微熱、食欲低下が現れてきたら小柴胡湯や柴胡桂枝湯などの柴胡剤を使います。咳が強い場合は麦門冬湯を使うとよく効きます。陰症の場合はまず麻黄附子細辛湯を用いて、長引いた時には補中益気湯を使います。

かぜはこのような感じで対処でき、副作用も特に出ません。

ただ、肺炎を見逃さないようにして、もし起こりはじめたらすぐに抗生剤をもちいる準備をしていないといけません。

 

西洋薬に頼り切るのではなく、自分の治癒力を引き出すためにうまく漢方と付き合ってみることも大切だと思います。

漢方 過敏性腸症候群

当院では訪問診療と外来診療にて漢方薬の処方をしています。訪問診療は高齢者向け、外来診療ではご婦人向けまたは、がん患者様向けの漢方を用いており、特にがん患者様には九州福岡の老舗薬舗榎屋(エノキヤ)から取り寄せて提供しております。

通常の薬と違い漢方はマイルドに効いてゆくので、医者側、患者側双方が安心して取り扱うことができます。初めの効きは通常の薬より遅いので本当に効いているのか不安に思う期間が少しありますが、それを乗り越えると効き目を実感できます。

 

訪問診療は後期高齢者が多く、脳梗塞、心不全、がん、高血圧、糖尿病などのメインの病気の他に必ずと言っていいほど便秘などのおなかの症状があります。ただの便秘というより時に下痢になったり、ガスがたまり過ぎたり、残便感がいつもあって日に何度もポータブルトイレに座ったり、夜になると便を出したくてたまらなくなりラキソベロン液1本(下剤)を一気飲みしたり、とても苦しんでいる方が多いです。こういった状態を最近はIBS(過敏性腸症候群)といい、不安定型、慢性下痢型、分泌型の3つに分けられています。高齢者は便秘と下痢を繰り返す交替性便通異常やおなかが張るけいれん性便秘になる不安定型がほとんどです。

腸は第2の脳と言われるほど、脳との相関が強くIBSの方の不安、抑うつなどの不快情動は、健康な方よりも上昇している傾向が印象としてあります。ストレスで胃十二指腸潰瘍が起こるように、頭で感じているストレスが胃腸に影響を及ぼすだけでなく最近の研究では腸がストレスを感じて脳にシグナルを伝達する仕組みがあることがわかってきました。

IBSの患者は健常人より腸の知覚が過敏になっていて、少しの腸の動きを腸が痛みのストレス刺激ととらえて脳に伝えて、その結果、脳の扁桃体の著しい血流増加を起こします。

このように腸と脳が連動するのはもともと動物の進化は腸から始まり、腸の周りに神経細胞が生まれて、腸の動きを調節するようになり、やがて遅れて作られた脳が腸にある神経細胞に指令を出すようになったことからもうなずけます。

高齢者のIBSで第一選択となる漢方は桂枝加芍薬湯で、エビデンスもあります。構成成分は桂枝、生姜、大棗、甘草、芍薬で、交替性便通異常、へそ周囲から下腹部の痛み、メンタル的要素が強い症状などに有効です。2週間ほど様子を見て少しでも効果があれば続けて、効果がなければ別の処方を考えます。

お腹のガスたまりが強く、冷えで増強する腹痛(寒疝)などの症状があり、開腹手術後の通過障害や腸管蠕動不穏の場合は大建中湯(蜀椒、乾姜、人参、膠飴)を用います。基本的には腸管を温めてガスを取り去るものです。冷えに対しては腹巻を下腹部にして温めたり、北方で取れた根菜などの温性食物を摂り、日常生活を改善することが大切です。もし大建中湯で治らないときには桂枝加芍薬湯に切り替えることもあります。胃もたれのある慢性下痢には六君子湯の仲間である人参湯を用い、胃の症状はないが顔色が悪く、生気が低下して倦怠感を伴い下痢が続いている場合、真武湯を使うことがあります。

すでに西洋薬が処方されているがうまく効いてくれない場合に、これらの漢方の追加で症状が改善されるケースが多くあることから、漢方は併用でも単独でも使えるとても便利な薬といえます。


 

漢方は自覚症状が主で、病名がはっきりしないケースにとても有用なので、今後も様々なケースについてご紹介したいと思います。

運・動

秋晴れの中、順天堂整形外科同門会ゴルフコンペに参加してきました。三浦半島の葉山の丘にある葉山国際カンツリー倶楽部http://www.hayama-kokusai-cc.com/はとても風光明媚な所で、プレーの途中、横浜、東京湾、スカイツリーから富士山、湘南の海を見渡せ心が和みます。コースは丘の上に作られただけあってアップダウンが多く、ある程度の体力を要し特に膝周りが丈夫でないと大変です。私の場合、幸いいつもウォーキングしているおかげで乗り越えることができ、常日頃の運動が大切であることを感じました。

運動と整形外科といえば最近ではロコモティブシンドローム(通称 ロコモ)というものがあります。ロコモは英語で運動のという意味ですが、内科分野で流行ったメタボに対して東大の整形外科の先生が名付けた言葉です。体を動かすために必要な骨、関節、筋肉、神経など運動器の機能が衰え、動けないリスクが高まってきた状態から要介護になった状態までを含みます。現在の日本では40歳以上のロコモ人口は約4700万人と推定され、高齢者に至っては要支援、要介護の原因の3割が転倒による骨折や関節の病気などで脳卒中に次ぐ多さです。ロコモも原因は1.運動不足による筋力低下、2.関節や椎間板の変性、3.骨の脆弱化、4.神経の機能低下などです。老化現象だから仕方がないと放っておくと予防に気を使っている人に比べ早期に歩行困難、寝たきり状態になり、認知症が併発する恐れがあります。膝が痛い、つまずきやすくなったなどの症状があればロコモになりかけているかもしれません。多くは50歳代に顕在化してくるので、その手前の30代後半から40代に予防に力を入れたいものです。筋肉、骨、関節など運動器は良い使い方をするときちんと要求に答えようとする性質があるので、基本的には適度な運動を継続して行うことが大切です。ただ、この適度なとか、継続ということが思っている以上に難しいと思います。私は毎朝2~30分ほどのウォーキングを取り入れていますが、時々サボるようにすることで継続できています。自分を追い込むような激しい運動は、逆にストレスになり、活性酸素をたくさん発生させることにもなるので、長続きすることもなく反対にマイナスの効果をもたらすので中高年にはあまりお勧めはできません。いかに運動を通してリラックスできるかがキーになると考えています。今は様々な運動があるのでいろいろトライして自分に合った運動を一つ見つけることも大事なポイントです。

コンペの最後に同門会長が良いことを教えてくれました。“運動は運を動かすものだよ”と

運動を行うことで健康になり人生を楽しむ機会が広がる可能性を再認識した言葉でした。