運動と栄養と幸運

運を動かすと書いて運動と読みます。以前のブログでもご紹介した言葉です。

私は良い運を引き寄せるためには、運動はたとえ軽めでもまた少しさぼってもやり続けることと思っています。特に無理をせず自身のレベルに合った運動をチョイスすることが大切です。

運動にはスポーツ選手レベルからダイエット、体力向上レベル、そして高齢者レベルと段階に応じたものがあります。

高いレベルの運動は立つ、走るなどの基本的な動作に十分な筋力が加わり、そして高度な技術が備わって初めて可能になります。

中等度以下の運動レベルでは高度な技術ではなく基本的な動作と筋力訓練が中心となります。

筋力をつけるには、筋力訓練、栄養補給、十分な休養が基本となります。

特に胸 腹 背中 大腿など体幹筋にある程度の強い負荷を与え、筋肉にダメージを与えてから約48時間後に筋力がさらに強くなる超回復というもの考えながら行うのが近道です。つまり毎日毎日激しい筋肉運動をするのではなく2,3日インターバルを取って鍛えるのです。

そのためには運動によるタンパク質の減少に注意して、運動前の糖質の摂取と運動後のタンパク質の摂取を心掛けます。

また運動はあくまでも筋肉に刺激を与え、わずかな崩壊を引き起こすもので、筋肉が成長するのは筋を休めている時であることから十分な休養は大切です。

今年1月にソフトバンクの柳田選手が自主トレで毎日ゆで卵の卵白8個と鶏むね肉中心で炭水化物カットの高タンパク、低脂肪、低糖質の食事をしていることに対してダルビッシュ選手が苦言を呈したことがありました。

ダルビッシュ選手の言い分としては極度の炭水化物制限が筋肉を削り体脂肪の減少による弊害が出てしまうというものです。私もその通りだと思いました。

柳田選手の鍛え方は筋肉を見せるボディビルダーに当てはまる方法で、短期間勝負に適したやり方です。

短期間で筋肉をつけても骨や関節の動きがついてゆけず、関節近辺での炎症や疲労骨折、筋断裂の副作用が出てしまいます。

つまり、炭水化物を取らないと体はエネルギー不足に陥り、そのエネルギーを補うために筋肉から糖質を作らなければならず、結果筋肉が減ってしまうことになります。

また体脂肪もエネルギーを蓄えるために大切であり、脂肪の減らし過ぎは良くありません。野球のように長い期間戦い、バッティングや守備において強くて繊細な筋肉運動が必要な場合、十分な炭水化物を取りながらゆっくり筋肉量を増やすトレーニングが優先されるべきでしょう。

因みにソフトバンク柳田選手の5/16現在の打率は2割4分4厘で過去5年間において最低となっています。今からでも遅くないので食事内容を改めて早く成績を上げてほしいものです。

このように運動と栄養はともにリンクしており状況に応じて、食事内容や食べ方の工夫をしてある程度変えなければなりません。

そして、タンパク質と糖質の摂り方には基本があるので、そのあたりをおさえながら進めてゆくのが良いでしょう。

1日に必要なタンパク質は普通の人であれば体重1㎏あたり1gとされていますが、アスリートは2gぐらいが適当です。つまり、体重60㎏の人であれば60~120gは必要になります。

タンパク質は、朝食時、運動後、就寝前に必ず摂ることが大切です。朝は1日の始まりであり、栄養が一番不足している状態なのでその日に必要なタンパク質を摂ります。

運動後は壊れた筋肉が修復のためタンパク質を欲しているので、30~40分以内に摂ると効果的です。このとき筋肉のタンパク同化作用を促すためにも炭水化物を一緒に摂ることが大切です。

また、就寝後深い眠りに入り2時間くらい成長ホルモンが分泌され、体のメンテナンスが行われます。このときに十分なタンパクがあることが大事なので、温かいミルクやナッツを一緒に摂ると良いでしょう。

炭水化物は普通の人であれば体重1㎏あたり6gで、アスリートは9gぐらいが

適当であると言われており、やはりアスリートは多めの炭水化物が必要です。

食事は3食を基本とし 朝は前日の夕食後からの飢餓状態からのスタートなので、果糖たっぷりのフルーツ等だけではなく卵、納豆、牛乳などのタンパク質を取り入れることが大切です。

朝運動するのであれば炭水化物とタンパク質少量を摂ってからはじめ、運動後も炭水化物を摂ります。炭水化物は一度に大量に摂るのではなく運動前後にこまめに摂ることが秘訣です。

こうした工夫により筋肉のタンパク質が蓄えられ、筋力の維持ができます。

運動による身体活動量の増加はもちろん筋肉が担っています。

それにより総エネルギー量が増加し脂肪消費が増える際に、アディポサイトカインというホルモンの分泌が是正され糖・脂質代謝が改善するともに、体の慢性炎症が抑えられるといわれています。

慢性炎症は病気の根源なので、結果運動により病気を遠ざけることができます。

運動は運を動かし引き寄せるとはこのあたりにあるように思います。

タンパク質と糖質を上手に摂りながら運動を続けて健康という幸運を手に入れましょう。

photo: Phil Tognetti

琉球温熱で深部体温を上げよう

知り合いのドクターから琉球温熱で体の表面を温めているが、実際に体内の内臓近くの温度を上げているのか質問されました。つまり深部体温が実際に上がるものなのかということです。

体温には寒い、熱いなど外気の影響を受けやすい体表面温(皮膚温)と環境の影響を受けにくい体内部の深部体温(核心温)があります。

深部体温は37℃前後で体表面温より約1度高いとされています。これは体が正常に機能する上で最も適した温度であることを示しており、熱産生と熱放散によりうまく調整されています。

熱産生は主に骨格筋や褐色脂肪組織で行われ、熱放散は汗腺からの発汗や皮膚や口からの蒸散と末梢血管拡張による放熱で行われます。

近年この調節がうまく行かないためか、皮膚温が35度台の低体温の人が増えています。

実際、当院に来られるうつやがんの方のほとんどが低体温です。

この場合、一つにはストレスが原因で自律神経の乱れが起こっていると考えています。ストレスに対する体温の調節に大切なものは自律神経のバランスとホルモンのバランスと言われています。

自律神経には交感神経と副交感神経があり血管の収縮、拡張を調整しており、このバランスが崩れると血液の流れが悪くなり、低体温となります。

また副腎で作られて抗ストレスホルモンであるコルチゾールなどのホルモンバランスが崩れると細胞ダメージの回復ができず、細胞自体のエネルギーが低下し、低体温となります。

低体温は様々な病気を引き起こします。

低体温には血流障害、交感神経の緊張や副腎の疲労が関わり、また体の酸化を防ぐ抗酸化酵素の低下をもたらします。

その結果、便秘や歯周病、花粉症など軽度のものから糖尿病、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、骨粗しょう症、パーキンソン病、認知症、喘息、アトピーなどの病気に罹りやすくなります。

また、体温が一度下がると免疫力は30%下がるといわれ、そのため35度台で活発化するがん細胞をさらに元気づけてしまいます。

したがって私達は低体温にならないように体温を上げる努力をしなければなりません。

体温が上がると血流がよくなります。

血流がよくなるとダメージを受けていた細胞に栄養素が行き渡り、滞っていた老廃物が洗い流されます。そして、37℃付近になると酵素活性が上昇しそれぞれの細胞がエネルギーを効率的に作り出すことができるようになります。

エネルギー産生が高まると内臓脂肪の消費が進みメタボからの脱出が可能になります。

メタボは糖尿病や心臓病など生命にかかわる重大な疾患の原因なので、これらから遠ざかることで寿命が大きく伸びることにつながるでしょう。

また、がんが生育しにくい環境になり、同時に免疫力も上がると言われています。

一つに2014年小林らの体温の上昇と免疫応答の調節についての研究があります。

ボランティアを全身温熱療法装置で(直腸温38.5℃以上で60分)加温し、加温前と加温後に採血しT細胞の働きを調べました。

加温後にインターフェロンγ(IFN-γ)およびインターロイキン-2などのサイトカインの顕著な増加が見られたこととT細胞の膜流動性の変化で応答性が増加した結果が得られ、熱刺激により免疫力が向上したことが示されました。

このように深部体温を確実に上げれば、体の免疫は確実に反応してくれます。と言いたいところですが、ここで一つ問題がでてきました。

実は直腸温は日本と違って欧米では深部体温と認められていないのです。

AORN(米国周術期看護師協会)によると脇の下、口の中、膀胱、直腸、側頭動脈は深部体温測定に適さない部位とされ、適する部位としては鼓膜、下部食道、鼻咽頭、肺動脈で、この中で最も正確なものは肺動脈とされています。

ただ温度測定のために肺動脈にアプローチすることは侵襲が大きく常識的ではありません。

そこで考え出された方法が熱流補償式体温測定原理に基づく加温センサーによる測定で、肺動脈温と高く相関した結果が得られます。

これは医療材料大手の3M社が開発した深部体温モニタリングシステムで、前額部にセンサーを貼付するだけで簡単に肺動脈温に近似した深部体温が測定できます。

当院にて琉球温熱施療前後で測定してみたところ全例で深部体温の上昇が確認されました。

脇の下の皮膚温も同時に測定しましたが、皮膚温の平均上昇温度は0.22℃で、深部体温のそれは0.76℃でした。

また今年から琉球温熱を取り入れた白金の石原内科クリニックでも同様の方法で測定したところ、表面体温以上の深部体温の上昇が確認されました。

よって琉球温熱療法は深部体温を上昇させる一つの方法であるといえます。

病状改善には一時的な深部体温の上昇だけでは不十分で、恒久的な上昇が必要です。

そのために琉球温熱を継続したり、家で毎日湯船に42℃で10分、41℃で15分、40℃で20分を目安にして入ることが大切です。

私の体温は35度台ですと堂々と言っておられる方は要注意です。

低体温から早く脱出して健康な体を取り戻しましょう。

脳腸相関は第2の脳といわれる腸の腸内細菌との連携プレーである

ストレスで胃やおなかが痛くなる、ストレスで便秘、下痢になるなど、誰もが経験します。

最近、消化管に器質的疾患がないのに、症状が慢性化する機能性消化管疾患が増えています。

それには機能性ディスペプシア、非びらん性胃食道逆流症、過敏性腸症候群、慢性便秘などがあります。

器質的に異常がないため病院を受診しても対症的に胃腸薬などが処方され、根治することなくQOLが低下したまま我慢をされている方も多いようです。

こういった状態は腸と脳との間のシグナル伝達の異常ととらえる考え方があり、脳腸相関の問題といわれています。

脳腸相関は脳から腸へのシグナルと腸から脳へのシグナルがあります。

またそれぞれ神経による伝達経路とホルモンなどの物質が血管内を移動する循環系の経路があります。

腸から脳への神経の経路は消化管内腔の粘膜細胞の刺激を迷走神経が感知し、延髄孤束核に伝える系と消化管壁内にある内在性知覚ニューロンから脊髄に入り視床―大脳皮質へと行く系があります。

過敏性腸症候群は脳から腸、腸から脳のどちらのシグナルの異常でも発症しますが、特に下痢型の場合、内在知覚ニューロンのセロトニンの5-HT3受容体に原因がありここをブロックすることで抑えることができます。

慢性便秘の多くは腸管の拡張を伴わない機能性便秘で、脳腸相関の不具合が関係しています。

最近、便秘症と神経変性疾患の関係において、便秘の人は便秘のない人に比べてパーキンソン病に6.5倍、多発性硬化症に5.5倍罹患しやすいことが分かりました。メタボの1.4倍、心血管疾患の1.5倍に比べてかなり高い値を示しているので、慢性便秘の治療はとても大切です。

京都府立医大の内藤裕二先生は ①全粒穀物、果物、野菜など繊維の多い食品の摂取、②速足で歩く、自転車に乗るなど中等度の運動、週に最低2時間半③水分を1日1000ml 以上摂る④食後の排便時間の確保⑤便意を我慢しないなどが慢性便秘解消の基本と述べています。

脳から腸への経路は副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)が視床下部-下垂体-副腎を活性化し副腎からのコルチゾールの分泌によりストレスに応答する系が知られています。

もう一つはCRFが室傍核や延髄の孤束核など中枢神経のCRF2受容体に作用し神経を通じて上部消化管の運動を抑制したり、CRF1受容体を介して下部消化管の運動を亢進させる系があることが分かってきました。

またCRF以外に外側視床下部の神経細胞で作られているオレキシンという神経ペプチドがあります。

これは迷走神経依存的に胃酸分泌、胃や大腸の運動を亢進させるといわれており、最近の研究では脳内のオレキシンのシグナルが低下することが消化管機能障害、睡眠障害、食欲不振、抑うつ状態などに関与していることもわかってきました。腸が第2の脳といわれる所以がこのあたりにあります。

ストレスを受けた腸管では、平滑筋刺激による腸管運動亢進だけでなく、腸内フローラにも変化が生じます。ストレスが消化管内のカテコラミンの分泌を増やし、このカテコラミン受容体を持つ大腸菌が増えることで腸内フローラの乱れが生じ、病原性が増強するといわれています。

また宇宙飛行士のフローラを調べた実験では細菌数が飛行前から変化し始め、飛行中に異常が進み、善玉菌のラクトバチルスやビフィドバクテリウムが減少し、悪玉菌であるエンテロバクテリアやクロストリジウムが増加していたとの報告があります。

このようにストレスは腸内フローラに対して大きな変化をもたらし、体に影響を与えます。

腸内フローラの中の体にとって良い菌である有用菌は、腸内の食物繊維から短鎖脂肪酸を作ります。

短鎖脂肪酸には酪酸、酢酸、プロピオン酸があり、酪酸には抗うつ作用や認知機能改善作用があるようです。

酢酸は腸から吸収されたのち肝臓から脳の視床下部まで到達しプロピオメラノコルチン神経細胞に働き食欲を抑制する方向に作用します。

プロピオン酸は肥満の人への投与実験で食欲の減少の他に体の脂肪量の減少とインスリン感受性を維持する働きをします。

まず腸から吸収されたプロピオン酸は門脈に入り門脈神経叢にある短鎖脂肪酸受容体(FFAR3)に結合し、腸と脳の間の神経回路を活性化させます。

活性化した脳細胞は遠心性神経回路を通じて腸間粘膜細胞にブドウ糖をつくるように働き腸内糖新生を促します。腸内でブドウ糖が作られることにより肝臓でのブドウ糖産生が減り血糖値は安定化へと向かいます。そしてインスリンの値が安定する結果、食欲も落ち着いてきます。

これは水溶性食物繊維の分解から始まり、腸から脳さらに腸へとめぐる回路が形成されて、さらにエネルギー代謝の調節に至るといった腸内細菌と生体の巧みな連係プレーです。

腸内細菌とメンタルの関係では、まず発達障害に関して、フィンランドのParttyらは乳幼児期にプロバイオティクスを与えられた群はプラセボ群よりアスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動性障害)の発症が有意に少なかったことを報告しています。

抑うつや不安に関して、フランスのMessaoudiらはプロバイオティクスのランダム比較試験においてプロバイオ摂取群が抑うつ気分だけでなく自覚的ストレス度の有意な改善が見られたことを報告し、TillischらはfMRIを用いプロバイオ摂取群が、不安惹起刺激による不安関連脳領域の活動性の減弱(不安にならなくなった)を認めたことを報告しています。

このように腸内細菌による脳の変化を客観的にとらえたことはとても重要で、腸内細菌とメンタルが大いに関係していることを示しています。

以上より、脳腸相関の安定化にはやはり良い腸内フローラの存在が大切です。

そのためにはヨーグルや漬物などで腸内細菌を供給し続けること、食物繊維やポリフェノール類をとり腸内細菌を増やすこと、そして腸内フローラを有用菌に変える納豆やみそなどの発酵菌を十分にとることが必要です。

また、運動を取り入れてストレスの少ない生活への改善、良質のタンパクやビタミンBや鉄などを多く含む食生活で脳に栄養を十分届ける工夫が求められます。

腸を良くしてあげれば頭が良くなり、頭を良くしてあげれば腸も良くなります。

photo: sott.net

甘酒は腸内環境を整えるための力強い味方です

幼少の頃、お祭りで甘酒を初めて飲まされ、あまりおいしくなかった印象があります。

以後二三度口にしたものの、それ以上欲することはなく過ごしてきました。

そのころ飲んだのは酒粕を湯に溶かし砂糖を加えた甘酒だったので、お酒の香りが合わなかったのかもしれません。

しかし、医者になって7年が過ぎたころ酒粕についての本とめぐり合い、その効能があまりにも素晴らしかったため、好きではないはずの酒粕に興味を持つようになりました。

のちに基礎研究の機会を得て脊髄損傷の研究を始めましたが、その傍らで酒粕の研究も細々と行いました。ねずみと日々暮らす中で、ある時肥満ラットに酒粕を混ぜたエサを与えてみると中性脂肪の増加と体重増加の抑制作用があることがわかり、これを何とか形にしようと酒粕を飲みやすくしたSAKECAKEというサプリメントを作ったことがあります。今は製造しておりませんが、酒粕の力を埋没させるのはもったいなく、またの機会に作ってみようと思います。

最近は米麹を使った甘酒が人気のようです。

米に麹菌をつけ米麹とし、この米麹に水を混ぜて60℃で温め続けること6~8時間で、とろとろの甘酒ができます。麹菌が発酵過程でお米のでんぷんを分解しブドウ糖に変えるのでとても甘いです。甘酒にはブドウ糖の他に豊富なビタミンB群やアミノ酸も含まれており、「飲む点滴」「飲む美容液」などと呼ばれています。また8~10%アルコール分が含まれる酒粕と違ってアルコール分がゼロなので子供や妊婦、運転者も安心して飲むことができますし、カロリーも砂糖を入れる酒粕甘酒より低いため、カロリーの気になる方には良いでしょう。

一方、酒粕甘酒はアルコール分のことを除くと、米麹甘酒と比べてビタミン、アミノ酸、食物繊維の含有量が多く、何よりコレステロールの低下に関係するレジスタンントプロテインが含まれており栄養価としては上回っています。

甘酒と腸の関係において、甘酒に含まれる食物繊維やオリゴ糖が大腸に届くと酪酸菌のエサとなり酪酸菌が増えて酪酸を豊富に作ります。酪酸は制御性T細胞による免疫寛容に関与し過剰な炎症を抑えるため炎症性腸炎や喘息、アトピーの鎮静化の助けとなります。

また植物性乳酸菌を含んでいる場合には、それらが小腸に達した後、乳酸にて腸内を酸性にして蠕動運動を活発にするとともに乳酸菌が産生するバクテリオシンが悪玉菌を抑制し腸内環境を改善します。

生の米麹甘酒(生甘酒)では熱入れをしていないので、麹菌が作り出したアミラーゼ、プロテアーゼなど多くの酵素が活性のある状態で存在しており、腸における消化吸収を大いにサポートします。

先日の点滴療法研究会のワークショップにおいて桑島内科医院の桑島先生は甘酒を実際に患者さんに用いてその効果について発表されました。

まず外来患者さんに飲ませたところ便秘が最も多く改善し、夏バテや肌の改善、そして過敏性腸症候群やパニック、過換気症候群が軽快したようです。

続いて特別養護老人ホームの認知症、不穏、食欲低下や下痢などがある状態の悪い入所者7名に生甘酒を毎日一杯飲ませ3-4か月続けました。その結果7名中4名の全身状態が改善し、不穏と便秘、下痢の改善、食欲の増進によるアルブミン値の改善が見られました。

そして、この実験の途中、集団感染がおこり多くの方が発熱し抗生剤の治療を受けましたが、生甘酒を飲んでいなかった人に比べ飲んでいた人は軽症で済んだようです。

今度は生甘酒による腸内の変化を見るために、状態の良い方3名に生甘酒を毎日1杯1か月間続けてもらい、摂取前後の便検査を行いました。すると腸の炎症性マーカーであるカルプロテクチンの有意な減少と真菌のカンジダの減少がみられました。

これらから生甘酒が腸内環境の改善に少なからず関与していることが分かり、先の入居者の全身状態が改善したことは腸内細菌叢を整えることにより免疫力や精神機能の改善につながったものと思われます。

このような結果を導く生甘酒は大したもので、十分な利用価値があるといえます。

在宅医療の現場や私が理事をしている四街道の特養でも便秘の問題があり、今後は生甘酒の活用も必要であると考えています。

なるべく薬に頼らず、機能性の食品を利用し、自然な形で体調が整えられることはとても大切ですし、甘酒をより多くの方に使っていただきたいと思います。ただ、飲みすぎは、糖質の取りすぎにもなりますから注意が必要です。

話は変わりますが、このたびの会で久しぶりにソフィアイーストクリニック日本橋の尾崎先生とお会いし近況を伺うことができました。

尾崎先生はがん患者さんの腹水治療のスペシャリストです。CART(腹水ろ過濃縮再静注法)という腹水を腹腔から抜いて、細菌やがん細胞を取り除き、アルブミンなどが濃縮された腹水を再び点滴で戻す治療をしていて、私は腹水の患者様から相談があった際には、必ずご紹介する先生です。

ところがこのたび尾崎先生は2トントラックを改良し救急車を大きくしたような感じのCARTの設備を整えた車を作ったのです。つまり、通院できない腹水の患者宅まで自ら出向いてからこの車の中でCARTをしようというものです。外観はピンク色の背景に赤いハートがいくつか描かれておりとても目立つデザインです。

とてもユニークで日本ではオンリーワンであり、ますますの普及が期待されます。

このたびの点滴療法研究会は何名かの先生方に独自の治療法や技をご紹介いただきそれを学ぶ場でありましたが、皆さんに共通しているのは、患者さんのためにとことん努力している姿勢でした。

これからの個別化医療に対応するためにはこのような気持ちと技を持ち合わせることが大切であると感じました。

ただ、多くの検査法や治療法が日々増えているので、混乱が懸念されます。

私たち医師は有用なものとそうでないものを選別し、最短距離で患者さんに治療方法をお伝えする技量が必要です。

そうした中で私は食品を基本とし、それに新たな治療法を組み合わせる方法を選択し今後ご紹介して参りたいと思います。

photo: 田中酒造

ケトン食による がん 兵糧攻め作戦

かつて戦国武将たちは、さまざまな戦術を展開し、勝利した者だけが生き残れる過酷な世界にいました。豊臣の時代、黒田官兵衛らは鳥取城を陥落する際に兵糧攻めという方法を選択しました。本格的な攻めの前に城下にあったお米を倍の値段で買いあさりその地域の米の量を減らしました。その後、領民たちを焼き討ちなどで追い立て城の中に追いやったあと城を囲み外部からの食糧補給を絶ちました。城の中は4千もの人であふれかえり食料があっという間になくなり武力衝突することなく陥落したそうです。手間はかかるものの味方の損失はなく、まさに戦わずして勝つ優れた方法であったと思います。

銀座東京クリニックの福田一典先生はこの兵糧攻めという考えをがんの治療に応用しました。最近よく耳にする糖質制限に、脂肪を沢山とるケトン食療法を加えたのです。がん細胞の主な栄養源はブドウ糖であるので、これを断つことでがん細胞を兵糧攻めにして、正常細胞は脂肪から栄養を補給するというものです。
糖質の過剰摂取は体の細胞を糖化することで老化の進行や糖尿病、がんなどの多くの病気を引き起こします。糖質の摂取をなるべく少なめにすることはとても大切ですし、病気にならないための基本です。がん予防には糖質の制限とタンパク質と緑黄色野菜の摂取と適度な運動が好ましく、がんになってしまった場合にはケトン食を追加するという考え方です。
ケトン体とは、脂肪の分解途中でできる、アセト酢酸・βーヒドロキシ酪酸・アセトンを総称したものです。糖質不足や代謝の障害がおこると、体は糖質に代わるエネルギー源を脂質に求めるようになり、脂質の代謝が盛んになります。
体内の脂肪細胞に蓄えられた脂質(脂肪酸)は、肝臓に運ばれて、アセト酢酸に変わり、さらにこのアセト酢酸が変換されて、βーヒドロキシ酪酸・アセトンなどのケトン体ができて肝臓以外の各臓器でエネルギー源として利用されます。このように、血液中に増えたケトン体がエネルギーとして使われている状態を「ケトーシス」と呼びます。
ケトーシスの体を作るには、まず1日の炭水化物の量を、1日の摂取カロリーの5%に抑えます。例えば、1日に2000kcal摂取している人なら炭水化物の摂取量は100kcal(25g)以内にします。この状態を数日週続けると、体脂肪がエネルギー源として利用される「ケトーシス」となります。

がん細胞は無限に増殖する使命を帯びた細胞で、そのために酸素を必要としない嫌気性解糖系を選択し、ブドウ糖を原料に(ATP)エネルギーを作り、そのエネルギーをもとに自己の細胞構成成分を合成してゆきます。
ミトコンドリアを利用した方がATP産生量は多いのですが、大量の活性酸素が発生するので、酸素を必要とするこちらの系をがん細胞は選択しませんでした。
よってがん細胞の周りにいくら酸素があっても好気性呼吸を行いません。これはがん細胞内で低酸素誘導因子(HIF-1)が常に活性化し解糖系方向の促進とTCA回路方向の抑制が働いているためといわれています。
つまりがん細胞はブドウ糖の取り込みを常に亢進させていないと生きて行けない細胞であるともいえます。
一方、がん細胞はケトン体をエネルギー源として利用することはできないばかりか、ケトン体自体にがん細胞の増殖を抑える作用があり、脂肪の摂取は有用と考えられます。
どの程度まで脂肪をとることが可能か調べた実験で、健常人にカロリーの85%以上を脂肪で摂取するような食事を続けても内臓や運動機能に悪影響がないことが認められました。このことからかなりの量の脂肪を糖質の代わりにとることができます。

ケトン食療法は元々てんかんの食事療法としてかつて用いられた方法ですが、薬の進歩により使われなくなりました。しかし、てんかんに関連して脳腫瘍にケトン食療法を行ったところ抗腫瘍の効果が見られたことや、抗腫瘍効果が血中ケトン体濃度と相関した実験結果も示されたことから最近、がんの食事療法として見直され研究されるようになりました。

実際のケトン食療法は

① 脂肪として肝臓で代謝されやすい中鎖脂肪酸を使います。 オリーブオイル、魚油(DHA,EPA)、亜麻仁油、しそ油などです。具体的にはココナッツオイルや精製中鎖脂肪酸(マクトンオイルやMCTオイル)を1日に40~100g摂るようにします。(1日の食事の60%を脂肪にする)

②1日40g以下の糖質制限(ごはん一杯150gには50gの糖質があるので、1日1杯も食べられません。)

③タンパク質は体重1kgあたり1~2g摂ります。
基本的に脂肪:(糖質+タンパク質) を 3:2にします。
例えば糖質40g(160kcal)タンパク質80g(320kcal)の場合脂肪は180g(1620kcal)で合計2100kcal/日になります。

ケトン食の欠点は極端な糖質制限を行うので重度の糖尿病の方に行うことは危険で、また高脂肪、高タンパクになるので重度の肝障害や腎障害がある場合も難しくなります。主にⅠ型糖尿病でインスリン不足により脂肪の代謝が亢進し、血中にケトン体が蓄積し酸性血症により意識障害に陥る糖尿病性ケトアシドーシスがあり、ケトン体に良くない印象を持たれる方もあるでしょう。

しかし、実際はインスリンの働きが正常である限り、一時的に上昇したケトン体によるアシドーシスは血液の緩衝作用で正常に戻るため、ケトン体は安全なエネルギー源であるといえます。また高脂肪ががんの発生を高めるとの意見もありますが、これは高脂肪と高糖質が合わさった食事での話であり、低糖質では逆に発がんを抑制する実験結果も出ており、心配することはないでしょう。

断食やカロリー制限と違って栄養不足や体力低下に陥ることも少なく、副作用のほとんどないこのケトン食療法は、がん細胞の弱点をついたとても理にかなった方法です。がん攻略には標準療法の正攻法ももちろんですが、過去の武将にならい、がんの兵糧攻めも一考の余地があると思います。

photo: www12.plala.or.jp